All Chapters of 裏庭が裏ダンジョンでした: Chapter 31 - Chapter 40

59 Chapters

ギルドマスター 1

 どれくらい眠っただろうか、アシノはボーッとした頭のままで薄っすらと開いた目をまた閉じて考える。 昨日は何をしていただろうか。確かギルドで騒ぎがあって、ウートゴに会って、それで…… ハッとして今度は完全に目を開いた、そして自分が枕にしているものを手で触ってみる。 この感触はと思い上を見上げるとアホ面をした男が1人。 ムツヤは壁に寄りかかってあぐらをかいたまま眠っていた。そしてアシノはムツヤの足を枕代わりにして寝ていた。 どうしてこんな状況になったかはわからないがアシノはバッと身を起こしてムツヤを見る。「おい! おい、起きろムツヤ!!」 アシノはムツヤを揺さぶって起こそうとした。ムツヤはうめき声を上げながらも目を覚ましたらしい。「あぁ、おはようございます」 眠たげにそう言って頭をペコリと下げた。 アシノは何故このような状況になっているのか必死に思い出そうとしているが、バーで飲んだ後の記憶が曖昧だ。「ムツヤ、な、なんでお前は私と同じベッドの上で寝ているんだ!?」「なんでって…… えーっとでずね、アシノさんをおぶって宿屋まで連れてきたんでずが、部屋に帰ろうとしたらアシノさんが待てって言ってそれで」 ムツヤは不思議そうな顔をして言った。それとは対照的にアシノは顔から血の気が引いていた。もしかして私は昨日何か間違いを起こしたのではないのかと。「な、何があった! 昨日何があった!?」「何って言われましでも…… 昨日はアシノさんが冒険者について教えてくれてたんですけど、俺途中で寝ちゃったみたいで」 アシノはホッとして体から力が抜けた。良かった、何もなかったと。「そうか、それなら良いんだ、うん。そ、そうだ、身支度があるから取り敢えずお前は自分の部屋に戻れ」 安心したアシノはムツヤを部屋から追い出して、身支度を始めることにした。 鏡の前に座って自分の姿を見る。彼女の代名詞とも言える燃えるような赤髪はボサボサで目の下にはクマが出来ていた。 冒険者を諦めてからずっと自堕落な生活を送っていた代償か、久しぶりにまじまじと見つめた自分の顔は昔よりやつれている気がする。 本来だったら薄く油を塗ったクシで赤髪を梳かしたいのだが、この安宿にそんな気の利いたものは無いし、昨日は飲んでいたのでそういった身支度をする品々は全部家に置いたままだった。 仕方なしに
last updateLast Updated : 2025-11-25
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ギルドマスター 2

「国王は国を強かった頃へと戻すことにお熱を上げている。そんな所に大量の強力な武器と薬が詰まったカバンを持ち込んだらどうなるかは分かるだろう?」 ムツヤは分かっているのか分かっていないのか知らないが、真剣な顔をしている。「キエーウによる亜人の殺戮よりも、もっと大きな犠牲者が出るだろう」「そ、そんな! そんなのはダメでずよ!!」 ムツヤは思わず立ち上がってそう言った。そんなムツヤをたしなめる様に1つ咳払いをしてトウヨウは言葉を出す。「俺はだ、キエーウは確実にまたムツヤのカバンを狙うはずだと考えている」「そりゃそうだろうな、これ以上裏の道具が流出しないようにするならカバンを燃やすなり切り刻んじまうなりって手もあるが」「すみません、このカバンって何をしても壊れないんでずよ」 アシノの案、カバンの破壊はあっけなく廃案になってしまった。 これでカバンを壊してしまうという手は使えず、必ずどこかに保管をしなくてはならない事が決まる。「カバンの一番安全な保管場所は、ムツヤが持ち続ける事だと俺は思う」「確かに、カバンをエサにチラつかせりゃ裏の道具を持ってる奴等が襲ってきて探す手間も省けるってわけだ」 アシノが軽く笑いながら言うと、モモは身を乗り出して言葉を放つ。「そんな、ムツヤ殿をエサになんてっ!」「まー、ムツヤ大好きっ子のモモには少し聞こえが悪かったか」 アシノにそう言われるとモモは赤面はしたが、今回は否定の言葉が出なかった。くうーっと下を向いた後にアシノの方を見てハッキリと伝えた。「えぇそうです、私にとってムツヤ殿は大切な方です。なのでムツヤ殿の身に何かがあったらっ!」「まぁまぁ、落ち着きなよ」 紅茶を飲みながらアシノは横目でモモを見た。ハッとして各々の表情を見る。 ムツヤと何故かユモトまで少し顔を赤らめてモジモジとしており、それを見てモモは今更になって気恥ずかしさが襲ってきた。「裏の道具の対処法はムツヤが1番良くわかっているはずだし、それに裏の道具と戦うなら同じ裏の道具があった方が良いはずだ。そのカバンと、先程の話で聞いたムツヤの腕前があればキエーウからカバンを守れるだろう」 トウヨウは落ち着いた声で言う。彼ほどの実力者になると体格や歩き方などで大体の実力が分かる。 ムツヤのそれは完成された見事なものだった、部屋に入ってきた一目で只者で
last updateLast Updated : 2025-11-26
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お掃除クエスト

