บททั้งหมดของ 三十路OL、セーラー服で異世界転移 ~ゴブリンの嫁になるか魔王的な存在を倒すか二択を迫られてます~: บทที่ 21 - บทที่ 30

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第二十一話 女子はいくつになっても恋バナが好きなんですね

 ──そのとき、事件は起こった──「このカガは、その平らかな胸に包まれて眠りたい! 我が槌をその平らかな胸に捧げることを、料理の聖女にして災厄を打ち払いし偉大な武人たる貴女にどうか許していただきたい! 我は天突く岩の氏族の陶器職人徒弟カガ! みさきさん、貴女に地霊の試しを申し込む!」 初戦闘訓練後の宴会で、カガさんというヒゲモジャさんが詰め寄ってきた。周りのドワーフたちが「うおおおーーー!」と盛り上がっている。なんすかねこれ。ちょっと圧が強いんですけど。「婚姻の申し出じゃな。まさか男衆と交じってから雷鳴をいくつも数えんうちにとは、わしの若い頃にも負けんわい」 女子高生Lカップアイドルみたいなオババ様の若い頃とか言われてもよくわからんですたい。っていうか、婚姻の申し出? オババ様によると、先ほどのカガさんの宣言は天突く岩の氏族の伝統的プロポーズの口上なんだそうだ。相手によってバリエーションはあるけれど、名乗りを上げ、相手を称え、地霊の試しとやらを申し込むのが定形フォーマットなんだそうだ。平らかな胸って二回言ったよな? それ褒め言葉のつもりだったのかこら? 急に地霊の試しとか言われてもわからん。っていうか君誰よ? わたしはまだローガンさん以外のドワーフ男性の見分けがよくつかんぞ。「あっ……すみません、あの、ぼくは陶器職人の徒弟をやってまして……。次の灰色の空の刻でちょうど40歳になります。ひと目見たときから、みさきさん、貴女のことを愛してました!」 あっばー。あばば、あば。今度はどストレートな告白で攻めてきやがった。えっ、まっ、はっ? そういうの慣れてないんですけど、やめてほしいんですけど。カガさんを見返すと……ヒゲモジャの奥の顔はすっきり細面なアイドル系男子にも見えなくもない。体つきも他のドワーフ男性と比べると比較的スマートで、樽マッチョならぬゴリマッチョ止まりだ。これならアリか……いやいや、そうじゃない。脳がバグってるぞわたし。見た目だけで結婚を相手を選ぶなんて最低だ。もっとお互いのことを知ってから……いやそうじゃなくて。あれ、カガさんどこ見てるの? こういうときは相手の目を見つめるものじゃない? 明らかにあなたの視線はちょっと低くてさ。完全に胸のあたりに視線を感じるんですけれども。 頭の上に、ピコーンと豆電球が灯る。 
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第二十二話 若者の純情を弄ぶとは、客人もなかなか捨て置けんのう

 ドワーフの火酒というのは独特の香りがする度数の高い酒である。以前に味見をさせてもらったが、アブサンから甘みを抜いた感じ……といえば近いか。苦味が強く、薬っぽい臭いがある。アブサンというのはニガヨモギを漬け込んだリキュールで、アルコール度数は40度から70度。フランスあたりで飲まれていたが、幻覚作用のある成分を含むので一時期販売禁止となったという代物だ。なお、いまでは幻覚成分を抑えることにより再販されている。旧製法のアブサン、一度飲んでみたかったな。 ドワーフの火酒は当然アブサンの製法とは異なり、蒸留したエンペールに茸を漬け込んで作られる。その茸はたまに採れる赤い張り付き茸だ。これを漬け込むとどういう作用なのかアルコール度数がどんどん高まっていくらしい。茸から出た色素がだんだん酒を赤く染めていくので、琥珀色になったら飲み頃の合図、ということだ。 わたしとしてはストレートで飲むのはちょっとなあ、という味わいだ。そのままでは苦味が勝ってしまうので、お湯で割ってアルコールの甘みを引き立たせたり、緑茶で割ったりすると飲みやすくてよさそうだと思ってる。この世界に緑茶ないけど。そしてドワーフ男的に火酒を割って飲むというのは邪道らしく、割り物を試そうとするとぎょっとした目で見られるので、わたしが飲むのは基本的にエンペールばかりになっている。 そんなことを考えながらジョッキを空けていると、いつの間にか目の前に広がっているのは死屍累々。十数名のドワーフ男たちがテーブルに突っ伏したり、地面に伸びていたりする。「いくらエンペールでもあんなに飲めるものかよ……」「酒霊の加護を授かってるんじゃないのか?」「やつの肝臓は化け物か!」 ギャラリーがなにやらざわついているが気にしない。元々お酒には強い方だったが、こちらの世界に来て肉体労働に励んだために、どうもさらにアルコール分解能が高まっている気がする。フハハハハ、まだまだ飲めるぞ。情けないのう、男子諸君。 わたしがもう一杯エンペールのジョッキを空けると、残っているのは例の貧乳フェチ君ひとりのみである。カガ君って言ったっけ? 年齢的には年上なのだが、「さん」付けよりも「君」付けの方がどうもしっくりくる。会社の後輩君を連想するせいか……? カガ君はぶるぶると震えながらジョッキを傾けている。なんとしても負けまい……という気迫を感じ
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第二十三話 ドワーフ村は深刻な不景気に突入しつつある

