午前中の灯火書房では複合機が紙を送り出す音とキーボードを叩く音が交互に聞こえていた。瑠衣は届いた資料を机の上に広げて日付と管理番号を確かめながら分類していく。古いものは左へ、確認の必要なものは手前へ。付箋の色を分けて一覧表に印をつけると次の束に手を伸ばした。数字をひとつ見落としていたことに気づき、さっき確認したページへ戻る。該当箇所に印をつけ直し、隣の資料と照合してからファイルへ収めた。 少し離れた机では藤堂朱音が書類を確認していた。眼鏡をかけ直し、赤ペンで一箇所に線を引いてから隣のページへ移る。ときおり電話が鳴り誰かが短く返事をする。瑠衣も内線を取り、担当者に確認を済ませると聞き取った内容を資料の余白に書き留めた。確認事項をメールで送信し、返ってきた返信に目を通す。藤堂が席を立って棚からファイルを取り出すときも、瑠衣は手元の仕事を続けていた。窓から差す光は机の端まで届いていたが、紙を読むのに邪魔になるほどではない。いつも通りの午前中だった。 昼休みになり、瑠衣は最後の資料をファイルに収めた。机の上を片づけてから弁当を持ち、休憩スペースへ向かう。藤堂は先に来ていて、飲み物を机に置きスマートフォンを伏せたところだった。瑠衣が隣の椅子に腰を下ろして弁当の蓋を開けると、藤堂も包みをほどいた。二人とも最初は何も話さず、箸を動かしていた。瑠衣は朝のうちに確認した資料のことを思い出し、午後にもう一度見直そうと頭の中で予定を組み直す。 「ちょっといい?」 「はい」 藤堂は箸を持ったまま瑠衣の方へ顔を向けた。仕事の確認かと思い、瑠衣も食べる手を止めて向き直る。 「社長のこと、好きでしょ」 瑠衣の手が止まった。箸の先が弁当箱の縁に触れたまま動かない。顔を上げるまでに、ほんの少し間があった。藤堂の表情には、質問への答えを待つ人の探るような様子がない。思いついたことを口にしたというより、ずっと知っていたことを確かめる必要もなく伝えたような顔だった。 「……なんで」 「なんとなく」 藤堂はそれ以上続けず、卵焼きをひと口食べた。瑠衣も箸を動かそうとしたが、つかんだブロッコリーを一度弁当箱に戻してしまう。藤堂は急かす様子もなくお茶を飲んでいる。いつもなら仕事の話をひとつふたつ交
Mehr lesen