บททั้งหมดของ 三十路OL、セーラー服で異世界転移 ~ゴブリンの嫁になるか魔王的な存在を倒すか二択を迫られてます~: บทที่ 11 - บทที่ 20

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第十一話 なんでドMの化身みたいな脳みそに改造されなきゃならんのだ

 このところ、セーラー服君の説教モードが止まらない。曰く、「我が創造主から与えられた使命を果たすには、繁殖か瘴気領域の主を倒すかのいずれかであることはご主人も承知のはず」 えー、そうなんですけどね。「ゴブリンとの繁殖に忌避感をおぼえるのであれば、あのローガン氏でもよいでしょう。ドワーフ男性と人間女性の繁殖成功例はまだ確認されていませんが、男女逆であればいくつもの事例が確認されています。成功する可能性は高いでしょう」 そういう微妙にリアリティがある提案やめてくれませんかね? つか、万が一にもそんなことになったらミリーちゃんからどんな目で見られるかわからん。「どうあっても繁殖が嫌だというのなら、瘴気領域の主を狩らねばなりません。体を鍛えるなり、武術の稽古なりをすべきでしょう。ローガン氏や他のドワーフ男性たちも、暇を見つけては研鑽に努めているようですよ」 なんだよこの正論マシーン。いや、わかる、わかるよ、君の言っていることは正しい。でもね、そもそもなんでわたしがそんな押し付けられた使命なるものを果たさなければならないのさ? 仮に使命を果たさなかったらどうなるわけ?「あまりに進捗が芳しくないようでしたら、小生も強硬手段に出ます」 あ、なんだか不穏なキーワード。具体的には……どういう?「ご主人と繁殖可能性がある異性を可能な限り誘引するフェロモンを合成して散布しましょう。ゴブリン、オーク、ドワーフ、非効率なのでなるべく避けたいところですが同族の人間など。生殖に不要なサポート機能をすべてオミットし、それに集中すれば四方数キロメートルからオスが集められるでしょう。これで晴れてご主人は複数種族の女王として君臨できます。おめでとうございます、よかったですね」 欠片もよくねえよ。「純潔を失うことに恐れを感じているのでしたら、脳内化学物質の分泌量を操作して多少冒険的な気分にすることも可能ですし、なんであれば痛みが快感に変わるようにすることも可能です」 可能だからなんなんだよ。なんでドMの化身みたいな脳みそに改造されなきゃならんのだ。 さすがに焦ったわたしは反論する。「ちょっと冷静になりたまえよ、セーラー服君。わたしの使命のひとつはわたし自身が子どもを産むことではなくて、この世界に産まれる子
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第十ニ話 わたしなら手近な鈍器でぶん殴っている自信がある

 それからの毎日は地獄だった。最初は身体がちょっと重く、扱う道具もせいぜい1割か2割重くなったかなーという程度だったが、それでも床に入った翌日には全身筋肉痛だった。セーラー服君の言うことには、「これまでは筋断裂が起きても即座に修復していたため超回復が起こりませんでしたが、あえて時間を置くことにより筋肉の成長を促しています」とのこと。 生粋のインドア派であるわたしにとって、筋肉痛なんて経験は何年ぶりかもわからないものだ。おかげさまでふよふよだった二の腕や、たるみがちだった下腹部が引き締まっていく毎日ではあったが……あ、ちょっとこれは達成感があって楽しいかも。なんなら腕立てとか腹筋とかを寝る前にしたってかまわないかもしれない。目指せシックスパック! なんちて。「筋量増大によりセロトニンの分泌量が増した効果ですね。気分が高揚し、前向きになりますが、攻撃性が増す作用もあるので注意してください」 あー、なんかこうやって冷静に分析されると萎えるわー。やっぱ筋トレはやめてとっとと寝よう。 藁状の何かにくるまり、一日の疲れをぐっすり癒やしていると、やがて自然に目が覚める。ミリーちゃんによると、この藁みたいなものは張り付き茸の周辺に生える蔦のような植物で、寝具や繊維など、ドワーフ村ではさまざまなものに活用されているらしい。「みさきさん、朝食の準備の時間ですよー」「はーい」 朝イチ(正確に言うと「すべてを遮る地の果てより雷鳴の轟く刻」なのだが、まどろっこしいので意訳とする)でミリーちゃんが部屋に声をかけに来てくれるのがわたしの一日のルーチンのはじまりである。共同の洗面所で顔を洗い、身なりを整えて調理場に向かう。って言っても、わたしはずっとセーラー服の一張羅だけれど。 ドワーフたちの食事は朝からガッツリだ。大多数のドワーフ男性が携わっている鍛冶に焼き物、そして鉱石の採掘。これらは重労働なので、一日の始まりはごりっごりのエネルギー食なのである。 そんなわけで、朝食だからあっさりと軽めのものを……なんて気は抜けない。ひと晩かけて煮出しておいた鶏骨のスープに、焼いて香ばしさを出した鶏肉と茸を加え、塩と香辛料で味付けをしたら具だくさん鶏白湯スープの完成だ。できればこれにジャガイモを入れたり、麺を加えてさらにボリュームを出したいところだが、ないものねだりをして
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第十三話 あれは安全に逃げるためのものであって、助けるためのものじゃない

