氷室百貨店・本店会議室。 百貨店側との周年記念企画の打ち合わせを終え、ほかのHIMUROの担当者たちは展示備品の確認を続けるため会議室に残った。 今日の会議で二人が受け持っていたのは、珠希が『環愛』の説明、雪臣が展示方針の確認までだった。用件が終わり次第、二人は先に会議室を出て、帰社するため、瀬原が車で迎えに来るのを待つことになっている。 「お先に戻ります」 珠希は残る人たちに頭を下げ、雪臣と一緒にエレベーターへ向かった。 初めて展示場所を見に来たときは、まだ商品化が決まっていなかった『環愛』。今日はその担当者として、実際の展示に向けた話をしてきた。エレベーターの鏡に映る自分を見て、少しだけ背筋を伸ばした。 正面玄関を出ると、風が頬に当たった。十一月に入って、日が傾くのも早くなっている。 「もう、かなり寒いね」 思わず肩をすくめた珠希の隣で、雪臣がスマートフォンを見た。 「瀬原から」 「どうしたの?」 「渋滞で、十五分ほど遅れるそうだ」 「そっか。じゃあ、中で待ってようか。ここ、風が通るから寒いもんね」 雪臣は頷くと、杖の向きを変えた。二人は百貨店へ引き返す。クリスマス商戦が始まった館では、入口がゴールドやシルバーの華やかな電飾で彩られ、名物の高さ七メートルのクリスマスツリーが来店者の足を止めていた。 百貨店に入ってすぐの雑貨売り場では、冬の食卓を飾る食器の特設販売が行われている。 湯気の立つ飲み物のPOPを見て、珠希はふとあることを思い出した。 「あ、そういえば」 「どうした」 「雪臣くんのマグカップ、私が使っちゃってるよね」 珠希が今使っているマグカップは、もともと雪臣が使っていたものを譲ってもらったものだ。紅茶用のティーカップは別にあるが、雪臣は今も毎朝、グラスで冷たい飲み物を飲んでいる。 珠希は棚に並ぶ色を見回した。 「寒くなってきたし、一つ買っていこうか」 「あぁ、そう言えば、そうだな」 「瀬原さんが来る前に選ぼう」 少し先に、取っ手の丸いマグカップが並んでいた。シンプルな無地で、色は全部
Zuletzt aktualisiert : 2026-10-05 Mehr lesen