片桐星奈(かたぎり せな)は子供が産めない体だった。病院で診断結果を受け取り、星奈は片桐蒼士(かたぎり そうし)にメッセージを送った。【私たち、離婚しましょう】メッセージを送り、スマホを置いた瞬間、いろんなことが吹っ切れた。診断結果を受け取ってすぐに、義理の母親から、すぐに夫の実家に来いと電話がかかってきた。星奈はそれに応じながら、片桐家の医療業界内でのコネクションはさすがだと感心してしまった。夫の実家へ向かう途中、星奈はどんよりとした曇り空の中、始終放心状態だった。彼女の目には涙が滲み、悲しみに襲われていた。星奈は蒼士とは知人からの紹介で知り合った。体を重ね合うことこそ、女性の心を掴む最も早い方法だという。女性は誰もが初体験の男性を忘れることはできない。それに、愛し合う二人が体で相手の愛を確かめる行為だから、違法でない最も簡単なことだ。星奈も自分の最初の男を簡単に忘れることなどできないだろう。しかも、彼はあの片桐蒼士だ。医学界の天才で、峯崎市において最年少で外科主任部長に抜擢された男。星奈が片桐家に着いて、まず顔を合わせたのは蒼士の妹だった。この時、片桐綾音(かたぎり あやね)は憎しみに顔を歪めていた。緒方星奈という片田舎からやって来た平凡な女が、兄と結婚したのは、片桐家の汚点だと綾音はずっと思っていたのだ。それに、満足に子供一人産むこともできない役立たずだ。「ねえ、あんたさぁ、子供すら産めないくせに、私の兄と結婚してどういうことよ?こちらはとんだ災難だわ」星奈は手に持っていた診断結果を彼女の前で揺らしてみせた。「私もさっき知ったばかりなの」星奈は、偉そうなこの小姑に構わず、家の奥へと進んだ。「真帆さんが帰ってくるって噂は、峯崎の医療業界関係者にはもう広まってる。あなたも自分が置かれた状況を理解して、離婚することね。それが誰にとってもハッピーな事なんだから」星奈はその言葉にピクリと反応し、綾音に背を向けたまま鼻で笑った。綾音の言うとおりだ。片桐蒼士という男が、子供を欲しがらないはずがないだろう?それに、自分との子供を喜んで産むはずもない。甲斐田真帆(かいだ まほ)こそ、蒼士が求めている女だ。彼はもちろん彼女との間に子供を望んでいるのだ。ただ、ここにいるこのお嬢さんは、星
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