 地響きを伴う轟音に、茸採りにきていたドワーフたちが一瞬身をかがめる。「落盤かもしれない! 急いで戻るよ!」 茸採り班のリーダー的存在の女性が駆け出すと、みんな一斉にその後について走り出す。私も慌ててその後を追う。 ドワーフ村の入口の洞穴には変化が見られない。有事の際の避難場所とされている大広場まで駆け込むと、怪我をしたらしいドワーフの男たちが応急手当を受けているところだった。「落盤かい!? 他に怪我人は!?」「くそっ! 何なんだよあれは!」「野郎、天井を崩しやがった!」「落ち着け男ども! 残ってる怪我人はいるかって聞いてんだ!」 行き交う怒号。駆け回って治療にあたる女たち。頭から血を流す男に、足を抱えて苦しむ男。戦争映画のワンシーンに突然放り込まれたような惨状に、わたしは呆然と立ち尽くすしかなかった。「お父さん! お父さんはどこ!」 ミリーちゃんが叫んでいる。ローガンさんを探しているのだ。わたしも慌てて周辺を見渡す。ドワーフの男は顔が髭に覆われていて見分けが付きづらいが、さすがにローガンさんならわたしでもひと目でわかる。ミリーちゃんより背の高い私の方がずっと見つけやすいはずだ。「お父さん! お父さん返事して!」 ローガンさんはどこにも見当たらない。あんな頑丈そうな人がちょっとやそっとでどうにかなるわけがない。そう自分に言い聞かせようとするが、動悸が高まって収まらない。「ご主人、小生の探査によりますと、この広間にローガン氏はいないようですな」 それを聞いたミリーちゃんがわたしの……というかセーラー服の襟首を掴む。「どこ!? どこなの!? お父さんの場所を教えて!」「申し訳ありませんが、ここからではおおまかな位置しかわかりません」「いいから! 教えて!」 セーラー服のスカーフが動くと、広間からつながる通路のひとつを指した。「方向はあちら。探査範囲外ということは、相当に深く潜ったところでしょう」 セーラー服が言い終わる前にミリーちゃんが駆け出す。えっ、これ大丈夫なの!? 災害時に一番やっちゃいけない行動とかじゃない!?「検出される瘴気の濃度が上がっています。ひょっとすると、瘴気領域の発生の瞬間に立ち会っているかもしれません。我々の使命を考えるとこれはめったにない機会……」「そういうことじゃない!」 セーラー服の言葉を遮って
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第十四話 恐怖、消して!

