サファイアの弔鐘
妊娠三ヶ月、夫・大塚辰也(おおつか たつや)が突然、私をヨガ教室に通わせることにしつこく勧めるようになった。
だが、レッスンを受けるたびに、辰也の秘書に必ず出くわすのだった。
辰也のスーツのポケットから、もう一枚のヨガ教室の領収書を見つけた夜、私は何気なさを装って切り出した。
「あなたの秘書さん、ずいぶん時間に余裕があるのね」
辰也は動きを止め、無表情で答えた。
「気に入らないならクビにすればいい。たかが秘書だ」
翌日、解雇されたはずの宮野安芸(みやの あき)から呼び出しを受けた。
泣きついてくるかと思いきや、彼女の顔には勝ち誇ったような笑みが浮かんでいた。
「勝ったつもり?残念だけど、あなたはもうとっくに全てを失ってるのよ」
そして、束になった写真を私に投げつけた。
「なぜヨガ教室を強いたか、わかる?私は出産後も体重をキープしているけれど、彼、とっくにあなたの体型を嫌ってるのよ!」
写真の中で、辰也は安芸をしっかり抱きしめ、二人の間には愛らしい女の子がいた。
安芸は顎をクイッと上げ、見下すような声で告げた。
「よく見て。私と彼の子はもうすぐ二歳になるのよ」