 それから数時間が経つ。ユモトは淡々と鼻歌交じりに掃除をしていた。 モモとヨーリィはムツヤのカバンから引っ張り出されたメイド服を着て掃除をしている。 背が低いヨーリィが背伸びをして高い所を一生懸命に掃除をしている様は可愛らしい少女と言った感じだ。 雑用が嫌いなアシノは「外の警戒をしている」とサボる口実を見付けてビンのフタを飛ばして戦う訓練をしていた。 外からパンパンとビンのフタが飛び出す音がしている。 そしてムツヤは地下に居た。 メイド服を着たルーは笑顔でウキウキしながらムツヤのカバンの中の物をルーペで眺めたり、ガラスのビンの中に移したり火にかけたりと大忙しだ。 彼女は召喚術師だったが、若いながらも実力を持ち、今は冒険者ギルドの幹部兼ダンジョンで拾われた魔法道具の研究を生業としていた。「いやー、まさか裏ダンジョンのアイテムを研究できるなんてね。感謝感謝」 ルーは隣に居るムツヤにそう言う。ムツヤは頭をかきながらハハハと苦笑いをし、青い薬と赤い薬を混ぜているルーを見ている。「それと、まだちゃんと鑑定も実験もしてないから何とも言えないんだけど、このメイド服ってもしかしたら家事スキルが上昇する気がするんだよねー。私って片付け苦手だから、ここではずっと着てようかしら」 そう言ってルーは振り返ると小さくムツヤにウィンクをする。その小悪魔的な仕草にムツヤは一瞬ドキリとした。「ムツヤさーん、ちょっと良いですかー?」「あ、はーい」 上の階からユモトの呼ぶ声がしてムツヤは階段を上がる、地下室の出口ではユモトが笑顔で待っていた。「ムツヤさん、街を出るときに気付いていればよかったんですが、数日分の食料と、皆さんが欲しい物を買いに行きませんか?」「あー、そうでじたね」 ムツヤのカバンには魚やモンスターの肉等はたくさん入っているが、小麦粉や麺といった主食になるものや調味料は少ない。「それじゃあ買い物に行きましょうか!」「はい!」 笑顔で答えるユモトと外へ出る前に、モモとヨーリィに話しかけた。「モモさん、ヨーリィ、買い物に行くけど何か必要なものはありまずか?」 モモはムツヤを見るなり腕を前で組み、ムツヤから視線を外して恥ずかしそうにしている。「お兄ちゃん、私はお兄ちゃんの魔力がそろそろ必要です」「あっ、そっがーそれじゃヨーリィも手を繋いで一緒に行
last updateLast Updated : 2025-11-27
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裏の道具の自由研究 1

