十年の恋を捨てて、私は海の向こうで咲く
ハルエ逆転ドロドロ展開ひいき/自己中妻を取り戻す修羅場不倫
第520便が着陸した。これまで一度も迎えになんて来たことのない恋人、高城修司(たかしろ しゅうじ)が、空港で私・藤原夏希(ふじわら なつき)を待っていた。
彼は空輸で取り寄せたブルースローズの花束を抱え、ベルベットの箱の中ではダイヤの指輪がきらきらと輝いている。彼が膝をついた瞬間、周囲から信じられないというように息をのむ音が上がった。
付き合って十年。彼が私と結婚したいと言ったのは、これが初めてだった。
私は平静を装いながら、指輪をはめてもらい、震える声で言った。
「修司、私たち……」
けれど彼は、ふっと笑った。
そしてそばにいる誰かへ視線を向け、軽く眉を上げる。
「言っただろ。こいつなら絶対うなずくって。賭けは俺の勝ちだ。絵を寄こせ」
私はその場で固まった。
背後で、悪意のこもった笑い声がどっと起こる。
育ちのよさそうな若い男女の一団が、私の前までやって来た。
先頭にいたのは佐伯伊織(さえき いおり)だった。
修司の、かつての縁談相手。
彼女は涙が出るほど笑っていた。
「だから言ったでしょう?夏希がどうしてこんなに長くあなたのそばにいられるのか不思議だったけど、ここまで言いなりになる犬なら、私だって簡単には手放せないわ」