こうすれば、自分だけの子供を持つことができる。どうせ離婚してしまえば、碧斗とはもう一切の関わりがなくなる。子供は、彼に知られないように一人で育てればいいだけの話だ。今、琴葉がすべきことはただ一つ――今日の午後、碧斗の目をどう誤魔化し、無事に離婚を成立させるかだ。まだお腹は目立たないとはいえ、万全を期すため、やはりいくつか準備をしておく必要があった。……午後、出かける前、琴葉はわざと病人のようなやつれたメイクを施した。鏡に映る血の気のない真っ白な唇と青白い顔を見つめる。まるで手術を終えた直後の、今にも倒れてしまいそうなほど痛々しい姿だった。その出来栄えに満足し、琴葉は家を出た。役所に着いたのは、まだ2時だった。碧斗との待ち合わせ時間まではまだ30分ある。途中で何度も手鏡を取り出しては自分のメイクを確認し、問題ないことを確かめて、ようやく安心して役所の外で待ち続けた。2時半が近づき、カップルたちが次々と役所の中へ入っていく。まだ碧斗の姿は見えない。琴葉は少し焦り始めた。――まさか、来ないつもりじゃないわよね?電話をかけようとしたその時、一台の黒い高級車が目の前に停まった。琴葉がスマートフォンを握る手に、無意識に力が入る。次の瞬間、背筋の伸びた長身の男が車から降りてきた。男がこちらへ向かって歩いてくるのを見て、琴葉は慌てて気持ちを落ち着かせた。やはりやましいところがあるからか、彼が目の前に来ても、ボロが出るのを恐れて余計な口は叩けなかった。「時間通りね。それじゃあ、入りましょ」そう言って踵を返し、役所の中へ入ろうとしたが、碧斗が口を開いた。「子供は堕ろしたのか?」琴葉の胸がギュッと締め付けられた。彼女は息を殺し、必死に平静を装う。「堕ろしたわ」彼女はわざと、その青白く弱りきった顔を彼に向けて上げてみせた。碧斗の視線が彼女の顔に落ちた。数秒の沈黙の後、彼はふいに右手を差し出した。「カルテを見せろ」琴葉は驚きで瞳を揺らした。完全に予想外だった。――この今にも死にそうな病人メイクでも、まだ彼を納得させるには不十分だというの?「あなた、頭おかしいんじゃないの?離婚しに来るのに、わざわざカルテを持ってくる人がどこにいるのよ」と彼女は言い訳をした。碧斗は指摘した。「スマホに電子版の
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