All Chapters of 裏庭が裏ダンジョンでした: Chapter 41 - Chapter 50

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闇と病み 2

「そこまでです! スリープ!」 モモは力が抜けたように腕をだらんとさせて目を閉じる、どうやら眠ってしまったようだ。「ムツヤさん大丈夫ですか!?」「ユモトさん!」 扉の外にはユモトが杖を構えて立っている。「事情は後で説明します、とりあえずこちらの部屋に来て下さい」 そう言ってユモトはムツヤの手を引いて自分の部屋へと招く。「いやービッグリしましだ、モモさんは大丈夫なんでずか?」 カチャリ、扉の鍵が掛かる音がした。「やっと2人きりになれましたね」 ムツヤはこの状況にデジャヴを感じる。 大きく見開いて、少しだけ狂気を混ぜた潤んだ瞳。そして紅潮した頬、さっきモモと出会った時と同じ状況だ。「ゆ、ユモトさん!?」 ユモトはムツヤの両肩を掴んでそのまま手を後ろに回して抱きついた。「ムツヤさん、覚えていますか? ムツヤさんは僕を助けてくれた」 ムツヤがユモトの肩にそっと手を置いて引き離すが、ユモトは続けて言う。「ムツヤさん、頼みたいことがあるんですちょっと」 ユモトは口に手をあててモジモジとしている。「一度でいいから、その、憧れているんですムツヤさんに!」 何を一度なのかムツヤにはわからないが、またユモトは抱きついてきた。「い、一度ってなんですか? 何をですかぁ!?」 ムツヤはどうしていいかわからずに叫び声を上げる。「そのために人目につかない所に来たんです、一回きりで僕は満足するんです。お願いですから、ねぇ、良いでしょう?」 そんなムツヤへの助け舟のごとく階段を駆け上がる音が聞こえた。「ムツヤ、ムツヤどこだ!? モモ、ユモト、無事なのか!?」 アシノの声だ、ムツヤは大きな声を出して助けを求める。「アシノさーん!! ここにいますー!!」「どうして、2人きりになれたっていうのに」 ユモトは瞳孔を開いて絶望した顔をする。 ドアノブが何度かガチャガチャと音を立て、鍵が掛かっている事を理解するとアシノは回し蹴りを入れてドアを蹴破った。「ムツヤ、ユモト! 無事か!?」「アシノさん、ごめんなさい!」 そう言ってユモトはアシノに眠りの魔法を放つ、耐性のないアシノは崩れ落ちるように夢の中へと旅立つ。「さぁ、ムツヤさん。こっちへ」 手を引かれてムツヤはベッドの近くまで連れて行かれる。 そしてユモトは仰向けに倒れこむようにしてベッドに
last updateLast Updated : 2025-12-12
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闇と病み 3

ウトナはバッと両腕を開いて空を見上げて叫ぶ。「私の夢は! かっこかわいい亜人ちゃん達をペットにしてハーレムを作ることよ!」 その場に居たウトナを除く全員がぽかんとした顔をしていた。 アシノはムツヤの方を振り返って言う。「何かアイツお前みたいな事言ってるぞ」「え、えぇー!? 俺でずか!? あんな変な人と一緒にしないでくだざい!」「あらぁん、変な人なんて失礼しちゃうわ」 右手を頬に当ててウトナはくねくねとする。「ウトナ…… だっけか、知らないようだがら教えてやる!! 亜人の人達は人間を好きになんてならないんだ!」 モモは口を結んでうーっと小さな声でうなったが、ウトナはムツヤの話を聞いて大声を出して笑った。「あーっはっはっはっは、何も知らないのは坊やの方ね。愛があれば人種も性別も関係ないのよ!」 それを聞いてモモはうんうんと頷く、だがそれと同時に一つの疑問が生まれる。「ちょっと待て、そんな平和主義者みたいな事を言っているくせに何故お前はキエーウに所属しているんだ?」「亜人の女は黙りなさいよ!」 恐ろしい形相をしてウトナはモモを睨みつけ、ふぅーっと息を吐いて質問に答えた。「私はカッコいい亜人の男の子は大好きだけどねん。あくまで人間が上、亜人は人間に従うのが一番の幸せなの」 続けてウトナは話し続ける。「ワンちゃんっているわよね、ワンちゃんは人間にしっぽを振って従順に甘えるから可愛いの。亜人もそれと一緒で主従関係をしっかりさせてあげるのがお互いにとって幸せなのよ」 ルーは呆れたようにやれやれと両手を上げてウトナに言う。「詭弁ね、ただ自分が相手を好きなように支配したいだけじゃない」 それを聞いてクスクスとウトナは笑った。「人生なんて一度きりなのよぉん? 欲望のままに生きた方がいいじゃない」 今まで黙っていたユモトが口を開く。「そんな! みんながみんな欲望のままに生きたら世界はメチャクチャになっちゃいますよ」「女は黙っていなさいよ!!」 またウトナは恐ろしい形相を作る。「僕は男です!」「嘘おっしゃい、もうおしゃべりは終わりよ! 私の夢のためにそのカバンを頂くわ!」 ウトナが杖を構えると同時にムツヤ達も身構えた。「くらいなさい! プリティビーム!」 ウトナはそう叫ぶと、四方八方に杖から光線を出した。ムツヤはそれを人間離
last updateLast Updated : 2025-12-13
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それぞれの想い 1

