莉奈は弱々しくソファにもたれ、ため息交じりに呟いた。「もし彼女が本当に何も知らなかったなら、どうしてここまで追ってきたのかしら……」こちらへ歩いてくる柚希を見つめたまま、柊馬は何も言い返せなかった。確かに、柚希が立ち上がるまで、柊馬には競り合っている相手が誰なのか分からなかった。ところが柚希は二人を見ても、少しも驚かなかった。最初から、ここにいるのが自分たちだと知っていたに違いない。柊馬の胸にわずかに残っていた期待は、容赦なく打ち砕かれた。柚希は一歩ずつ柊馬の前まで進むと、マスクをつけてソファに沈み込む莉奈を見下ろした。ひどくやつれ、今にも命が尽きそうな姿をしている。柚希は鼻で笑い、冷たく言い放った。「莉奈さん、あなたは感染なんてしていない。感染したふりをしているだけよ!」莉奈の表情がこわばり、一瞬だけ動揺が走った。だが、すぐに思い直す。闇ルートから大金で手に入れた薬を使えば、X-Xウイルスに感染した時とほとんど同じ症状が出る。専門医でさえ簡単には見分けられない。感染を装っていると知っているのは、自分だけなのだ。そう考えると、莉奈は再び落ち着きを取り戻し、傷ついたように声を詰まらせた。「柚希ちゃん、特効薬を競り落とせないからって、また私に濡れ衣を着せるの……?」「濡れ衣?莉奈さん、今はエルデ病院の特別病室にいるんでしょう?そこには、あなたより先に私が入院していたの。私が生死の境をさまよっている最中に、あなたも感染して同じ病室に運ばれてくるなんてね。いくら何でも、都合が良すぎると思わない?」これは会場へ来る前に寧々から聞いた話だった。病院で出くわした時、寧々は柊馬の顔に見覚えがあったという。あとでネットで調べてみて、やはり本人だと確認したのだ。こんな偶然が重なるはずがない。ましてや、相手は莉奈なのだ。すべて、初めから仕組まれていたに違いない。そもそもX-Xウイルスは致死率が非常に高い。自分を陥れるためとはいえ、莉奈が本当に感染して命を賭けるはずがない。つまり、感染は間違いなく偽装だ。莉奈は涙を流しながら、無実を訴えた。「柊馬くんでさえ、ずっとあなたを見つけられなかったのよ。あなたがエルデ病院にいるなんて、私が知っているはずがないでしょう……」「あなたは柊馬より先に人をよこして、私の滞在先へパソコンを届けさ
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