さて、腹も満ちたし、いよいよ冒険者ギルドに出発だ! なんてことにはならない。 ローガンさんが席を立ち、店の奥の壁に向かっていく。そこに無数の張り紙があるのだ。張り紙の内容は「裏庭の雑草を抜く手伝いをお願いします」とか「ペットが迷子です。見つけた方には謝礼差し上げます」みたいなものが中心だ。要するに、雑用である。人が集まる飲食店にこうした張り紙をして、その日暮らしの労働者を募集しているというわけなのだ。 文字が読めない者も多く、給仕にチップを払って手頃な依頼を探してもらうことも多いそうだ。そしてわたしもその文字が読めないものの一員であるが、セーラー服君が視界に投影してくれる翻訳済みの日本語があるので問題はない。 その日雇い労働者が通称「冒険者」である。現地語を直訳すると「危険を冒してもなお栄光を求める者」といった意味合いの言葉らしい。なんでも昔に大出世した元冒険者が「日雇い英雄」というあだ名を付けられたのを嫌い、私財を投じて新しい名称を広めるべく一大キャンペーンを張ったそうなのだ。まったく、暇な英雄もいたものである。 店としては、張り紙の存在は一応客寄せになるし、付き合いもあるので手数料も取らずにやっているが、直接収入にならないので内容にはほぼ関知しないとのこと。これは勝手に貼られたもので、当店には関係ございません、というスタンスなわけだ。「13歳以下の女性限定。住み込みでできる簡単なお仕事。高収入保証!」みたいな怪しいものはさすがに断るそうだが。誰だよその依頼をしたやつは。いますぐ街から追い出した方がいいぞ。 ローガンさんが張り紙のうち一枚を手に取る。繰り返し貼って剥がせる糊みたいなものでくっついていたのか、壁も紙も綺麗なままだ。地球では二十世紀に入ってからの発明だったと記憶しているけれど、こちらの世界でも似たようなものがすでに発明されているらしい。 ちなみにローガンさんたちも文字は読める。ドワーフの赤ちゃんは人間に比べるとごく短い妊娠期間で出産され、父母のお腹の袋の中での生活に移行するので、袋から出ないうちに簡単な文字が読める程度までは教育を済ませてしまう。有袋類的な生態を活かしたメリットだと言えるだろう。胎教ならぬ、袋教だ。「こいつがちょうどいいな。このへんに出るやつなら岩ゴブリンよりずっと弱ぇから嬢ちゃんなら楽勝だし、ミリーにもちょうどいい相
ปรับปรุงล่าสุด : 2026-07-13 อ่านเพิ่มเติม