 今日のわたしはドワーフ村のジジババさんたちと、若手のリーダーたちが集まる会議に呼ばれている。ジジババ……といってもドワーフ男は全員ヒゲモジャで年齢がさっぱりわからないし、女性たちに至っては全員が合法ロリ巨乳だ。それらが同じテーブルを囲んで丁々発止の議論を繰り広げている光景はシュールでしかない。「だから! おれらが作る焼き物をもっと高く売れば解決するだろうが!」「おめぇは工房にこもりっきりだから知らねえだろうがよ。もう麓の街じゃ焼き物はダブついちまってんだよ。昔みたいな高値じゃ売れねえ」「他の街でも陶器やら武具やらを作りはじめて、そっちから仕入れてるらしいからな……。ものづくりはもうドワーフの専売特許じゃねえんだよ」「品質が違ぇだろ! 品質が!」「それ以上に値段の差がなあ……」「肝心の品質だって、ろくな鉱石が掘れないんじゃジリ貧だ。ミスリルの鉱脈でも掘り当てねえとどうにもならねえよ」 町工場を舞台としたドラマで登場しそうな言い合いが続いている。先日の事件のために、駆除した岩ゴブリンは素材を取らずまるごと廃棄する方針になったのだ。そのせいで、徐々に蓄えが減りつつあり、ドワーフ村は深刻な不景気に突入しつつある。「若ぇ連中を冒険者にして出稼ぎでもしてもらうしか……」「そんなのは体のいい口減らしじゃないか!」 鍛冶班のリーダーを怒鳴りつけたのは、瘴気領域の主が現れたときに茸採りのリーダーをしていた女性ドワーフだ。あのときもキビキビと指示を出してすごいな、と思ったが、こういう席でも変わらないらしい。地球で働いていた頃に働いていたバリキャリの女上司を思い出す。シングルマザーで、飲みに行くと「男なんざね、タネだけ寄こせばいいのよ、タネだけ!」と言いながら若手女子社員から結婚に対する夢や希望を奪っていく存在であった。それでもどんどん結婚してったけど。「っつーわけでな、おれらだけじゃ堂々巡りで新しい考えがなんにも出てこねえんだよ」 と、横に座ったローガンさん。感情的な議論に加わらず、腕を組んでどっしりと構えている。ローガンさんは鉱石採掘班のリーダーの一人なのだそうだが、貫禄としては本部長的なものさえ感じさせる。「はいはい、少しお黙りな。言い合うだけじゃ屑石のひとつも掘れないよ」 と、加熱する議論を中断させたのはオババ様。「屑石のひとつも掘れない」というの
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閑話1 いよいよお待ちかねのお風呂回である