「さーてと、早速裏の道具を1個回収って所か」 静けさを破ったのはアシノだった。わざとらしく、やれやれといった感じに言う。「じゃあ買い物にいくぞ」「えっ、えーっと…… 大丈夫なんですか?」 アシノの切り替えの早さにユモトは若干戸惑う。ついさっきあんな戦いがあったというのにだ。「大丈夫って何が?」「いえ、僕たちが襲われたってことはあの家も危ないんじゃ……」 そう言うとアシノはニッと笑ってユモトの頭に手を置いて言った。「あっちにはルーが居るし、ムツヤが裏の道具で建物を強化したり警報付けたりやったんだろう? それと連絡石で一応襲われたことは伝えておいた。心配することはない」 そこまで言って一呼吸入れてから少し真剣な表情でアシノはまた話す。「それ以前にキエーウの連中はだが、今回は様子見に一番使えなさそうな道具を持って来たんだと私は思う」「そうなんでずか?」 ムツヤは何故そんな事をアシノが分かるのか不思議だった。「多分こちらの手の内を見に来たんだろうな、さっきの戦いも…… そして今もどこかでアイツ等の仲間が監視してるはずだ」「そんなっ」 そう言われて思わずユモトは辺りを見回す。しかし聞こえるのは風の音、見えるのは木と草だけだ。「もっと広く周りの生き物の場所が分かる魔法でも使いますか?」「頼んだ」 ムツヤは目をつむり緑色の魔法陣を足元に出す、そのままじっと5秒待ち。「俺達以外に人の気配は5人でずけど、多分さっき逃げたやつらですね」「そうか、千里眼持ちが遠くから見ているのかもな。1人心当たりがある」「昨日の奴ですか」 ムツヤにしては勘が鋭かった、昨日の襲撃者。ウートゴの事を思い浮かべる。「そうだな、とりあえずムツヤ。これから戦う時は裏の道具をなるべく温存して戦え。手の内をあまり見せたくないし、切り札は取っておいた方が良い」「わがりました」「さてと、さっさと買い出ししてあのボロ家にでも帰るとするか」 アシノはそう言って歩き始めた。ムツヤ達もその後を追うように街へと向かう。 スーナの街は夕日を受けて赤く美しく輝いていた。城門を抜けると今だ活気ある市場が出迎えてくれる。「さてっと、それじゃあ必要な物でも買ってくるか」 アシノは背伸びをしながら言った。ユモトも街に無事ついた安堵からか、ため息を1つついた。「はい、わかりました。そ
last updateLast Updated : 2025-11-28
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裏の道具の自由研究 2

「ムツヤ殿!!」 メイド服を着たモモが玄関の扉を開けると開口一番に言う。「本当にご無事で良かった……」 日は少し前に暮れてしまい、モモの潤んだ瞳は魔法の照明の光を反射してキラキラと輝いて見える。 街からの帰り道は特に何も起こらず、ユモトが無駄に怯えただけで終わってしまった。「ただいま、モモさん」「おかえりなさい、ムツヤ殿」「あー、イチャつくのは良いが家の中に入れてくれ」 二人を見てアシノは頭をぽりぽりと掻きながら言った、するとモモの目線はムツヤから慌ててアシノに移る。「そ、そんな、い、イチャついてなどおりまちぇ、おりません!!」「はいはい、わかったわかった」 そんなモモを押しのけてアシノは家に入った。「うぅ……」と言いながら顔を隠すように下を向いてモモは道を譲りムツヤ達も家の中へと入る。「それじゃあ急いでお夕飯を作りますね!」 割烹着に着替えて台所に入るとユモトは袖をまくり上げて「お任せあれ」といった自信満々の顔をする。「はい、お願いじまず。あ、あと皆にお土産にクレープ買っできだがら後で食べましょう」「うわぁー、僕クレープ大好きなんですよ、ありがとうございますムツヤさん!」 その華のある笑顔は、一瞬ユモトが男であることを忘れてしまいそうになった。 台所から少し離れた居間で鎧を脱いでソファに座ってくつろいでいるアシノは対面に座るムツヤに尋ねる。「なぁ、本当にユモトって男なんだよな?」「そうでずよ」 そう、決して忘れてはいけない。ユモトは男だ。「それで、隣のヨーリィは迷い木の怪物の眷属で、今はお前が主人なんだよな?」 ムツヤにもたれかかって眠そうにしているヨーリィをあごで指してアシノは言う。「えぇ、そうでずよ」 ふーんと目を閉じてアシノは考える。「なぁ、お前の夢って何だっけ?」「はい、この世界でハーレムを作るごどでず!」 純粋な笑顔を作って最高にゲスな考えをムツヤは口にする。こいつは多分本気なんだろうなとアシノは理解した。「えーっと、お前さ。色々なことに目をつむれば今の状態ってハーレムなんじゃないのか?」 3秒ぐらいムツヤはぽかんとしていたが、騒がしい声を上げて言う。「うっそ!? 本当でずか!?」 アシノはため息をついてアホのムツヤに説明をしてやるかと話す。「まずモモはお前の従者なんだろ?」 うーんとム
last updateLast Updated : 2025-11-29
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裏の道具を装備していくかい? 1