 モモはベッドの上に膝を抱えて座り、窓から月明かりを浴びていた。自分が魔法で感情を暴走させた時の事をなんとなく覚えている。 自分はやはりムツヤ殿の事が好きなのだろうか。 いや、命の恩人、村を救ってくれた恩人。強い戦士。そしてオークを偏見の目で見ない人間として考えれば確実に好きなのだろう。 では異性として見た場合はどうなのだろうか。優しく純粋で、強いムツヤ殿。人間の顔は同じに見えるので美醜についてはよくわからないが。 栗色で艶のある髪を指先でクルクルといじる。そして月明かりに照らされた自分の緑色の肌を見た。 自分はオークとして産まれ育ったことを誇りに思っている。力強く、自然を愛し、自然と共に生きるオークという種族も自分の誇りだ。 だが「もしも」と考えてしまう。自分の肌が薄橙色で…… それでムツヤと出会っていたらと。 自分が情けない。戦士として戦わなくてはいけない、もっと強くならなくてはならないというのにこんなくだらない事ばかり考えてしまうことが。 モモはどうしたら良いのかわからない感情を胸に秘めたまま、三角座りの膝に顔を押し付けた。 ユモトはベッドの上でジッとしていた。なんだか寝付けない。 横になるのは何となく好きじゃない、病気で動けなかったあの時を思い出してしまうから。 お父さんには心配をかけまいと一緒にいる時は大丈夫そうに振る舞っていた。 しかし、ユモトはムツヤに薬を飲ませてもらう3日前から父ゴラテが家にいない時には、トイレまで這って行って血を吐く程に症状が重くなっていた。 今でも鮮明に覚えている、目の奥が痛くて頭痛がして、関節は全部痛くて。這いつくばってトイレに血を吐いた時の恐怖と弱い自分への情けなさ。 全ての希望が消えていって、世界が灰色になって……。 そんな世界から僕を突然引っ張り上げてくれたのがムツヤさんだった。 僕にとってムツヤさんは勇者だ。助けてくれたことはもちろんだけど、僕が使えない魔法も触媒無しに軽々と使ってしまい、優しくて仲間思いで、本当に遠い遠い憧れの存在だ。 そんなムツヤさんの仲間でいられることは誇らしく思う。その反面、僕なんかがムツヤさんの仲間としてやっていけるのだろうかという不安がある。 ユモトはシーツを頭の上まで引っ張り上げた。「お兄ちゃん」 ヨーリィとムツヤは向かい合って寝ていた。ムツヤはヨー
last updateLast Updated : 2025-12-14
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それぞれの想い 2