 痛みを堪えつつ土煙の向こうに目を凝らす。わたしの背丈を軽く倍は超える人影。でかい。徐々に土煙が収まってくる。無数の砂利を敷き詰めたような肌。あの肌が擬態となり周囲の岩に紛れていたようだ。二腕二足の人型に見えたが、右脇からさらに二本、左脇から一本、細い腕がだらりと垂れている。口が二つ。上下に重なるようにある。鋭く尖った乱杭歯が真っ赤な口の中から覗いている。目はない、耳もない。異形としか言い様のない生物がそこに立っていた。「なんなの……あれ……?」 震える声が漏れる。冷たい汗が首筋を落ちるのを感じる。「瘴気領域の主、と呼ばれる存在の一種ですね。姿形に一貫性はなく、一体一体が異なる形状というのが定説ですが、あれは岩ゴブリンが素体となったのでしょうか」 セーラー服が普段と変わらない調子で応じる。短い付き合いだがわかる、こいつには感情がない。あるのは合理的な判断とあの女神モドキから与えられた使命だけだ。それがいまは無性に腹立たしく、羨ましい。 だらだらしている暇はない。早く助けなければ、ローガンさんがあの化け物に殺されてしまう。だが足がすくんで動かない。呼吸が浅い。全身が震える。腹の奥が冷たい。逃げなきゃ……という感情が沸き起こる。逃げちゃいけない、という感情とせめぎ合う。ダメだ、迷ってるんじゃない、すぐ動かなきゃ。すぐ動かないとローガンさんが。ああ、でもあんな化け物に。早く逃げなきゃ。早く逃げなきゃわたしが死ぬ。 口を空けたままハッハッと浅い呼吸を繰り返していると、「犬みたいだな」という場違いな感想が思い浮かぶ。実家で飼ってたポチは勇敢な子だった。小型犬のくせして、自分よりも大きな犬に平然と向かい合うのだ。やたらに吠えることもなく、堂々と冷静に相手を見つめていた。あはっ、こんなときに何を思い出してるんだろ。走馬灯ってやつ? 突然脳裏に浮かんだノスタルジックな思い出に少しだけ冷静になる。そうだ、冷静になれ。急いては事を仕損じる、急がば回れだ。慌てる乞食はもらいが少ない、とも言う。だいたいあの怪物がローガンさんを殺すつもりなら、これまで何回だってそうできたんじゃないのか? わたしがこうしてブルってる間にもできたはずだし、そもそもわたしがここに来るまでにだって時間はたっぷりあったはずだ。なぜだ? なぜだ? なぜだ? 思考が空回り
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第十五話 独断で恐縮ですが、セーフティを解除します

「馬鹿っ! ミリー、来るな!」「ミリーちゃん! 止まって!」 通路から現れたミリーちゃんが一直線にローガンさんに向かって駆けていく。これはダメだ。さっきのわたしと同じパターンだ。あいつはそうやって助けに来た人間を狩っていく腹づもりに違いない! ミリーちゃんの目にはローガンさんしか映っていない。あいつの皮膚による迷彩はぱっと見ただけでは気が付けない。わたしも駆け出す。なんとかミリーちゃんを止めなければ。あの怪物の巨大な腕に跳ね飛ばされるミリーちゃんの姿が脳裏をよぎり、うなじがぞわりとなる。間に合うか! 間に合え! 間に合わせろ!! もう少しで手が届く、という瞬間にミリーちゃんの姿が消える。どこ!? 弾き飛ばされた!? 叩きつけられたような音はしない。悲鳴。視線を上げる。ミリーちゃんが怪物の巨大な左手に掴まれている。頭に血が上る。ミリーちゃんに向かって跳ぶ。瞬間、視界がぐるりと回る。殴られた。空いた右腕。態勢をを立て直し、怪物の左足をケンカキックで蹴りつける。足の裏に鈍い衝撃。硬い。怪物は小揺るぎもしない。巨大な右拳が降ってくる。右に転がって回避。真上にミリーちゃんの足。掴む。動かない。腹に衝撃。吹き飛ばされる。「がっ……はっ……」 地面をゴロゴロと転がってから素早く立ち上がる。腹に重い痛み。痛み止め足りてないぞこんちくしょう。 見れば、左手にミリーちゃんを捉えた怪物が、右足でローガンさんの頭を踏みにじっている。二重の口がニヤニヤ嘲笑ってるように感じられた。マズイ、囮は一人でいいはずだ。二人とも生かしておく必然性はあいつにはない。 再び突貫。ローガンさんを踏みつけている足に低空タックル。一瞬、ローガンさんから引き剥がすように上方向に力を加えて、それから斜め下に足を引く。フェイントに引っかかり重心を崩した怪物が仰向けに倒れる。間髪入れずローガンさんの足を挟んでいた岩石を浮かせる。ローガンさんが足を抜く。有無を言わさずローガンさんを掴み遠くに投げ飛ばす。 追撃し、ミリーちゃんを救出しようと怪物を見るともう膝立ちになっている。まともに立たれるより、この姿勢の方が攻め手がない。あわよくばミリーちゃんを手放してくれていないかと思ったが、怪物の左手につかまれたままだ。そこまで都合よくはいかないようだ。 目も鼻もない、砂利に覆われて表情もわからない怪物だが、明ら
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第十六話 どうだおらっ! これで脳みそグチャグチャだろうがッ!!

