澪が吐き出した本音に、一瞬、誰も口を開けなかった。「……澪」 拓真が呆然と呟く。その声はまるで、澪の気持ちに今初めて気付いたみたいだった。「……この傷ついた気持ちも、私は、『お姉ちゃんだから』我慢しなくちゃいけないの?」 うまく息が吸えない。 胸の奥が苦しい。言わなければよかったと、一瞬頭の中に後悔が過った。「お姉ちゃん……」 美羽が震える声を出す。「ごめんなさい、お姉ちゃん」 美羽の言葉に、澪はゆっくりと顔を上げた。「これ以上、お姉ちゃんを傷つけたくないから、ハッキリ言うわね」 美羽はそう言うと、拓真の隣に立って、そっと彼の腕に自分の腕を絡めた。「拓真さんと私、付き合ってるの」「……え?」 今まで聞いて来た美羽たちの言い訳は一体なんだったのだろうか。美羽の言葉に、澪は拓真へと視線を移す。拓真は一瞬、何かを言いかけるように口を開いたが、なぜかすぐにその唇をきつく結んだ。「なんでもひとりでこなしちゃうお姉ちゃんに、自分が本当に必要なのか悩んでるって相談をずっと受けてたの。私も……いつも、お姉ちゃんに色々してもらってて申し訳ないって相談をしてて……そのうちに、私たちは惹かれ合ったの」「そんな……」 澪はただ自分の手をきつく握ることしかできなかった。「ごめんね、お姉ちゃん。本当はもっと綺麗に拓真さんとお別れさせてあげたかったんだけれど……」 涙を流す美羽は、もうそこにはいなかった。 拓真の腕にそっと頭を預けるように傾けた美羽の口元には笑みが広がっていた。 澪の背筋にぞっと寒気が走る。 あの笑顔だ……。昨晩、拓真とキスをした後、泣いて謝っていた美羽の顔に浮かんでいたあの笑み。 あの、チグハグな――。「……ならば話は早いな」 低く、冷静な声が落ちる。 澪が振り返ると、静かに綾人が全員を見渡していた。 そして、「もう十分だろう」 と、誰に向けた言葉なのか分からない言葉を吐いた。「行くぞ、澪」 そう言って、綾人は澪の手首を掴む。急に引かれた手に、澪はバランスを崩しながら目を見開いた。「おいっ、澪をどこに連れていく気だ……!」 拓真が大きな声を上げて綾人を呼び止める。「お前たちには関係ない」 玄関扉を開けながら振り向いた綾人の声にも瞳にも、ぞっとするほどの冷たさを含んでいた。 拓真は肩をびくりと震わせる
Last Updated : 2026-06-04 Read more