 朝になりユモトは目が覚めた。若干、寝不足気味だが、時間になるとちゃんと起きてしまう。 居間ではルーが真剣な表情で探知盤を見ていた。あれからずっとそうしていたのかと思うと、ユモトは尊敬と感謝の念を覚える。「おはようございます、ルーさん」「あぁ、おはよーユモトちゃん」 元気そうにウィンクをしたが、その顔には少し疲れが見えた。「あの、ルーさんも少し休まれては?」「私が休んじゃったら探知盤見る人が居なくなっちゃうからねー、ヘーキヘーキ」「そうですね…… すみません」 ユモトは気遣って言った言葉だが、当たり前の事を返されて言葉が出なくなる。「それよりお腹空いちゃった!!! ユモトちゃんごはん頂戴ごはん!!!」 メイド服を着たルーはソファの上でニーソックスを履いた足をバタバタとさせた。「はい、今作りますね」 笑顔でユモトは言った後に朝食の準備に取り掛かる。 やがて、簡単な朝食が出来上がるとユモトは皆を起こして回った。「ンまあーーーい!!! さすがユモトちゃん、絶対私のお嫁さんにするから!!!」 皆が揃う前にルーはガツガツと朝食を食べている。「ですから、僕は男ですって」 半分諦めたような苦笑いでユモトは言った。「ルー殿、一晩中寝ずの番お疲れさまです」「いいのいいの、私は夜の方が元気だから」 モモがねぎらいの言葉を掛けると握ったフォークと一緒に手を振る。「でも私、流石に朝になったら眠くなってきちゃったからギルドまでは誰かおんぶしていってよねー」「お前は子供か」 アシノは呆れたように言った。他愛もない会話をしながら朝食をとる、昨日キエーウというテロリストによる襲撃があったとは思えないほど穏やかな朝だ。 そして朝食を食べ終えると全員が準備を終え、スーナの街のギルドを目指す。「よーししゅっぱーつ!!! それいけムツヤ号!!」「はい!」 ムツヤの背中には本当にルーが乗っかっていた。 裏の道具である『魔法の固定具』でしっかりと密着している上に、ルーはギューッと抱きついているので背中には小柄な体の割には大きな2つの柔らかい感触が感じられる。 デレデレとした表情になるムツヤを見てモモは一言進言した。「あ、あのー? ムツヤ殿? やはりルー殿は従者である私が背負うべきでは?」 しかし、ルーはムツヤにしがみついたままだ。「モモちゃん、
last updateLast Updated : 2025-12-15
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それぞれの想い 3

「あ、あの、ムツヤ殿…… 口を開けて頂けますか?」 モモは照れて俯きながら言う、ムツヤは言われた通りに口をあーんと開けた。そこへモモはクッキーを近づけた。「んむんむ、美味しいですね」 裏の道具の探知盤を操作している為に両手が使えないムツヤへ茶菓子を食べさせている。ただそれだけなのに、モモは物凄い気恥ずかしさを感じている。 ムツヤがクッキーを食べ終わると、砂糖を多めに入れた紅茶を口元へ近づけた。「はぁー、紅茶とクッキーって良いですね。モモさんありがとうございます」 ムツヤは満足そうに言った、その笑顔を見てモモはニヤけた笑顔になってしまう。「そ、そうですね」 顔を隠すようにモモも自分の紅茶を飲んだ、フワッとした茶葉の香りが気分を良くさせる。「ヨーリィちゃん、クッキー美味しい?」 真顔でクッキーをサクサク食べているヨーリィを見て思わずユモトは声をかけた。「うん、おいしい。ユモトお姉ちゃん」 首だけをぐるりと横に向けてヨーリィは返事をした。それを見てユモトはアハハと苦笑いする。「そ、そっかー、それと僕は男だからお姉ちゃんはやめてね?」 ルーはいつの間にかシートの上で大の字で寝ていた。アシノはあぐらをかいて紅茶を飲んでいる。 そんな時間がしばらく過ぎた後、そろそろかとアシノは立ち上がり手をパンパンと叩く。「さて、そろそろ気を引き締めていくぞー」「あ、はい! それじゃお片付けしますね」 ユモトはティーセットを集め、カバンの中に洗ってないまま入れても大丈夫なのか心配になったが、中で汚れることはないとムツヤが言うのでそのまま入れてしまう事にした。 またムツヤはルーを背負い直し、ユモトは探知盤を持って冒険者ギルドのあるスーナの街を目指す。 キエーウに襲われるといった心配は杞憂に終わり、あっという間に街へと着いてしまった。活気ある喧騒がムツヤ達を出迎えてくれる。「おら、ルー。いい加減に起きろ」 アシノに頭をペチンと叩かれてルーは目を覚ます。「何よーまだ冒険者ギルドに着いていないじゃない」 アシノははぁーっとため息をついた。「お前は仮にも冒険者ギルドの幹部だろ? もっと威厳を持て!!」「えぇー、ついこの間まで勇者だったのに酒飲みだったアシノがそれ言うー!?」 痛い所を突かれてアシノはうっと言葉に詰まった。「とにかくだ、歩け!!」
last updateLast Updated : 2025-12-16
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研究者

