母からの連絡は、翌日には何事もなかったように届いた。『昨日買ったもの、何だったの?』 佳苗は少し迷ったが、隠すほどのことでもない。『マグカップとか日用品だよ』『写真見せて』 言われるまま送る必要はないと思った。それでも、これくらいなら構わないかと、昨日撮ったマグカップの写真を送る。『かわいいじゃない』『雄吾さんと色違い?』『うん』『新婚さんって感じね』 母の機嫌はよさそうだった。 佳苗も安心しかけたところで、次のメッセージが届いた。『今度から出かけるとき、どこに行くか教えてね』 佳苗の指が止まる。『どうして?』『何かあったとき心配だから』『雄吾さんと一緒だったよ』『それでも私は母親でしょう?』 また、その言葉だった。 佳苗は少し考えてから返信した。『心配してくれるのはありがとう。でも、出かけるたびに報告はしないよ』 しばらく返事は来なかった。 ◇ その日の夜、今度は恵から電話が掛かってきた。『お姉ちゃん、お母さんに何か言った?』「昨日からいろいろ」『やっぱり』「恵にも?」『位置情報共有しないかって言われた』「位置情報?」 佳苗は思わず声を上げた。『最近物騒だから、家族で共有しておけば安心だって』「それ、断った?」『断ったよ。何で二十四時間お母さんに居場所知られなきゃいけないの』 恵らしい答えに、佳苗は苦笑する。『そしたら、やましいことがなければ困らないでしょうって』「そういう問題じゃないよね」『でしょ?』 恵はため息をついた。『お母さん、どうしちゃったんだろ』「多分、不安なんだと思う」『何が?』
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