資料を読み比べて気づいたのは、
ジュブナイル(中高生前の児童向け)とYA(ヤングアダルト)が読者の発達段階に合わせて意図的に物語の軸を変えている点だ。具体的には主人公の年齢、扱うテーマの深さ、文章の密度、そして倫理的な曖昧さの扱い方が違う。例えば『シャーロットのおくりもの』を挙げると、主人公たちの視点や世界観は比較的安全で説明的、友情や死の扱いもやさしく導かれる。一方で『ハリー・ポッターと賢者の石』は境界領域に位置し、シリーズを通じて徐々にテーマが成熟していくため、MG(中級児童向け)としての側面とYAへと移行する要素が混在する。
私のノートには、いくつかのチェックポイントがある。まず語彙と文の長さ:ジュブナイルは短めで繰り返しや明瞭な説明を多用し、YAは比喩や複雑な節を増やして深みを持たせる。次にテーマ性:喪失や友情、成長は両者に共通するが、YAでは自己同一性、性的目覚め、政治や社会的構造への批評といった複雑な問いかけが来る。最後に語りのトーンと視点の成熟度で、ジュブナイルは外的な問題解決が中心、YAは内面の葛藤や倫理的ジレンマが物語を牽引することが多い。
読み手への配慮という観点も重要だ。編集段階では暴力描写や性的描写の許容範囲が変わり、マーケティングも表紙や帯の文言で明確に区別される。僕はこの違いを説明するとき、作品を純粋に年齢ラベルで分けるよりも、どの程度まで読者に“問い”を投げかけるかで分けるほうが理解しやすいと感じる。