陽翔は一瞬、ためらった。怜人おじさんが送ってくれたって嘘をつこうかと思った。でも、もし自分までママに嘘をついたら、ママのことが一番大好きな子どもとして失格だと思った。「どうしたの?」柚香は陽翔の様子の変化に気づいた。「怜人おじさんじゃなかったの?」陽翔は小さくうなずいた。柚香の胸が、ほんの少しざわついた。「じゃあ、誰?」陽翔は顔を上げて彼女を見た。丸い目の奥には迷いがあった。何度も考えた末、やっぱり口にした。「パパ」柚香は一瞬、言葉を失った。「ママの服も、パパが着替えさせたんだよ」陽翔は、全部正直に話すことに決めた。「メイクも落として、顔も洗って、体も拭いてくれた」柚香の表情が少し固まった。この結末は、正直そこまで意外じゃなかった。それでも、実際に耳にすると気持ちはやっぱり複雑だった。遥真が玲奈と同時に関係を続けようとしていたことは、憎らしくて、嫌で、気持ち悪くさえ思う。けれど、自分が一度言ったことをちゃんと覚えていて、こういう細かいところまで気にかけてくれるところを見ると、どうしても心が揺れてしまう。ふと、ネットで見た言葉を思い出した。クズ男って、あなたを愛してないこと以外は完璧な人。たまに思う。玲奈のことさえなければ、彼は本当にいい人かもしれない。細かいところまで気が利いて、優しくて、気遣いもできる。浮気したことさえ報告してくるくらいだ。しかし、そのことだけは切り離して考えるなんてできない。あの胸に刺さる言葉だって、なかったことにはできない。「ごめんね、ママ」柚香が何も言わないので、陽翔の小さな顔に申し訳なさが浮かんだ。「パパを家に入れちゃいけなかった……」「バカね。あなたは何も悪くないのに、どうして謝るの」柚香の胸がふっと柔らかくなる。手を伸ばして、陽翔の頭をくしゃっと撫でた。「陽翔は、元気で楽しく大きくなってくれれば、それだけでママは幸せだから」陽翔はこくんとうなずいた。二人で朝ごはんを食べ終えると、柚香もひとまずそのことを頭の片隅に追いやった。時間を見ながら陽翔を学校へ送り、そのあとで会社へ向かった。会社へ向かう車の中で、柚香は怜人にメッセージを送った。【昨夜、陽翔を迎えに行ってくれてありがとう】怜人は首をかしげた。「ん?」すぐに、柚香に電話をかけた。柚香は音量を小
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