動きの面では、ときにカメラを被写体に近づけすぎず一定の距離を保つことで孤独を見せ、逆に切迫感が必要な場面では距離を詰める。こうした距離感の操作は観客の感情を誘導するための巧みな手法だ。編集とのリズム合わせもよく、映像が心理的な波を作る点では『Requiem for a Dream』に通じる緊張感を感じた。映像が語るものが強く、見終わったあともしばらく残る種類の表現だった。
また、実際の照明と現場の実景をうまく混ぜて「現実らしさ」を保ちながらも演出的な印象を残すバランス感覚が見事だ。色温度を場面ごとに微調整して、観客が無意識に場の空気を分かるようにしている。長回しと短い切り返しの組み合わせでテンポを作り、クライマックスでは映像リズムを崩して視覚的な不安感を増幅する。『The King of Comedy』のような静かな狂気を映像で送る手法と対話しつつ、自分なりの語り口を映像に落とし込んでいるのがよく分かる。