最大の人口を誇るバロ村は歴史学者のウォルターに先生をしてもらおうと思っていたんだけど、宣言通り助手の二人に丸投げした。 ま、結果として最良の選択だったといえなくもないんだな、これが。 ナートは読み書きを教えるのがうまく子供に人気、ヨーコは算盤を教えるのが巧みで、商売に目覚めた大人たちに算数ではなく数学を教えてくれているらしい。 特にジャスたち大工集団がその数学にハマっている。 建築に経験じゃなくて数学を導入してくれると建築速度や建築物の強度が上がるのでどんどん吸収して欲しい。 ……あー、まぁ、どれほどのレベルの数学なのかは判らないけど、江戸時代には算術ブームがあってびっくりするくらいの高等数学が庶民の間で広まっていたっていうし、文明の進歩に期待しているよ。 で、当の歴史学者は何をしているのかといえば、森の主ことラバナルのところへ押しかけている。 そりゃあ生ける歴史そのもののラバナルから話を聞ければこれ以上ない史実が知れる。 最初に押しかけたときは僕が連れて行ったんだけど、ラバナルに怒鳴られるかと冷や冷やしたもんだった。 ところが、ウォルターは博識雄弁で話が面白い。 語彙も豊富で話があちこち飛ばないので理解しやすく、ためになる。 これがいたくラバナルのお気に召したようだ。 今では月の頭に五日間泊まり込んで談義を交わし、村に戻って整理するという生活だ。 もちろん、他の領民の手前好き勝手ばかりもさせられないのでその豊富な知識を領地経営に生かすべく、歴史編纂など行政周りで仕事をさせている。 そんなこんなで、紙は領内でそのほとんどを消費してしまっていてジョーに「大事な商材が領内で消費されて商機を逸している」 と、会うたびに嫌味を言われる始末だ。 仕方ないじゃないか。
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