湊が普段は身につけていないので、新品同様だ。達也が酒を一口飲み、懸念を口にした。「突然、足が治ったと発表して、綾は信じるのか?」「信じるさ。俺のために喜んでくれるはずだよ」湊は自信に満ちた表情で、準備が整ったことを確認すると車椅子に腰掛けた。「この件を俺とお前だけの秘密にしておけば、綾は決して俺を恨まない」達也は深く考え込んだ。「誠さんには話してしまったのでは?」「あいつの口から聞かされても、綾はあいつが俺たちを仲違いさせようとしているとしか思わないだろう」湊の両目は炯々と輝き、普段は青白いその顔に、今日は血色が戻っていた。「君のおかげで、これからの俺の名声はさらに高まるはずだ」達也はグラスを空にすると立ち上がり、湊の肩を叩いた。「長年障害を患っていた中野グループの社長を、元気に歩けるまで完治させる。まるで名医だな」湊は顔を上げ、達也に向かって微笑んだ。「この数年、本当にありがとう。お前がいなかったら、6年前の今頃、俺はもう死んでいた」「親友だからな。さあ、行くか」達也はドアまで歩き、湊のために開けてやった。ドアの外には凪親子の姿があり、海斗は黒いスーツを着てネクタイを締めていた。凪の視線は湊の胸元にある少し時代遅れなネクタイに留まった。「湊、海斗とお揃いのネクタイじゃないの?」「皆に、海斗が隠し子だということを教えて回るつもりなのか?」湊は海斗を手招きし、歪んだ小さなネクタイを直してやった。「今日の誕生日ケーキは海斗の好きな味で作らせた。たくさん食べていいぞ」海斗は顔を輝かせた。「中野おじさん、最高!」「さあ、一緒に行こう」湊が海斗の手を握ると、凪は真司を押し除け、湊の車椅子を押し始めた。達也は視線をそらした。直視するのも忍びなかったからだ。湊のこうした行動を見ては、招待客たちが彼と海斗の仲を疑わないはずがない。綾とよりを戻そうと決めている今日、この場に凪たちを招くべきではなかった。湊が求める完璧とは、果たしてこんなものなのか?達也の綾に対する罪悪感が、以前にも増して激しく込み上げてくる。パーティー会場は2階にあり、一行はエレベーターで降りた。綾は招待客が集まったのを見て、湊の出番が近いと考え、車にプレゼントを取りに向かった。綾がパーティー会場を離れ
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