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蒼人side.2

last update Veröffentlichungsdatum: 24.08.2026 18:00:00

文化祭が近づいてきた。

教室のあちこちで、「どこ回る?」なんて声が飛び交っている。

そんな中、緋夏は落ち着かない様子で何度も樹の方を見ていた。

……誘うんだろうな。

なんとなく分かった。

本当は。

断られればいい。

そう思ってしまう自分がいる。

でも、それは緋夏の望むことじゃない。

だから俺は何も言わない。

少しして、緋夏が肩を落として戻ってきた。

「蒼人ー!」

さっきまで曇っていた顔が、俺を見るなり少しだけ明るくなる。

「文化祭回る人いないから回ろーよ!」

そして間髪入れずに続ける。

「てか回るから!」

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  • 私を見つけてくれた人   After story蒼人side.1

    付き合い始めて数か月。 今日は特に予定も決めず、二人でショッピングモールを歩いていた。 緋夏は相変わらず落ち着きがない。 「あっ、見て!これ可愛い!」 さっきまで服を見ていたと思えば、今度は雑貨屋に吸い込まれていく。 「……忙しいな。」 そう言いながらも、その後ろを歩く。 店を出ると、緋夏が何も考えず車道側を歩こうとした。 遠くの方に車が見える。 無意識に腕を引く。 「え?」 「こっち。」 そのまま自分が車道側に立つ。 「……?」 不思議そうな顔。 別に深い意味なんてない。 危ないから。 それだけ。 歩いている途中、緋夏が急に立ち止まった。 「蒼人。」 「ん。」 「荷物持とうか?」 「……は?」 「いや、私が荷物持とうかって」 「意味分かんない。」 「えへへ」 何が面白いんだ。 そのまま歩き出そうとした時だった。 「……ねぇ。」 「なに。」 「蒼人ってさ。」 嫌な予感がする。 「こんな気遣いできたんだね。」 …… …………。 「はぁ?」 「できないと思ってたの?」 「思ってた。」 「失礼すぎるだろ。」 「だって前の蒼人ってさぁ。」 指を折り始める。 「荷物持たない。」 「持てって言われてない。」 「『寒い』って言っても『へぇ』しか言わない。」 「事実だろ。」 「『眠い』って言っても『寝れば?』って冷たい。」 「寝ればいいじゃん。」 「ほらぁ!」 ケラケラ笑っている。 ……なんか腹立つ。 「でも今はさ。」 緋夏は俺の顔を覗き込んできた。 「車道側歩いてくれるし。」 「重そうだったら荷物持ってくれるし。」 「寒かったらマフラー巻いてくれるし。」 「人混みだと手繋いでくれるし。」 「体調崩しそうだとすぐ休ませるし。」 「意外だった。」 「蒼人ってこんな人だったんだね。」 …… いや。 違う。 昔からできなかったわけじゃない。 ただ。 やる理由がなかっただけ。 「……はぁ。」 ため息をつく。 「なにそのため息ー。」 「別に。」 「またそうやって誤魔化す!」 ほんとよく喋る。 少し黙ってろ。

  • 私を見つけてくれた人   蒼人side.9

    受験前日。 机に向かっていても、文字が頭に入らない。 スマホが震えた。 『ねぇっ!!緊張やばい!!』 画面を見て、小さく笑う。 俺だって緊張してる。 けど、そんなこと言ったら余計不安になるだろ。 指を動かす。 『早く寝ろバカ。』 送信。 これでいい。 明日は、万全な体調で来い。 それだけだ。 ⸻ 試験当日。 駅へ向かう途中、少し前を歩く見慣れた背中が目に入る。 ちゃんと起きられたらしい。 それだけで少し安心した。 「ちゃんと寝れたの。」 後ろから声を掛けると、 「わっ!」 大げさなくらい肩を跳ねさせる。 ……いつもの緋夏だ。 その反応に、自然と肩の力が抜けた。 大丈夫。 俺も、いつも通りでいよう。 ⸻

