その日の夜。 佳苗は落ち着かない気持ちのまま、リビングに座っていた。 悟が雄吾のことを調べ始めた。 その事実が頭から離れない。 もし。 雄吾の立場を知って、 さらに暴走したら。 そんな不安が胸の奥をざわつかせる。「考えすぎだ」 低い声。 顔を上げると、雄吾がソファへ腰掛けていた。「顔に出てる」「……そんなにですか」「ああ」 即答だった。 佳苗は少しだけ苦笑する。 昔から、 雄吾には隠し事が通じない。「でも……」 佳苗は小さく俯く。「悟さん、先輩のこと知ったら、もっと変になりませんか」 その瞬間。 雄吾がわずかに目を細めた。「今さらだろ」「え?」「あいつは最初から、自分の思い通りにならないことに耐性がない」 冷静な声。「だから暴れてる」 佳苗は言葉を失う。 確かに。 悟は昔からそうだった。 機嫌が悪くなると空気を支配して、 相手が折れるまで追い込む。 佳苗はずっと、 それを“普通”だと思い込んでいた。 その時。 雄吾のスマホが震えた。「……三浦か」 通話へ出る。『ご主人側ですが、会社でも問題になっているようです』「ああ」『SNS投稿もかなり保存されていますので、今後は不利になるかと』「自業自得だな」『ええ。特に奥様への投稿が悪質でしたので』 三浦の声はいつも通り冷静だった。『現在、自宅待機になったという話も出ています』 佳苗は小さく息を呑む。
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