 弾け飛んだセーラー服が光の粒子となり、わたしの全身を包む。怪物は突然の光に一瞬たじろいだが、かまわずにミリーちゃんごと左腕を振り下ろす。受け止める。激突。衝撃。足元の地面から砕ける音がする。土煙が舞ってわたしの姿が隠れる。つい先ほどのシーンの再現のようだが、今回は2つほど違う点がある。 ひとつは、今回はきっちりと受け止めたこと。怪物の腕を両手のひらでがっちりキャッチし、全身のバネを使って衝撃を吸収。ミリーちゃんに伝わるダメージを最小限にした。 そしてもうひとつは、わたしが身にまとう服がセーラー服ではなくなったこと。土煙が薄れると、そこから白銀に輝く鎧をまとった姿が現れる。白銀の光を放つ額のティアラ、二の腕から先を覆う手甲、セーラー服を思わせるデザインの胴鎧にそこから伸びるスカート状の装甲。膝から足先までは金属製のブーツのようなもので固められ、やはり白銀に輝いている。名付けるならば、セーラー鎧である。「そのド汚え手を……離せよこのっ、クソ猿がぁぁぁあああ!!!!」 動揺する怪物の左腕を押し返し、怯んだすきに小指を両手で掴んでひねる。怪物がグォッと唸って慌てて手を引いた。宙に放り出されるミリーちゃんを抱きとめ、怪物の身体を蹴って即座に距離を取る。腕の中のミリーちゃんは……大丈夫だ、呼吸はしてる。怪我の程度はわからないが、少なくとも派手な出血などはない。さらに数回飛び退いてからミリーちゃんを地面に横たえ、再び怪物の方へ向き直る。「よくもわたしのミリーちゃんをこんな目に合わせてくれたわね……。首の骨へし折ってやるから、よーく洗って待ってろやぁ!」 まるで血液が沸騰しているようだ。全身に力がみなぎる。闘争心で視界が真っ赤に染まる。地面を蹴る。地面が破裂する。景色が高速で流れる。弾丸と化した全身の体重を乗せて、怪物の喉仏に飛び蹴りを突き刺す! よろめきながら数歩後ずさる怪物。跳び蹴りの勢いを殺さず、滞空したまま横っ面に回し蹴りを一撃! 二撃!! 三撃!!! 怪物の肩に足をかけて宙に跳び、脳天に踵落としを叩き込む。どうだおらっ! これで脳みそグチャグチャだろうがッ!!「残念ですがご主人、致命傷には至っていないようです」 踵落としの反動で一回転してから着地。怪物を見ると、ふらついてはいるが倒れる様子はない。頭部を守る皮膚もあちこち砕けているが、しゅうしゅうと煙
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第十七話 何やら大きくて柔らかいものが当たっているのはよくわかる

 壁際に崩れ落ちる怪物を見て、トドメを……と追撃しようとしたところで身体が急に重くなる。地面に突っ伏す。「ご主人、時間切れです。いまの一撃ですべてのエネルギーを使い果たしました。それでは、おやすみなさい」 えっ、ちょっ、どうすんの!? こんなところで反撃されたらどうにもならないんですけど!? わたしの必死の叫びも虚しく、セーラー服君は沈黙。セーラー鎧は光となって消え失せ、元のセーラー服に戻った。 アドレナリンやらドーパミンやらの効果も切れてきたのか、痛みと、恐怖が蘇ってくる。あの怪物が立ち上がって来たらもう為す術もない。ぷちっと潰されておしまいだ。少しでも、少しでも距離を稼がなきゃ。痛む体を必死に動かし、地面を這いずるがナメクジ以上カメ以下の速度でしか進まない。ちくしょう、頼むぞ。こんなところで死んだら拍子抜けもいいところだぞ。 頭上から地響き。今度はなんだ!? 地面を這っているから頭上というと通路の方だ。バラバラと地面を打つ豪雨を思わせる音に、金属同士がぶつかり合う音が混じる。これはひょっとして?「ローガン! ミリー! ○△※□○※! □○※△※□!」 地響きの正体は金属鎧に身を包んだドワーフ軍団だった。初対面時と同じく、全員へそ出しルックだった。なんでやねん。安心感で全身の力がどっと抜ける。ああ、でも気を失うのはまだ早い。最後の気合を振り絞って怪物の方を見ると、ドワーフ軍団にハンマーでめった打ちにされていた。これならもう心配……ない……よね……? そしてわたしは、この世界で二度目の失神を経験した。 * * * 目覚めると、視界に入ったのはこの数ヶ月でよく見知った岩肌でした。いや、もうこのネタはいいか。 お約束のノックの後に、入ってきたのはミリーちゃんだ。「□○みさき※△! □○※△※□! ※△□○※△※!!」 んんんー? わたしの名前が呼ばれてるってことはわかるけど、それ以外がわからないぞ?「□○※△! □○※△□○□! ※△△※※□○!!」 ミリーちゃんが泣きながら寝台に横たわるわたしに抱きついてくる。ああ、よかった。ミリーちゃんの怪我は大したことがなかったようだ。相変わらず何を言っているのかはわからないが、何やら大きくて柔らかいものが当たっているのはよくわかる。当ててんのか? スカーフを引っ張って小声で言う。起きろ、おい。翻
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第十八話 ちがうそっちじゃない

