瀬名の死後、字幕だけが変わっている。 『悪女を演じ続けた女性』 『喪失を越えて立ち上がった元妻』 『二人を守れなかった男』 最後に、最終生放送の空いた椅子と、現在の私のインタビュー映像が重なる。 ナレーション案は仮音声だった。 『彼女の死を経て、残された二人は、もう一度互いと向き合い始めた』 そこで再生を止めた。 瀬名は、私たちを復縁させるために死んだのではない。 私は、瀬名の死で景都の愛へ気づいたわけでもない。 愛されていることは、離婚する前から知っていた。ただ、その愛の中で息ができなかった。 少し前の場面へ戻して再生すると、瀬名が廊下で母親へ電話している映像が流れた。固いプリンを買っていく、と笑っている。私も聞いたことのある会話だった。 その直後に、最終生放送の空いた椅子が置かれる。普通の娘だった映像が、死を予告する伏線へ変わっていた。 瀬名が母親を大事にしていたことと、私を傷つけたことは両立する。ところが映像の中では、一方が本当ならもう一方は誤解だったことにされている。 私は再生位置を戻し、同じ三十秒をもう一度見た。編集点を知っても、その間に何があったかまでは戻らない。 制作担当へ電話する。 「直してほしいです。字幕だけじゃなくて、つなぎ方を」 『具体的には、どの部分でしょうか』 「瀬名さんが亡くなったすぐあとに、私と景都の映像が続くところです」 担当者は少し黙り、『追悼企画として、視聴者が理解しやすい軸は必要になります』と答えた。 「瀬名さん、そんなにきれいな人じゃなかったです。私も、あの人が死んで救われたわけじゃない。……その二つを並べるの、やめてください」 電話の向こうで、キーボードの音が止まる。 『では、水城さんとしては、どのような構成を』 「私が代わりの筋書きを出すんですか」 声が強くなった。私は停止画面の瀬名を見たまま、息を整えた。 「少なくとも、私の映像と名前でそれを作らないでください」 担当者は、修正要望を文書でほしいと言った。 通話を切ると、画面には停止した瀬名の笑顔が残っていた。 承諾期限は、あと二日だった。 翌朝、経済ニュースにLATTICE SHIELDの短い回答が載った。 『深見景都氏の私生活および番組企画について、当社からコメントする予
Zuletzt aktualisiert : 2026-09-28 Mehr lesen