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42 チャプター

蒼人side.6

三年生になって最後の体育祭。 二人三脚の練習は、思っていた以上にうまくいかなかった。 「ねぇ、もっと右!」 「違う、今絶対速かった!」 「歩幅合わせてってば!」 緋夏は転びそうになるたび文句を言ってくる。 分かってる。 緊張してるんだ。 でも、何度も何度も言われているうちに、頭の片隅にずっと引っかかっていたものが、少しずつ大きくなっていく。 ――俺じゃなかったら、もっと上手くできたのか。 本当はそんなこと思いたくない。 思いたくないのに。 「じゃあ……樹と交代する?」 口に出した瞬間、自分で固まった。 ……何言ってんだ、俺。 そんなつもりじゃなかった。 交代なんてしたくない。 緋夏の隣を譲る気なんて、一ミリもない。 「はぁ!? なんでそうなるの!?」 予想以上の勢いで返ってくる。 「蒼人じゃないとできるわけないじゃん!」 一瞬だけ息が止まった。 ……そうか。 もちろん、幼なじみだから。 そういう意味だってことくらい分かってる。 それでも。 その言葉だけで十分だった。 「……ごめん。撤回する。」 それ以上は何も言わず、もう一度スタート位置へ戻る。 ⸻ 体育祭当日。 緋夏は朝から落ち着きがなかった。
last update最終更新日 : 2026-08-28
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