「何か私にも使える裏の道具はないのですか?」 モモはムツヤとルーに問いかける。うーんと唸ってルーは考えていた。「モモちゃんは魔力がそこまで無いけど、剣の腕と力はあるから、魔力を消費しない道具を持つのが良いと思う。そんないい感じの剣はある? ムツヤっち?」「うーんと、あっ、ありました!」 そう言ってムツヤはカバンから一振りの剣を取り出した。剣の鞘の精巧な作りを見るだけで上等な物だという事がわかる。 ムツヤは剣を鞘から抜いた。その刀身は諸刃の剣で武器鑑定の専門家でもないモモが見ても業物だと分かる1品だった。「この剣って手入れじなぐても刃こぼれしないんで便利なんでずよ」 ムツヤは剣を鞘に収めてモモへと手渡す。本当に自分に扱いこなせるのか不安だったがモモはその剣を手に取る。「ムツヤ殿、お預かりします」 「試し切りでもしてみたら?」 ルーは軽いノリで精霊を召喚した。 精霊は自分から動くことは無かったが、どっしりと構えたそれに傷を付けるのは誰が見ても難しいと思えるものだった。「わかりました、では」 剣を構えてモモはその精霊に向かって切り込んだ。 そして、モモは驚く。ほとんど何の抵抗も無く精霊を真っ二つに切り裂いてしまったからだ。見ていた皆もおーっと驚きの声を出す。「これは……」 モモは剣の素晴らしさに感心すると共に少し恐怖心を抱いた。こんな強力な剣を自分は扱いこなせるのかと。そして出した結論は……「ムツヤ殿、この剣は大切に使わせて頂きます」 モモはそう言って剣を収めた。この剣を扱うのに相応しい自分になる事を誓って。「わがりましだ! それとこっちの盾もどうぞ」 ムツヤは青銅色の盾を取り出して言った。さっきの精巧な作りの剣から比べるとだいぶ骨董品のような物だった。「この盾はどんな攻撃をされても平気なんですよ。試しに…… モモさんそこの金づちで思い切り盾を殴ってみて下さい」 モモは困惑した。ムツヤの事を疑うわけではないが、骨董品の様な盾を思い切り殴りつけて万が一の事があったらと心配をする。「本当に大丈夫なんですか?」「大丈夫でずよ」 不安がるモモにムツヤは笑顔で返事をした。それならばとムツヤを信じてモモは盾を構えるムツヤを力いっぱい金づちで殴った。  それは不思議な感覚だった。思い切り盾を殴ったはずなのにモモの手に衝撃は無く、音も
last updateLast Updated : 2025-11-30
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裏の道具を装備していくかい? 2

「あぁー……」 ムツヤ達はやっぱりといった感じに声を出した。白とピンク色の、少し布の面積が狭いその服は驚くほどユモトに似合っていた。「ねぇ、どう? どう? 可愛いでしょ!」 ユモトの代わりにルーが興奮気味に言う。ユモトは相変わらず口に手をあててモジモジしながら下を向いている。「や、やっぱりこの服はダメですよ!」 ユモトは真っ赤に照れ涙ぐみ、うるうるとした目をしながら言った。「それで、魔力の方はどう? 魔力が上がったとか魔法が使いやすいとか、そんな感じはない?」「うぅ、ちょっと使ってみます」 そう言ってユモトは先端がハート型の杖を使い、魔法の防御壁を出してみる。期待するルーを尻目にユモトは「うーん」と浮かない顔をした。「何ていうか、やっぱり僕はいつもの服の方が魔法を使いやすい気がしますし、その、恥ずかしくて集中が出来ません!」「そりゃ残念」 ルーはわざとらしく両手を上げてやれやれといったポーズをする。ユモトは別室へ逃げるように入り、いつもの服に着替え直してきた。 そして次はヨーリィの番だ。相変わらずムツヤの側を離れようとせず、ひょっこりと顔だけを出してルーを見ている。「ヨーリィちゃんは得意な武器ってある?」「私は魔力で作った杭を投げて戦います。その他に一応護身用のナイフは持っていますが」 そう言われて、うーんとルーは目をつむって考えた。「ヨーリィちゃんは体を枯れ葉にする事が出来るんだよね?」「はい攻撃を受けた時に枯れ葉になりますが、自分の意志でも出来ます」 話しながらヨーリィは右腕を枯れ葉にして見せ、そしてまた枯れ葉を集め自分の腕を作る。「マジで凄いな、私も色々と見てきたが、そんな技を使っている奴は見たことがないぞ」 アシノも感心していたが、ルーはうーんと唸ってヨーリィに質問をした。「それって見た感じだけど、枯れ葉を腕にする時に魔力を使ってるんだよね?」「はい、体の維持ならばそこまで魔力を使わないのですが、肉体の再構築には多くの魔力を使用します」「無敵ってわけじゃないって事か」 今度はアシノが腕を組んで下を向いた。ヨーリィにはどんな戦い方、そして武器が合うのだろうかと。「でもそのドレス姿じゃ戦いづらいんじゃないか?」 ヨーリィは白黒のゴシック調のドレスを着ている。確かに戦いの場では少し浮いた感じの格好だ。「これも
last updateLast Updated : 2025-12-01
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いわゆる日常生活 1