「どう? 興味湧いちゃったでしょ?」 ルーは両手を後ろに回して、前のめりになる形で顔を突き出した。いつも軽口を叩いているギルスは呆然としている。「他にもモモちゃんが今持っているのは無力化の盾でしょ、それに私の新しい杖も名前はわからないけど魔力の伝導率は90%越えのすぐれものよー」「ちょっと待ってくれ、状況に頭が追いついていない」 ギルスが頭を抱えるのも無理はなかった、今日も適当に武器を売り買いする平凡な日常が始まると思っていたら、とんでもない人物がとんでもない物を持ってきたのだ。「とりあえず、話は聞く」 ギルスはカウンターを出て店のドアの営業中という看板をくるりと回して閉店にし、ガチャリと鍵も掛けた。「えーっと、それで俺はどこから…… 何から話を聞けば良いんだ?」 もう何度目だろうかと思いながらムツヤは自分の生い立ちを話し始めた。「なるほど、事情は分かった」 長話になるだろうと、途中ギルスは紅茶を入れてくれた。 話を聞き終わるとすっかり冷めてしまったミルクと砂糖をたっぷりと入れた紅茶を一口飲んで言う。 ムツヤ達は裏ダンジョンの事、キエーウがそこで手に入る裏の道具を狙っていること全てを話した。「到底信じられない話だが、論より証拠ってか。本物の魔剣や見たこともない魔道具を見せられたら信じるしかないわな」「そこでだ、お前にはこの裏の道具の研究を頼みたい」 アシノの言葉にギルスは首を横に振る。「お断りだ、俺はただの武器屋の店主。研究なんてバカバカしくて出来っこないね」「もー! なんでよー!」 ルーはむくれて地団駄を踏む。次に話し始めたのは意外にもモモだった。「ギルス、頼む。キエーウは裏の道具を使って亜人を殺そうとしている」 真面目にそう言われるとギルスも腕を組んで少し唸ってしまう。そして唐突に口を開く。「それじゃあ…… 俺の昔話もちょっとして良いか?」「俺が昔、王都で研究員をしていた事は知っているかな?」「はい、アシノさんから聞きました」 ムツヤは相づちを打つ、片目を開けてギルスはムツヤを見るとそのまま上を向いて話を続ける。「死ぬほど勉強してやっと入った研究員だったが、現実は俺の理想とは全く違うものだった」「俺はただ、純粋に道具の研究がしたいだけだったが、現実は馬鹿な派閥争いに、足の引っ張り合いだらけだった」 濃いめの
last updateLast Updated : 2025-12-17
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翼竜討伐 1

 ここは冒険者ギルドの闘技場、モモが試験でルーの召喚した精霊と戦った場所だ。人払いは済んでいるので今はムツヤ達しかいない。 訓練用の木刀を持ち、ムツヤは体を伸ばして戦いに備える。ギルドマスターのトウヨウは目を閉じて精神を集中していた。 モモとユモトは固唾を飲んで見守り、ヨーリィは興味があるのか無いのかオレンジジュースを飲みながらぼんやりと眺めていた。 武器は木刀のみ、魔法の使用は無しの一般的な剣士の試合だ。両方が相当な実力者ということを除いては、だが。「それでは準備は良いですね? 試合開始ー!」 ルーが威勢よく言うと同時にムツヤはトウヨウ目掛けて一直線に突っ走る。 縦に振り下ろされたムツヤの木刀はトウヨウの頭を捉えていた。 トウヨウはそれを木刀で受け止めると斜めに切り下ろすように反撃をする。ムツヤもそれを受け止め、身をよじって足元を狙う。 そんなやり取りが数回続いた時、突然バキィッという音がした。二人の持っていた木刀が同時に折れてしまったのだ。それを見てトウヨウは笑った。「どうやら木刀では手合わせにもならんらしい」 笑いをやめるとトウヨウは真面目な顔をして言う。「お前さえ良ければ、真剣でどうだ?」 ユモトとモモに緊張が走る、ムツヤは強いし、どんな傷でも治る薬はあったが、万が一という事もある。「お互い鎧を着て、剣と魔法の使用も自由にしよう。恥ずかしい話、年甲斐もなく滾ってしまった」「わがりまじた」 お互い準備をするために試合は中断になった。そして少しの時が経ち、両者は本気で戦うための格好になった。 トウヨウは青いフルプレートアーマーに身を包み、両手剣を持っている。ムツヤは軽装の鎧と、片手剣を持つ。「それでは仕切り直してー…… 試合開始!」 トウヨウは鎧の重さを少しも感じさせない機敏な動きで迫る。軽々と両手剣を振り下ろすがムツヤは横っ飛びでそれをかわす。 そのままムツヤは胴を剣で横切りにしようとするが、両手剣で弾かれてさっと後ろに引く、その最中にも炎の玉を数十発も発射した。 トウヨウは左手に魔法無効化の術式を作り上げるとそれをかざして全ての火の玉を消し飛ばす。 モモは夢中でその戦いを見ている。不謹慎ながらムツヤが怪我をしたらどうしようという考えはどこかへ飛んでしまった。 実力者同士の戦いはこんなにも圧巻され、美しい
last updateLast Updated : 2025-12-19
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翼竜討伐 2

