翌朝、澪が『アンジェリケ』へ出勤すると、店の空気がどこかおかしかった。 開店準備をしている後輩たちが、ちらちらとこちらを見ている。 目が合う。 そうかと思えばすぐに逸らされる。 しかしまた見られる。「……」 嫌な予感がした。とても嫌な予感がした。そしてその予感は見事に的中する。「澪先輩!」 開店準備が終わった途端、足早に持ち場へ行こうとした澪の元へ後輩たちが一斉に集まってきた。「昨日の人、誰なんですか!?」 やっぱり来た。 澪は思わず額を押さえた。「昨日の人って……」「神宮寺綾人です!」「華道界のプリンス!」「テレビにも出てますよね!?」 矢継ぎ早に飛んでくる言葉に澪はたじろぐ。「ち、違うの」「何がですか?」「だから、その……」 澪は言葉に詰まる。 何から説明すればいいのだろう。「彼氏じゃないんですよね?」「違います!」 即答だった。 後輩たちが顔を見合わせる。「じゃあ婚約者?」「どうして!? 違います!」「あ、じゃあ、片想いされてる?」「ち、違います!」「本当に?」「ほ、本当!」 どんどん質問がおかしくなっていく。澪は完全に押されていた。「でも迎えに来てましたよね?」「そ、それは……」 そこだけは否定できない。「しかも澪先輩だけ見てましたよ?」「え?」 その言葉に澪が瞬きをする。「店の中、他にもたくさん人がいたのに」「そうそう」「澪先輩しか見てませんでした」 言われてみればそうだったかも
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