夜明けの少し前、私は物置の前から箪笥を押しのけて地下へ降りた。聴聞の前に帳簿を一緒に取りに行くと、梶谷さんと約束していたからだ。 私は貯蔵庫の木の扉を開けた。石段には誰もいなかった。昨夜、私が渡した毛布が段の上に丁寧に畳んで置かれている。その横に細いフレームの眼鏡が落ちていた。 拾い上げると、片方のレンズにひびが入っていた。梶谷さんは昨夜、レンズを拭く時でさえ毛布の端を使っていた人だ。その人が眼鏡を置いたまま、自分からどこかへ行くはずがない。 石段の上の通路を照らすと、湿った土に靴の跡がいくつも重なっていた。本館の書庫へ向かう跡だけが、引きずったように深く乱れている。誰かが書庫の側から降りてきて、梶谷さんを無理やり連れて上がったのだ。 私は膝から力が抜けそうになり、石の壁に手をついた。昨夜、この人は自分の部屋は危ないと言っていた。それでも私の部屋の入口を心配して、ここに残っていたのだ。 樽の陰を探ると、帳簿は昨夜のまま残っていた。連れていった者たちは、帳簿の在りかまでは知らなかったのだろう。私は帳簿を上着の下に抱え、眼鏡を手帳に挟んで部屋へ戻った。 * 午前九時の聴聞の間、書記席は空席になっていた。 議長が杖で床を打つより先に、エドモンドが立ち上がった。昨日まで顔に出ていた苛立ちは消え、落ち着いた笑みを浮かべている。「議長にご報告がございます。書記の梶谷は今朝早く、一身上の都合で職を辞し、館を去りました。後任は追って決めていただきたい」 半円がざわめいた。窓側の席のケスラーだけが、表情一つ変えずに座っている。 梶谷さんがいなければ、帳簿を自分の名前で差し出す人はいなくなる。そうなれば、今朝の採決を止めるものは何もない。エドモンドの狙いは、それだった。 眼鏡を見せれば、私が夜の間、別棟を抜け出していたことを明かすことになる。外出の禁を破った者として、私の審査はさらに不利になるだろう。けれど、ここで黙れば、梶谷さんがどこへ連れていかれたのか、誰も確かめようとしない。 私は傍聴席から立ち上がった。係員が私の肩に手を伸ばした。私は構わずに手帳を開き、ひびの入った眼鏡を掲げた。「書記の眼鏡です。今朝、別棟の地下の通路で拾いました」 聴聞の間が静まり返った。「外出を禁じられた身で私は別棟を出ていました。その罰は
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