七年の恋の終わりに、冷酷な彼は豹変した
江崎詩織(えざき しおり)は、賀来柊也(かく しゅうや)と付き合って7年。それでも、彼からプロポーズされることはなかった。
痺れを切らした詩織は、自ら柊也にプロポーズすることを決意する。
しかし、そこで彼女は知ってしまった。柊也には長年想い続けている「忘れられない女性」がいて、その人のためならエリートの座を捨て、不倫相手になることさえ厭わないという衝撃の事実を。
結局、自分は彼の「本命」のための当て馬でしかなかったのだ。そう悟った詩織は潔く身を引く。人生最大の敵とは、時に自分の思い込みに囚われた自分自身なのだから。
誰もが、詩織はただ拗ねているだけだと思っていた。柊也自身でさえ、そう高を括っていた。
7年も飼っていた犬が、飼い主から離れられるはずがない、と。
だが、やがて柊也は気づくことになる。飼い主から離れられなくなった犬は、自分の方だったと。
世間は詩織を「7年間も弄ばれた末に捨てられた哀れな女」と嘲笑う。
だが、柊也だけは知っていた。本当に弄ばれていたのは──自分の方だったということを。