神宮寺家のダイニングには、今日も穏やかで賑やかな朝の空気が流れていた。「澪さま、こちらもどうぞ」 ひまわりが張り切って小鉢を差し出してくる。「ありがとう」 澪が受け取ると、ひまわりは嬉しそうに笑った。「今、『ありがとう』いただきました!」「そ、そんなに喜ぶこと……?」「澪さまからの『ありがとう』は、格別ですからね!」 よく分からない理屈だった。けれど、その様子に思わず笑ってしまう。「ひまわり」 佐伯が静かに名前を呼ぶ。「朝から騒がしいですよ」「すみません!」 返事だけは今日も変わらず元気だった。 ◇ 朝食を終えたあと、澪は庭を散歩していた。 神宮寺家の庭は何度見ても広い。そして、季節の花々が丁寧に手入れされている。「綺麗……」 思わず足を止めた。白い桔梗が風に揺れている。 花屋で働いていても、こんな見事な庭を毎日見る機会はなかなかない。「気に入ったか」 すっかり聞き慣れてしまった低い声が聞こえ、振り返る。「あ……」 綾人の姿を見て、なぜか少しだけ胸が跳ねる。「綾人さん、お仕事は?」「昼からだ」 綾人は澪の隣へ並んだ。自然な距離だった。「この庭は、庭師が手入れしている」 そう言いながら綾人は桔梗へ視線を向ける。澪もその視線を追って、桔梗に意識を戻した。「とても綺麗です」「ああ」 短い返事。けれど、それがどこか満足そうなトーンなのも、聞き分けられるようになっていた。 ◇「そういえば……」 綾人が思い出したように口を開く。「今度、展示会がある」「展示会?」「
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