彼は自分一人で美津子と決着をつけるつもりだ。 過去の死者たちの無念も、自分自身が背負わされた数十年の呪いも、全部を自分一人で抱え込み、母親と刺し違える覚悟で。 だから、私に「来るな」と。私をこれ以上巻き込まないために、こんな悲痛な警告を送ってきたのだ。「……ばか」 私の唇から、熱を帯びた声が漏れた。 何が、僕が終わらせるだ。 私がどれだけの覚悟で時限公開の仕組みを組み上げ、私がどれだけの痛みを堪えてこの部屋の床を這いつくばっていると思っているのか。 私を安全な場所に遠ざけて、自分だけが傷ついて終わるような自己満足を、私が許すはずがない。「黒瀬さん」 私はスマートフォンを強く握りしめ、床に手をついて強引に上体を起こした。 全身の関節が悲鳴を上げ、視界がぐらりと揺れる。 黒瀬の手を退けかけたが、膝が崩れた。私は彼の前腕を掴んだ。今だけ借ります、と言う声も出なかった。「透様は、今どこに」 黒瀬は立ち上がった私を見上げ、その瞳にかすかな驚愕を浮かべた。 黒瀬は何も言わず、私が姿勢を戻すまで腕を動かさなかった。「……透様は、すでに本邸にお戻りになられました」 黒瀬も立ち上がり、姿勢を正して答えた。「血相を変え、一切の取り次ぎを無視して、奥様が待つ温室の方へ向かわれました。……私がこちらへ来る直前のことです」 温室。 あの焼け焦げた扉と、白い花が群生する、すべての呪いの原点。 美津子は透が向かってくるのをそこで待ち受けているのだ。「案内して」 私はスマートフォンをカーディガンのポケットにねじ込み、黒瀬を真っ直ぐに見据えた。「彼を、一人で終わらせるわけにはいかないわ」 黒瀬は数秒間私と視線を交え、そして深く、これまでにないほど深い角度で一礼をした。「……この先は、私も逃げません。ご案内いたします」 黒瀬は私の左腕を自分の肩へ回し、体重を受けてから処理部屋の
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