 お姫様抱っこのままミリーちゃんにずんずんと運ばれ、女子会の席に着く。何人かの女子がきらきらとした目で合掌しているが、見なかったことにしよう。着席すると、例によってジョッキが渡され、ミリーちゃんによる乾杯の音頭だ。ミリーちゃんは未成年女子組では最年長であり、こうした場のまとめ役になっているらしい。「みさきさんが……いえ、料理の聖女様が無数の料理をこの天突く岩に齎してくれただけでなく、厄災の怪物さえ討伐してくださったことを地霊様に感謝して……乾杯!」「「「乾杯!!!」」」 左腕の痛みを堪えつつ、ジョッキを呷る。ぐびぐびぐびっと。ふーむ、何度飲んでもドワーフのお酒は美味い。仕事の後の一杯! ってかんじだなこれは。今日は起き抜け、というか失神明けでまだ何も働いてないけど。 続いて右手で料理をつかもうとする。この村に来てはじめて食べたプチハーピーのもも肉焼きだ。わたしがあれこれ作り始めてから多少のアレンジが加わるようになったが、安定して美味しいのがこれだ。かぶりつくと、「お肉食べてるぅぅぅううう」という充足感がある。ではガツッと掴んで……あっ、重っ、痛っ、腕上がらん。まだ右手はおしゃかですわこれ。 諦めてジョッキをテーブルに置き、左手でお肉をつかもうとするとミリーちゃんに遮られる。「まだ怪我が痛むんですね。はい、あーん」 ミリーちゃんがもも肉を突き出してくる。あーんにしてはずいぶん豪快だなこれは。再び何人かの女子がきらきらした目でこちらを見てくるが忘れよう。ええい、ままよとミリーちゃんが差し出してくれたお肉にかじりつく。うむ、変わらぬ美味さよ。そしてこちらを見る目のきらきら度合いが増してる気がする。忘れるったら忘れる。 あんな事故があった直後に宴会なんて大丈夫かと心配になったのだが、これも天突く岩の氏族の伝統なのだそうだ。さすがにあんな怪物が突然現れたのははじめてのことらしいが、落盤や山崩れなんかの災害や、外から流れてきた魔物の襲撃があったときも、事態が収拾したらこういう宴を催すそうだ。「これで事件は解決しました。大変だったけど、気持ちを切り替えていきましょうね」って感じなのだろう。理にかなっている。 どうしてあんな怪物が現れたのか……という点についてはローガンさんとオババ様が村の若手の男衆を連れて説明
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第十九話 誕生直後から自立するゴブリンやオークに比べれば効率は落ちます