「ムツヤーヨーリィ、私の言ったこと疑ってるの?」 サズァンはみじんも怒ってはいなかったが、わざとらしく両腕を腰に当ててむくれていた。「そんな、疑ってなんていませんよ!」 ムツヤは慌てて邪神に弁解する。その様子が可愛いものに思えてサズァンは目を細めてクスクスと笑った。「っていうかあんた、何でヨーリィと同じベッドで寝てるのよ! 大丈夫ヨーリィ? 変なことされてない?」 マヨイギが心配そうに言うとヨーリィはふるふると首を横にふった。「マヨイギ様、これはお兄ちゃんから魔力を貰っているだけです」 そうは言われてもマヨイギは心配でならない。「マヨイギ様もご無事なようで何よりです」 彼女達は互いに心配をしあっていたようだ。そんな感動の再開の最中、ムツヤの部屋のドアを誰かがノックした。「おい、何かあったのか?」 そして扉が開く、そこに居たのはアシノだ。「あら、お久しぶり勇者さん」 サズァンはにっこりと笑い手をヒラヒラと振った。ということは隣にいるのは例の迷い木の怪物だろうとアシノは自分でも驚くほど冷静に、早く理解ができた。「つい昨日会ったばかりだろう? 裏ダンジョンの邪神サズァン」「そうよ、裏ダンジョンの主『邪神サズァン』よ!」 両手を腰に当ててえっへんと胸を張る。黒いドレスの様な服は胸元が開いており、その豊満な胸が強調された。「何の用なんだ?」 アシノは少しばかり警戒をしながら言う。ムツヤに協力的だとはいえ、邪神は邪神だ。「何よー、用が無かったらムツヤと話しちゃダメなわけ?」 サズァンはプクーっと頬を膨らませて怒っている、その言動はとても邪神だとは思えないものだった。「まぁ、一応用事もあるんだけどね」 おどけた雰囲気を消し去り、サズァンは話し始める。そこには確かに邪神の風格があった。「ムツヤー? 鞄の中に周りの道具の場所を映し出すガラスがあったでしょ?  あれを使えば索敵もだいぶ楽になると思うわ」「これですか?」 ムツヤは一枚のガラスの板を取り出した。「そうそう」とサズァンはうなずく。 アシノは後ろからそのガラス板を覗き込んだ。そこには周辺の精巧な地図が浮かび上がり、自分達が居る場所は赤い点がいくつも光っていた。「この赤い点が裏の道具ってところか?」「ご明察ぅー」 サズァンはアシノに向かってパチパチと拍手をする。「ムツヤ
last updateLast Updated : 2025-12-07
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いわゆる日常生活 2

