あいにく、私はもう別の男の妻です大晦日、私は帰国した。
帰国祝いの席で、恋人の瀬戸健吾(せと けんご)がいきなり赤い薔薇の花束とダイヤのリングを差し出し、片膝をついた。
「プロポーズするまで三年もかかっちゃったけど、僕たちの愛に遅いなんてことはないよね。梓、僕と結婚してくれ!」
友人たちは傍で囃し立て、誰もが私が感極まって頷く瞬間を待ち構えていた。
けれど、誰も覚えていないようだった。三年前の大晦日、健吾が私にプロポーズすると約束していたことを。
あの夜、私は精一杯着飾って、夜が明けるまで彼を待ち続けた。
だが、彼は現れなかった。
届いたのは、彼の冷たい電話の一言だけだった。「雪乃の具合が悪くなった。放っておけないんだ。プロポーズの件は、また今度にしてくれ」
その翌日、元日に私は一人で出国し、親が決めた政略結婚を受け入れた。
三年前のあの時、私はもう、他の男の妻になったのだ。