 さて、いよいよお待ちかねのお風呂回である。 誰に言っているかは自分でもよくわからない。しかし、誰かが待っているような気がしていたので言ってみた。誰もいない通学路で突然立ち止まり、「そこにいるのはわかっているぞ……」とつぶやく病気みたいなものである。なお、これが後ろを歩いていた同級生にたまたま聞かれてしまい、背後に立つと問答無用で裏拳でぶん殴られるらしいぞ……という不名誉な噂が流れたのは青春の甘酸っぱい1ページだ。忘れよう。 身を清潔に保つのは多くの生物において共通の習性である。皮膚に溜まった老廃物を落とし、寄生虫や病原菌を洗い流すのはどんな生き物であっても生存戦略上有効だということなんだろう。カラスも行水くらいはするし、ハエですら両手をゴシゴシとすり合わせる。そして当然のことながら、ドワーフも入浴という文化を持つ。 ドワーフの風呂はでかい。大広間の四分の一ほどの大きさのスペースがくり抜かれ、そこが浴場となっている。ドーム球場の四分の一サイズの大浴場だ。その半分ほどが洗い場で、残り半分が浴槽となっている。 浴槽の深さはドワーフが座って入って肩が浸かるか浸からない程度。地霊様の力によって温泉が常に注ぎ込まれている、日本で言うなら源泉かけ流しだ。地霊様、万能かよ。おかげでヒゲモジャのドワーフ男性が浸かっても縮れた剛毛が浮くことはなく、汚れは押し流され、常に清潔な湯で満たされている。 いま、男性の話をしたが、そう、ドワーフ温泉は男女混浴なのである。いまこの瞬間に卑しい想像をした諸兄には誠に申し訳ないことなのだが、混浴と言っても裸で入るわけではない。袖と裾を半分に切った作務衣のような入浴着があり、男女ともにそれを着て入るのが作法なのだ。へへっ、ざまーみろ。 そんな習慣を持つドワーフ温泉なのであるが……わたしにはひとつ問題がある。そう、セーラー服だ。呼吸や通訳等のサポートをセーラー服が担っているため、わたしはセーラー服を脱ぐことができない。よって、当然のことながらセーラー服のまま入浴することになる。 セーラー服の入浴シーンを目撃したドワーフ男女からは一瞬驚愕の視線を向けられるが、風呂場で他人の体をじっと見るのはぶしつけとされるらしく、すぐに目をそらしてくれる。幸いにして、多種族が共生するこの世界では往々にして理解不能な風習を持つ者がいるという、いわば無知の知的
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閑話2 ローガンさんの晩酌

 天突く岩の氏族一の武勇を誇るローガンには床に就く前の習慣がある。夕食後、北の雷鳴の刻の後に居間で一人晩酌を楽しむのである。差し向かいにあるのは一枚の銅板。いまは亡きローガンの妻の似姿が刻んである。細工を施したのはローガン自身。妻に地霊の試しを申し込む前に贈ったものだ。「イーリアよ。ミリーもすっかり大きくなった。明日は麓の街まで一緒に行くことになった」 銅板に語りかけ、火酒の入ったジョッキを傾ける。ローガンの妻、イーリアは天突く岩の氏族の生まれではない。一生をかけて各地にあるドワーフの集落を渡り歩く、地の声を語り継ぐ氏族の出身だった。 ローガンが若い頃、天突く岩を訪れた一団の中にいたイーリアに一目惚れをし、その滞在中に口説き落としたのが結婚に至る顛末だった。地の声を語り継ぐ氏族は常に旅に身を置いているが、定住する氏族の者と結婚して腰を落ち着けることもあれば、反対に村から若者を連れ出していくこともあるという。 イーリアが病で命を落としてから、もう何度天が灰色に染まっただろう。オババをはじめ、長老連中からは幾度か後添えをもらってはどうかと言われたが、きっぱりと断った。ローガンの槌はイーリアと、そしていまは残されたミリーだけに捧げられているのだ。 手元にある本をパラパラとめくる。幾度も読み返したせいで、縁が手垢で汚れ、擦り切れてしまっている。内容は勇気ある四人の冒険者が、世界中を旅して各地の邪悪な魔物を退治して回るという王道の冒険譚だ。人間の戦士と魔術師、ドワーフとエルフの精霊術士が一行の内訳である。 この本はイーリアが嫁入り道具のひとつとして持ち込んだもので、とくにお気に入りの一冊だった。ドワーフたちの言い伝えを記憶し、語り継ぐことを使命として生まれた妻だったが、物語であればどんなものでも好み、人間の書いた本も何冊も収集していた。 いま思えば、この本をとくに好んだのは旅の生活を懐かしんでいたせいかもしれない。 ミリーが幼いころは、これが文字を覚える教材となった。お腹の袋から顔を出すミリーに、イーリアが物語を読んで聞かせる姿がつい昨日のことのように思い出される。おかげで、ミリーもこの本が大好きになった。常に居間に置いて、ふとしたときに読み返している。 母の血の影響なのか、幼い頃のミリーはよくこの本の内容を少しだけ変えた物語を作ってローガンに
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閑話3 とある女神のブログ更新