 スーナの街から山を目指す6人の人影があった。 先頭はオークの女だ。恐ろしい切れ味の剣で襲い来る巨大コウモリやクモを真っ二つに切り裂いている。 その後ろには魔術師が居た、剣が届かない高さのモンスターを火や雷で撃ち落としている。倒しそこねた敵は少女が木の杭を投げて撃ち落としていた。「モモちゃんは裏の武器を使っているけど、それを抜きにしても二人共成長はやいねー」 ルーはパチパチとモモとユモトに拍手を送る。「あ、はい、ありがとうございます」「ルー殿のご指導のおかげです」 ユモトは照れながら頭を下げ、モモは剣を鞘に収めて言った。 ムツヤは最後尾で探知盤とにらめっこをしている。 万が一にもキエーウが裏の道具を奪いに来ないか警戒のためと、コイツを先頭にすると歩いているだけでモンスターを蹴り飛ばし、手で払っただけで粉々にしてしまうからだ。 モモとユモトを早く1人前の冒険者にしようと考えているアシノの提案で、翼竜討伐に遅れない範囲で二人に前衛を任せている。「そろそろ日も暮れてくるな、野営の準備をしよう」 アシノがそう言うと全員が返事をしてムツヤのカバンからテントを取り出す。 開けば家が出てくる魔導書もあるが、誰かに見られたらまずいのでテントで寝ることにした。 モモとユモトは料理当番で、残りはテントの設営だ。料理を作ってムツヤのカバンに入れてくれば楽だったのだが、急だったのでそんな準備をする時間は無かった。「私もー限界!」 テントの設営が終わるとルーは倒れ込んで寝てしまった。前日寝ずの番をして今に至るのだから無理もない。 ヨーリィは迷い木の怪物から教わった結界を張っている。 マヨイギのように空間を結界で閉じ込めることは出来ないが、侵入者が来た場合すぐ察知できるようになるらしい。「みなさーん、ご飯できましたよー」 しばらくすると、ユモトが大きい声で言った、それにつられて皆ぞろぞろと焚き火の前に集まる。 相変わらず美味い料理達を平らげると、疲れからか、みんな眠気に襲われた。 テントは2つあり、男女別だったが、ヨーリィは魔力の補給があるのでムツヤとユモトと一緒のテントで寝ることになる。 テントに入った後、ムツヤがやたら上機嫌だったのでユモトは質問をしてみた。「ムツヤさん、何か良いことがあったんですか?」 するとムツヤは笑顔で答える。「い
last updateLast Updated : 2025-12-21
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翼竜討伐 3

