直哉が警察に連行された翌日、澪は一度家に帰って着替えてから出社した。すると、同僚たちは澪と仁のことをしきりに聞きたがった。もうすっかり公認の仲になっているのだが、自分の気持ちを半分ほど仁に伝えてしまった今となっては、同僚たちの反応がこそばゆい。「結婚式はいつですか?」 そんなことを聞かれて、ほおが熱くなる。「いえ、そんな……」 プロポーズどころか、まだ付き合ってもいない。澪が返事を保留しているからだ。「高宮社長って普段、どんな感じなんですか?」 外見はチャラそうに見えるが、実はとても真面目で一途だ。「まあ、真面目な人ですよ」「いいなー! 真面目でかっこよくて仕事もできて。もうスパダリですね」「はあ……まあ」 まだ恋人にもなっていない相手のことを、これほど話すことになるなんて。でも、それも悪くないと思える自分がいた。 その日の仕事終わりに、仁とともに警察へ行き、事情聴取を終えた。 警察署の前で「じゃあね」と手を振り、その場を後にしようとしたとき、仁に「澪」と呼び止められた。「どうしたの?」「あ……いや」 仁は視線をさまよわせ、なんだか落ち着かない様子だった。「いや、明日の打ち合わせよろしくな」 なんだ、そんなことか。澪はおかしくなって、ふふふと笑った。「もちろん。こちらこそよろしくお願いします、高宮社長」 からかうように言うと、思わずふたりで吹き出した。 今度こそ手を振って、その場を後にする。互いに背を向け、別々の方向へ歩いていく。お互いの気持ちを知った今となっては、大きな不安はない。まったく不安がないわけではないが、ちょっとしたことで気持ちが揺らがなくなったのは確かだ。 また明日、仕事で会うことができる。 プライベートで会うわけではなく、仕事で会うだけだ。たったそれだけなのに、体の芯がじんわりとあたたま
Zuletzt aktualisiert : 2026-09-30 Mehr lesen