 視点は変わって、地球や異世界から見ての創造神たちが住む世界の話。平たく言えば、高町みさきが命名するところのスウェット爆乳あるいは女神モドキの話になる。 地球世界の生命体に接触する際、彼女(地球生命における性別を当てはめることは不可能なのだが、一旦こうさせてほしい)はだるっだるのスウェットを着た爆乳女子の姿を取るのだが、これは決して高町みさきが邪推したようにその豊満なる胸部を強調するためではない。 現地で収拾した情報を元に、異世界転生に前向きな人間に一番刺さる姿は何なのか……という、彼女なりの研究の結果顕現したのがスウェット爆乳なのである。彼女の姿を批判するのであれば、即座にその批判は地球人類自身に返ってくるものだと理解するべきであろう。 便宜的に彼女、あるいはスウェット爆乳と呼んでいるが、高次元知性体である彼女の本来の姿はそのようなものではない。全容は所詮三次元に住む人間たちには知覚不可能だが、無理やり地球や異世界に降り、その姿を表すとしたら、絶えず非連続的に色彩・形状・大きさを変える不定形の何か、としか捉えられないであろう。全天を覆うほどの大きさになったと思えば、次の瞬間には米粒よりも小さい何かとなり、次の瞬間には極彩色に輝く真美の女神像にもなり得るだろう。そういう存在が彼女だ。 とはいえ、この調子で描写を続けるといくら文字数があっても足りないし、何十回、何百回と繰り返し読んでも理解不能となる。三次元生物の知覚では、いくら想像を巡らしたところで高次存在の生態を正確に理解することなど不可能なのだ。そのため、ここでは便宜上、地球人類であってもイメージしやすい言葉に翻訳して描写を連ねることを許していただきたい。 彼女……と言い続けるのもまどろっこしい。彼女本来の名前は音波振動以外を多分に含むために発音不能であるので、仮に「フレイア」としておく。北欧神話の神々の名は響きだけでそれっぽくなるからありがたい。 さて、そのフレイアは何者かと言うと、フリーランスの世界運営代行業者だ。地球に存在する職業に当てはめるなら、水槽の委託管理業者が近いだろう。読者諸賢も、駅や喫茶店、ショッピングセンターの店頭などで美しい水槽を見た経験があるのではないだろうか。 そして、きれいな状態の水槽を維持するの
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第二十四話 ちっ、この世界はわたしへの嫌がらせのために作られたのか?

 ちょっと隣町まで買い物に……といってもドワーフ村においてはそんな気軽にできることではない。下山に一日かけ、街についたら一日かけて買い物し、また一日かけて戻ってくる、というのが買い出しの基本的な日程である。足掛け三日もかかるし、人手も割くことになるのでそうそう頻繁にできることではない。そんなわけで、ドワーフ村ではおよそ二十日に一度を目安に買い出しをすることになっている。 街で売るための金属製品やら陶器やらを背負ったドワーフ男たちの背中をえっちらおっちらと追いかけているのがわたしとミリーちゃんだ。買い出しは基本的に男性の役割なのだが、「男どもの中に女一人というのは居心地が悪かろう」ということでオババ様が付けてくれたのだ。なお人選は立候補だったのだが、ミリーちゃんが熱烈に希望したために他の女たちは自主的に引き下がった。 なんでも、女衆の中ではミリーちゃんが一番の槌の使い手らしく、ボディガードとしての同行であれば他の人選は考えられないということだった。普通、ドワーフの女性は武術を身に着けないのだが、ローガンさんの見様見真似で幼い頃から槌を振るっていたらしい。意外な一面である。「街に行けば知らないものが食べられそうですし、あの人もいますしね……」 ミリーちゃんがにらみつける視線の先には陶器を背負ったカガ君がいた。時折こちらを振り返り、ミリーちゃんと目が合っては慌てて前を向き直している。こちらも普段は買い出しに加わらないが、今回わたしが同行すると聞いて熱烈に参加を希望したとのこと。げに恐ろしきは貧乳フェチの執着なり。 宴のたびにわたしに地霊の試しを申し込むカガ君を、ミリーちゃんはどうも敵視しているようだ。うぬぼれだったら恥ずかしいけれど、大好きなお姉ちゃんが取られちゃうって感じなのかな。そうだとしたらなんだかむず痒い。安心せよ、我が愛しき妹よ、わたしはあんな貧乳フェチになびくことはないぞ。ちなみにわたしのリアル妹はふたりともわたしを差し置いて結婚したぞ。 途中、休憩を何度か挟みつつ、順調に山道を下っていく。岩ゴブリンの襲撃でもあるんじゃないかと内心びくびくしていたが、男衆が何人もいる買い出しの一団が襲われることはめったにないとのこと。ヒゲモジャさんたちとはじめて出会った時の一方的な闘いを思い出して納得がいく。襲ったところで一方的に狩られるのであれば、そうそう手出
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第二十五話 交易都市で見つからぬものは世界中のどこを探してもない