 朝になりユモトは目が覚めた。テントを出ると空は快晴で、眩しい朝日が出迎えてくれた。「ムツヤさん、ヨーリィちゃん、起きて下さい」 ユモトが二人の肩をトントンと叩くと、二人共むくりと起き出した。「ふーんあー…… おはようございますユモトさん」「おはようございますユモトお姉ちゃん」「おはようございます、でもお姉ちゃんじゃないからね?」 いつもの様なやり取りをして3人はテントを出る。そして、ムツヤのカバンから食材を出して朝食の準備をした。 簡単な朝食ができる頃、ヨーリィは女性陣のテントへ3人を起こしに行く。 全員が揃い、心地よい朝日のもとで穏やかな朝食が始まる。「ウゴオオオオオオオォォォォ」 それは突然だった。とっさに反応できたのはムツヤだけだった。遅れて他の皆も空を見上げる。 翼竜だ、トカゲを大きくして羽を生やしたあの姿は間違いない。ムツヤ達からだいぶ距離はあるが、雄叫びを上げて飛び回っている。「まずい、藪の中に隠れろ!!」 皆、弾けたように立ち上がり藪の中へと隠れた。声を潜めてユモトは言う。「あ、あれって獲物を探してるんですか!?」 その質問に、猟師であるモモは憶測で答える。「いや、狩りならば自分の居場所をわざわざ大声で知らせることはしないと思う」「ご明察ぅー」 どさくさに紛れながらジャムを塗ったパンを持ち出せたルーは、それを食べながら言う。「アレは求愛行動ね、いわゆる『お姉さん、俺とお茶しない?』みたいな、簡単に言えば翼竜のナンパってやつ?」 なるほどとユモトは納得した。アシノは木にもたれかかって腕を組んで目を閉じる。「一応アイツがどこかへ行くまでは隠れるぞ」「何か、突然大変なことになっちゃいましたね」 不安そうに言うユモトとは対称的にアシノは余裕そうだった。「悪いことばかりじゃない。アイツはまだつがいの竜を見つけてないって事が分かったんだ」 確かにとユモトとモモは納得する。翼竜は一通り飛び回って叫ぶと、山の向こうへと飛び去ってしまう。「さてと、厄介な客人が消えたことだし飯の続きだ」 能力や技術を失っても、肝が座っている所はさすが勇者だなとムツヤ達は思った。 思わぬ訪問者に邪魔をされたが、6人は朝食を済ませ、翼竜の巣へと向かう。 前衛はモモとユモトに任せ、その後ろからヨーリィは木の杭で、アシノはビンのフタで
last updateLast Updated : 2025-12-23
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翼竜討伐 4

 翼竜がどこかへ飛び去りアシノは立ち上がる。それに習うように皆も立ち上がった。「さて、どうするか」 アシノは頭を抱えた、1匹ならまだしもこの人数で翼竜を2匹相手にするのは少々骨が折れる。「どうするって、2匹になっちゃったんだから一旦ギルドに報告を入れないと」 そう言ってルーは連絡石を出すが、連絡石の信号の届く圏外らしく、何度信号を送っても反応はない。「通常ならば一旦ギルドに戻って指示を仰ぐべきだが……」 アシノはちらりとムツヤを見る。「ムツヤ、正直に答えろ。お前ならあの翼竜2匹を相手にできそうか?」「あ、はい。アレぐらいなら大丈夫だと思います」 あっさりとムツヤは答えたが、モモは待ったを出す。「ムツヤ殿!! いくらムツヤ殿が強いと言えど危険です!!」「そ、そうですよ! 翼竜2体なんて……」 ユモトもそれに同調した。ムツヤが強いことは知っていたが、不安はある。「翼竜がつがいになった後は何をするかわかるか? 卵を産むために狩りをして獲物を喰らい散らかす」 淡々と言うアシノの言葉に皆黙ってしまう。「この近くには村も牧場もある。何故こんな人里近くに翼竜が居るのかはわからないが、村の人間が危険に晒されるだろう」 状況判断と、真剣な顔付きはまさに勇者と呼ぶにふさわしい風格があった。「ムツヤが本気で戦って勝てるのであれば、とっとと始末したい。裏の道具やキエーウの件もあるしな」「わがりまじだ」 ムツヤは返事をし、それに対してアシノは軽く頷く。 緊張感を漂わせながら6人は翼竜の巣を目指す。道中のモンスターを黙々と倒し、歩き進む。 そして翼竜の巣があると報告があった場所の近くまでやってきた。翼竜はどこかを飛んでいるのか、巣に籠もっているのか分からないが近くに気配はない。「よし、夜まで見張りをしながら交代で休むぞ」 しかし、アシノの提案はすぐに却下となった。遠くから翼竜の鳴き声が聞こえ、コチラに近づいて来ている。「休ませてくれなさそうね」 ルーは杖を構えた。翼竜の迫力に怖気づきながらもユモトとモモも武器を構える。「前衛はムツヤに任せる、後はそれぞれ飛び道具と遠距離魔法でサポートだ!! モモは周りのモンスターやもう1匹の翼竜の動きを見張ってくれ!!! 死ぬんじゃないぞ!!!」 近づいてきた1匹の翼竜はムツヤ達の上空を飛び去りまたUター
last updateLast Updated : 2025-12-27
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