1月1日、元日。年が明け、新年が始まった。私は朝早くから、キッチンに立っていた。おせち料理を用意するためだ。昨日から少しずつ準備していた、黒豆、数の子、田作り、紅白なます、伊達巻。それらを一つ一つ、丁寧にお重に詰めていく。実家でのお正月は、いつも忙しかった。旅館に泊まっているお客様のために、母と一緒におせちを作った。あの頃を思い出しながら、私は残りの料理を続けた。10時を過ぎた頃、氷室様がキッチンに現れた。黒いセーターに、グレーのパンツ。「おはようございます。あけましておめでとうございます」私は、笑顔で言った。「ああ、おめでとう」氷室様は、キッチンを見回した。テーブルには、おせち料理が並んでいる。「わざわざ用意しなくても……」「お正月ですから」私は、最後の一品を盛り付けた。「やっぱり、おせちがないと新年を迎えた気がしません」氷室様は、少し驚いたような顔をした。「そうか」「どうぞ、召し上がってください」◇リビングのテーブルに、おせち料理を並べた。お雑煮も作った。白味噌仕立ての、関西風。氷室様は、席に着いた。私も向かいに座り、二人で食卓を囲む。ここで初めて迎えるお正月、穏やかな時間。「いただきます」氷室様が、箸を取った。黒豆を一つ、口に運ぶ。「……美味い」小さく呟いた。「ありがとうございます」私も、箸を取った。お雑煮を一口。温かくて、優しい味。実家を思い出す。母と一緒に、よく作ったお雑煮。父が、美味しいと言って食べてくれた。懐かしい。リビングのテレビには、今朝の初日の出の様子が流れている。富士山から昇る、美しい朝
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