「お嬢さんたちには果実水の方がよろしゅうございますか?」「いや、こいつらもエールでかまわねえ」 ローガンさんが案内もされないうちにカウンター脇にあるドアを開け、会議室的な部屋に入っていく。無作法に思えるが、それだけ付き合いが長いんだろう。ぽっと出のわたしが口を出すようなことじゃない。 会議室の端にどかどかと今回の交易品を積み上げ、席に着いて待つことしばし、青髪のお姉さんに続いて数名の男性が入ってきた。お盆にジョッキを載せているあたり、従業員ってことかな。お姉さんがバインダーのようなものを抱えているので、おそらくは部下なのだろう。おっとりした様子に見えるけれど、実はやり手のキャリアウーマンってとこかなあ。 私たちの前にジョッキを配ると、男性たちは一礼して退室していった。青髪のお姉さんがひとり残って着席し、軽く頭を下げる。「本日もようこそいらっしゃいました。喉が渇いておいででしょう。まずは再会を祝す乾杯を」 全員がジョッキを掲げ、一口飲む。冷やして薄めた甘酒って感じの味わい。エールと言うからにはビールに近いものを想像していたのだけれど、だいぶ違うなあ。「さて、今回もいつもの品を降ろしていただけるのでございましょうか?」「だいたいはそうだがな。事情があって、今回は岩ゴブリンの素材はなしだ」 お姉さんの青い眉がぴくりと動く。「岩ゴブリンの素材がないとは……。差し支えなければ、事情をお伺いしても?」 ローガンさんが例の一件について話す。瘴気石を溜め込んだのは自分の一存だという形に話を変えているが。実際に瘴気石を隠していた若手ドワーフたちの評判を落とさないための配慮なのだろう。相変わらずローガンさんが精神的イケメンすぎる。「なるほど……まさかそんな恐ろしいことが。しかし、当商会でも魔石は多く取り扱っておりますが、そのような事件が起きたことなど金輪際ございません。何か他に原因があるのでは?」「そうかもしれねえ。かもしれねえが、かもしれねえで村を危険に晒すわけにはいかん」「それは道理でございますね。とはいえ、岩ゴブリンの素材がないとなると買値は半分以下が精々ですが、よろしいので?」「それも仕方がねえだろうな。なるべく高く買い取って欲しいのが本音だが」 うーん、と悩ましげな表情を浮かべつつお姉さんが席を立ち、部屋の隅に山積みにされた陶器や金属製品を手
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第二十六話 リザードマンも繁殖効率が良いと予想されます