  • 私を見つけてくれた人   蒼人side.8

    自習室は静かだった。 参考書をめくる音と、シャーペンが紙を走る音だけが響く。 緋夏が席を立ち、トイレへ向かう。 その姿を見送りながら、ふと手が止まった。 もし。 もし緋夏と違う大学になったら。 もし俺だけ落ちたら。 もし、このまま離れることになったら。 ――嫌だ。 そんな未来、考えたくもない。 気づけば参考書に視線を戻し、無意識にペンを走らせていた。 一問でも多く。 一点でも高く。 絶対に受かる。 何が何でも、緋夏と同じ大学へ行く。 その一心だけで、問題を解き続けた。 冬休みに入ってから、緋夏からの連絡は一度も来なかった。 きっと勉強している。 あいつのことだから、不安になりながらも必死に机へ向かっているんだろう。 だったら俺もやるしかない。 連絡したい気持ちは何度もあった。 でも、今は邪魔したくなかった。 ただ一つだけ。 毎年欠かさず送っているメールだけは、今年も送りたかった。 時計の針が零時を指す。 『あけおめ。』 送信ボタンを押して、スマホを机に置く。

  • 私を見つけてくれた人   蒼人side.7

    最近の緋夏は、見ていて少し怖かった。 自習室に着けば雑談もせず、鞄を置いた瞬間に参考書を開く。 前なら「今日さー」なんてどうでもいい話をしてきたのに、今はそれすらない。 俺が声をかけても反応が遅いことがある。 もう一度呼びかけてようやく「ん?」と返してくる。 ……体調、崩さなきゃいいけど。 そう思っていた。 そして、その嫌な予感は当たった。 その日の緋夏は、朝から様子がおかしかった。 焦点が合っていない。 問題を解いているはずなのに、同じ場所をずっと見つめている。 何度も声をかけようとして、やめた。 「大丈夫?」 そんな一言で止まるようなやつじゃない。 案の定、放課後も残ると言い張った。 勉強どころじゃないだろ。 そう思いながらも、隣に座るしかできなかった。 他の居残り組が全員帰る頃には、参考書を開いたまま 動かなくなった。 机に突っ伏している。 寝息が聞こえた。 ……寝てるのか。 先生が教室を覗き込む。 「もう閉めるぞー。」 「……あ、はい。」 起こそうか迷った。 でも、この

  • 私を見つけてくれた人   蒼人side.6

    三年生になって最後の体育祭。 二人三脚の練習は、思っていた以上にうまくいかなかった。 「ねぇ、もっと右!」 「違う、今絶対速かった!」 「歩幅合わせてってば!」 緋夏は転びそうになるたび文句を言ってくる。 分かってる。 緊張してるんだ。 でも、何度も何度も言われているうちに、頭の片隅にずっと引っかかっていたものが、少しずつ大きくなっていく。 ――俺じゃなかったら、もっと上手くできたのか。 本当はそんなこと思いたくない。 思いたくないのに。 「じゃあ……樹と交代する?」 口に出した瞬間、自分で固まった。 ……何言ってんだ、俺。 そんなつもりじゃなかった。 交代なんてしたくない。 緋夏の隣を譲る気なんて、一ミリもない。 「はぁ!? なんでそうなるの!?」 予想以上の勢いで返ってくる。 「蒼人じゃないとできるわけないじゃん!」 一瞬だけ息が止まった。 ……そうか。 もちろん、幼なじみだから。 そういう意味だってことくらい分かってる。 それでも。 その言葉だけで十分だった。 「……ごめん。撤回する。」 それ以上は何も言わず、もう一度スタート位置へ戻る。 ⸻ 体育祭当日。 緋夏は朝から落ち着きがなかった。

  • 私を見つけてくれた人   蒼人side.5

    模試が近づき、放課後は緋夏と教室に残って勉強するのが当たり前になっていた。 シャーペンの音だけが響く静かな教室。 ふと、緋夏が顔を上げた。 「いいなぁ……。」 小さく漏れた声につられて、俺も廊下へ目を向ける。 男女二人が並んで歩いていた。 荷物を持ってやったり、何気ないことで笑い合ったり。 見ているだけで、居心地の良さが伝わってくる。 「あの二人、付き合ってるのかな。」 「関わったことないから知らない。」 「だよねー……。」 それだけ言うと、緋夏は何事もなかったように参考書へ目を戻した。 俺はもう一度、緋夏を見る。 ――俺は。 緋夏にとって、安心できる存在でいられているんだろうか。 そんなことを考えながら、また問題集へ視線を落とした。 ◇ 数週間後。 模試の結果が返ってきた。 適当に書いた大学の判定は、E。 「……やば。」 思わず声が漏れる。 一方、緋夏はC判定。 先生にも友達にも褒めら

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