「……2Kか。一人暮らしの世帯も多いわけだ」エントランスで京極と凪を降ろし、山田は挨拶もそこそこに走り去った。凪も調査のための宿泊だと割り切って自分の部屋へと京極を招き入れたところ……あちこちに京極の視線が行き、落ち着かない。「この階は全部2Kなんですか?」「わからない。……確か3部屋の間取りもあったと思うが」京極はカラーボックスの上に飾られた母の遺影に気づいたらしい。生花と思い出の品、そして線香と香炉を置いて、簡易的にこしらえた仏壇のようなものだった。……手を合わせてくれたことが、少し意外だった。「ありがとうございます。……お茶でも」「いや、俺のことはいいから。君は風呂に入って先に寝なさい」京極はそう言って玄関に向かった。見送ろうとついて行くと、ドアにセンサーのようなものを取り付けている。不思議そうに見つめる凪に京極が説明した。「鍵なんて信用ならないからな。これは不審者が無理に開けようとすると感知して警報が鳴って、警備会社に通報されるシステムだ」「……すごいですね。そんなグッズがあるなんて知りませんでした」「うちのオリジナルだからな。基本的にタワマンとか高級マンションにしか需要がない」その説明に納得する凪。これを活用するには警備会社との契約もしなくちゃならないから。「このドアが無理に解錠されたら俺の携帯に警報が入るように変えといた。調査が終わったら君の鍵で中に入るから、あとは気にせずに寝てくれ」はい、という返事を聞く間もなく、京極はドアを出ていく。ピロロという小さな電子音がして、警報が鳴るシステムが作動したとわかる。……ここまで、ものの10分。大げさな言い方をすれば、企業のトップとしての能力を見せつけられた気がした。問題が起きてからの決断と対応、対策……そのすべてに迷いがなくて的確。「とてもじゃないけど、かなわない……」張り合うつもりは毛頭なかった。けれど、つまみっ子倶楽部という団体のトップである凪にとって、京極の対応は賞賛に値した。「お布団……干したばっかりで良かった」やや緊張しながら入浴を済ませた凪は、座卓を片付け、京極のために布団を敷いた。奥にはベッドがあって一応寝室だが、別の部屋がいいに決まっている。敷布団に薄いピンク色のシーツをかけ、客用の枕には未使用のタオルを巻いた。秋の始まりでまだ寒さは本格的ではないので、さ
Zuletzt aktualisiert : 2026-09-21 Mehr lesen