「西の皇都が緑の魔王に滅ぼされてから、交易都市との行き来もすっかり絶えてしまっております。武勇名高き天突くドワーフ様方が護衛に付いてくださるのであれば、当商会も新たな交易路の探索に乗り出せるのですが……」「願ったり、と言いたいところだが、そいつは無理な相談だな。おれたちは天突く岩から離れられねえ」 天突く岩の氏族は地霊の加護が強く、そのぶん体力や魔法に優れているのだが、そのために地霊の力が弱い土地では暮らしていけない。およそ五十歳を過ぎるとそれが顕著になり、オババ様や他の長老たちともなると麓の街まで降りていくことさえできないそうだ。 ってか、いま魔王って言った? また瘴気領域の主的なやつなのかな? わたしの表情にハテナマークが浮かんでいるのを察したのか、サルタナさんが補足してくれた。「皇族の一人が魔に魅入られ、皇都の住民のほとんどを野菜に変えて喰らってしまった……と伝え聞いております。それが緑色の野菜だったため、緑の魔王、と」 なんやねんそれ。草食なのか肉食なのかさっぱりわからん魔王だな。つか、人間を野菜に変える魔法? なのかな。ニッチなくせに凶悪すぎるぞ。「このあたりの主要な街道はすべて皇都を通っていたため、未だ西の交易都市とをつなぐ新たな交易路が見い出されていないのです。旅人などから情報は集めておりますが、いずれも狭い間道ばかりで、とても隊商を引き連れて通れるようなものではないのです」 そして、「皇都の北にある瘴気領域を安全に抜けることさえできれば、交易も再開できるでしょうに」と悔しそうに付け加える。なるほど、それでローガンさんたちに護衛の依頼をしたかったのか。「冒険者には頼めねえのか?」「並の冒険者ではとてもとても。熟練者でも瘴気領域を突っ切るとは聞いて尻込みするばかり。乗り気になるのは誰も彼も己の実力を弁えない未熟者……という次第でして。まずは少数の調査隊を送ろうと考えてはいるのですが、手札が揃わないのです」 おお、冒険者。ドワーフ村の会議でも耳にしたけれど、そんなファンタジー味あふれる職業が存在するのか。やっぱりゴブリンを退治したり、ドラゴンの巣にある秘宝を持ち帰ったり、お姫様を救うついでに世界も救っちゃう、みたいなやつなんだろうか。「護衛がご入用でしたら、我が主人を推薦いたしましょう。先だって
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第二十七話 牛丼チェーン店もかくやという速度

「ほほう……ここが噂に名高い冒険者ギルド、か」 サルタナさんのお店を出た翌日、わたしたちは一軒の店の前に立っていた。「冒険者ギルド……? 嬢ちゃん、ここは単なる飯屋だぞ」 ローガンさんが不思議そうな顔でこちらを見る。あ、いえ、なんでもないです。独り言独り言。ローガンさんが木製のドアを押して店に入っていく。西部劇風のスイングドアだ。続いて中にはいると、店内には食事中の客がまばらに座っている。昨日は村から持ってきた携帯食の残りで食事を済ませて早々に宿を取ったので、街の料理を味わうのがこれがはじめてとなる。 空いたテーブルに適当に陣取ると、給仕の女性が注文を取りに来る。ローガンさんが「人数分、頼む。エールも付けてくれ」と言ってお金を渡す。そして女性は速やかにカウンターに戻っていった。あれ? 注文は……? そういえば、メニューとかもなんにもないぞ?「この店でメシと言ったらいつも1種類しかねえんだよ。頼めば酒の肴なんかも適当にこしらえてはくれるが……なあ?」 ローガンさんが他のドワーフたちを見渡すが、みんな別注文には乗り気ではないようだ。村の財政事情が苦しいことに遠慮している……という要素がゼロとは言わないが、どうもそうではないらしい。あー、嫌な予感がひしひしするぞ。「はい、お待ちどおさん」 はやっ! 現代日本のファストフードの極北、牛丼チェーン店もかくやという速度で料理が運ばれてきた。やってきたのはお椀がひとつと、お盆に直接載せられたパン……のようなものがいくつか。おお、やっぱりあるじゃん。小麦粉由来的な炭水化物。道中でも遠目に見えていたけど、あの麦畑のようなものはやはり穀類を育てていると考えてよさそうだ。 パンらしきものの大きさは長さ20センチほど。幅と厚みは3センチほどで角張った棒状だ。地球のバランス栄養食をそのまま拡大した感じ。細長く焼いているのは片手で持って食べやすいようにかな。ではさっそく一口いただきます。いただき……ガリガリ……何これ硬ったー! ぜんぜん歯が立たないでやんの。「ああ、それはこっちのスープに浸してふやかしながら食べるんだ。おれもはじめて食ったときは街の人間はとんでもなく顎が頑丈なのかと面食らったもんだよ」 ローガンさんが食べ方を説明してくれる。どうやらミリーちゃんもわからなかったようで、わたしの隣で激硬パンをガジガジしていた
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