「そ、そんな事無いですよモモさん!」 慌ててユモトはモモにフォローを入れておく。「俺、モモさんの料理も好きなんで楽しみです!」 ムツヤが笑顔を作って言うと、モモは「あ、あう……」と小さく言って下を向いてしまった。 ヨーリィはマイペースに真顔のままもしゃもしゃと朝食を食べている。「ごちそうさまでした」 皆が食べ終わるとユモトは食器を片付け始める。モモも「私も手伝おう」と皿を洗った。「皆この後はどうするんだ?」 アシノが尋ねると皆は思い思いに返事をする。「私は新しい剣を使いこなせるよう特訓をしようと思っています」 食器を洗い終えたモモは、腰に携えた剣を触りながら言った。「僕も家事が何もなければ魔法の練習をしたいです。やはり数年使っていなかったのでまだ馴染まない部分があるので」 早くムツヤさんに恩返しがしたいとユモトは決心し、杖をギュッと握りしめる。「それじゃ私は2人の特訓のお手伝いをしようかな」 ルーがにこにこ笑って言うと2人は「よろしくお願いします」と言って軽く頭を下げた。「俺はサズァン様から言われた通り、この板で裏の道具の位置を見つけようと思います」 ムツヤはカバンからガラス板を取り出して言った。するとルーがまた騒ぎ出す。「えぇー!? 昨日サズァン様が来てたの!? 私も邪神様に合ってみたかった!」「ま、まぁまた会えると思いますよ」 物凄く悔しがっているルーにムツヤは若干戸惑いながら言った。「私はお兄ちゃんのお手伝いか、お姉ちゃん達の特訓のお手伝いをします」「ヨーリィ、俺の方は大丈夫だがら、モモさんとユモトさんの特訓のお手伝いをしてあげて」 ムツヤはそう言ってヨーリィの頭を撫でた。「んっ」と小さい声を出したのは了解したという意味だろう。「私もビンのフタでも飛ばしながら訓練でも見ていてやるかな、技術は失ったが知識だけは一応あるんでね」 自虐気味にアシノは言った。これで全員の今日の予定は決まったみたいだ。 モモは土くれで作られた精霊と対峙していた。 振り下ろされた木刀を横っ飛びで避けてスキが出来た脇腹を剣で切り抜く。すると精霊は形を保てなくなり、土へと還っていく。「筋は良いな、剣は誰から教わったんだ?」 その様子を眺めていたアシノはモモに尋ねる。剣を鞘に収めるとモモは答えた。「主に父と村の戦士からですね」「そう
last updateLast Updated : 2025-12-10
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闇と病み 1

「ムツヤ殿、お慕い申し上げます」 興奮して瞳孔が開いたモモはムツヤを押し倒し、顔を近付けている。「ムツヤ殿、こんな醜い私の事はお嫌いかもしれません。ですがこの気持ちはもう抑えきれません」 ムツヤはモモの突然の行動に唖然としていたが、胸はドクドクと早く脈を打っていた。 それは夕食が終わり、辺りもすっかり暗くなって。空は月と星々が支配している、そんな夜だった。 ムツヤ達は風呂に入ったり、ソファーでのんびりとくつろいだりと思い思いに時間を過ごしている。 しかし、そのゆっくりとした時間は突然終わりを告げた。「みんな大変、大変なのよ!!」 大声を出しながらルーは地下室から大慌てで出てくる。「騒がしいやつだな」 頬杖をしながらソファーで寝転んでいたアシノは気だるそうに言う。「ちょっと、ちょっとこれ見て!! この赤い点って裏の道具なんじゃない!?」 地図の北側から赤い点が現れた。ルーは探知盤を指でつついてその場所を拡大する。「おいおい、これってこっちに向かってきてるんじゃないか?」 ルーは慌てて頭の中で計算をした。相手の移動速度は馬を使っているか、瞬足の魔法を使っているかのどちらかだ。「えーっとこのままだと多分1時間もしない内に来ちゃうわね」「えぇー!?」 ユモトは驚いて立ち上がる。それに比べてモモやアシノはだいぶ落ち着いていた。「そうか、それじゃあ準備をしなくちゃな」 アシノは立ち上がりソファーで未だに寝ているムツヤの額へと弱めにビンのフタをスッポーンと飛ばす。「うん? んー……」「起きろムツヤ、敵が来るぞ」 敵という言葉を聞いてムツヤはゆっくりと目を開けた。「ムツヤっち!! この探知盤を強化するのにいじっていたら裏の道具がこっちに向かってきてるのを見つけたの」 ルーはムツヤの眼の前に探知盤を突きつける、それでムツヤの目は完全に覚めたようだ。「これは…… 戦わないどいげないでずね」 ムツヤはアホだが、戦いの経験だけはこの場にいる誰よりも、それこそ勇者アシノよりも長い。たとえ寝ていても一瞬で身も心も戦いに備えることができる。「ヨーリィ起きて、敵が来ているみたい」 ヨーリィは相変わらずマイペースに目を覚ましてスッと立ち上がった。「まず作戦を考えるか」 そう言ってアシノは座ったまま腕を組む、うーんと目をつぶって10秒ほど考
last updateLast Updated : 2025-12-11
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