 ローガンさんによると、ドワーフというのは生まれつきお腹に袋を持っているそうだ。見た目は両手でマルを作った程度の大きさだが、地霊様の加護によって見た目の何倍もの容量があるとのこと。瘴気領域の主との闘いのときに貸してくれたハンマーもそこから取り出したんだそうだ。 いまくれたミスリル銀のハンマーはめちゃくちゃ重たいので普段は袋に入れていないとのこと。受け取った際の感触であるが、わたしもセーラー鎧モードで限界までパワーアシストのレベルを上げないと自由自在に振るうことはむずかしいだろう。 戦闘モードのドワーフ軍団がへそ出しルックなのもこれが理由だ。腹の袋からすぐに武器を取り出せるようにしているわけだ。そういえば、アヒージョ・ナイト・フィーバーのときもミリーちゃんがどこからともなく皮手袋を出してくれたが、あれもお腹の袋に入れていたのだろう。 子どもが小さいうちはこの袋に入れて育てるらしい。なるほど、そういえばドワーフ村で赤ん坊や小さな子供を見たことがなかった。みんなお母さん、お父さんのお腹の中ですくすく育っていたのか。地球で言う有袋類の生態に近いのかな? カンガルーの親子よろしく、ローガンさんのお腹の袋から顔をのぞかせているちっちゃなミリーちゃんを想像して思わずクスリと笑った。「そのとおりです、ご主人。ドワーフの出産・育児形態は地球でいうところのカンガルーやコアラ等の有袋類に近いものがあります。子宮や胎盤が未発達なため、ごく小さな状態で子どもを産み、それを袋の中で育てます」 セーラー服君が動物番組の解説のようなことを言い出す。「そのため、ドワーフは妊娠期間がごく短く、出産時の母体の負担も少ないという特徴があります。ご主人には育児嚢がないので子育ては難しいですが、そこは育児経験のあるドワーフたちに協力を願えば返って効率的でしょう。誕生直後から自立するゴブリンやオークに比べれば効率は落ちますが、人間と比べればはるかに多くの子孫を望めるでしょう」 あー、そこにつなげるかー。やっぱそこにつなげるかー。「というわけでローガン氏、ご主人を後妻に迎えるというのはいかがでしょうか?」「は? あ、え? すまんがおれは一生涯を妻とミリーに捧げる誓いを立てていてな……。いや、なんか、悪いな嬢ちゃん」 ローガンさんがしどろもどろになりながら謝ってきた。はい、なんにもしてないのに
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第二十話 ナチュラルにディスってくるよねセーラー服君は

 ローガンさんのお願いというのはこれだった。「嬢ちゃんが古今の武術を修めた達人だったと聞いてな……。まったく人は見かけによらねえな。おれたちも槌の扱いにゃあ慣れてるが、それ以外の闘い方を知らねえ。こういうと照れくせえがな、正直、嬢ちゃんとあの怪物との闘いはおれも見ていて震えたぜ」 ここで言う震えたとは、怖かったという意味ではなくて武者震い的な意味だろう。「ミリーを助けたらそのまま逃げてりゃよかったのにな。そのまま闘い続けてあの怪物をぶんのめしちまうとは、さすがのおれでも槌を投げるしかねえよ」 槌を投げる、とはドワーフ的慣用句で「降参だ」「かなわねえよ」的な意味だ。そうか、ミリーちゃんを助けた時点で勝利条件は達成していたんだ。そこで二人を抱えて逃げ、あとは救援に来たドワーフ軍団に任せるのがどう考えても賢い。 あのときは脳内麻薬ドバドバだったからな。自分では冷静なつもりで、実のところ程遠い状態だったんだろう。人間は脳内物質の奴隷だとかいう言葉を聞いたことがある気がするが、怖いなこれ。反省。「つーわけでだな。嬢ちゃんには男衆の訓練に加わって指導を頼みたいんだが……お願いできるか?」 いやいやいやいや無理っすー。昨日もさんざん強調したけど、聞き流されたみたいだけど、わたしはあくまで見る専で、格闘技経験とか皆無なんす。人様に教えられることなどありません。「あー……なんだか辻褄が合わねえと思ったがそういうことか。だが知識だけでもかじってるのとぜんぜん知らねえとのじゃあ大違いだ。話をするだけでいいから、頼めねえかな」 話だけ……というならかまわない。実践とは無縁だったが格闘技トークは大好きだ。ドワーフ的体型なら相撲とか柔道の技がハマるかもしれない。足技で敵の体勢を崩してからハンマーで追撃、とかロマンあるな。 そんなわけで、わたしの怪我が治るまで数日待った上で、男たちの戦闘訓練に参加することになってしまった。岩ゴブリンの狩りもあるし、稀なことだが外部から別種の魔物が流れ着いてくることもあるそうで、平時からこの種の訓練は欠かさないそう。時刻はだいたい西の雷鳴の刻から夕食の時間まで。体感的に1時間から2時間ってところだろうか。 とりあえず、柔道の基本技やボクシングのワンツーなどを教えてみる。拳撃はともかく足技という概念はドワーフ的に珍しか
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