冤罪の果て、後悔に溺れる家族
道端で狂犬に遭遇した。
咄嗟のことに、夫の神崎輝和(かんざき てるかず)は私、雨宮恵瑠(あまみや える)を力任せに突き飛ばし、重度のうつ病を患う松本舞香(まつもと まいか)をその腕に抱きしめた。
私が狂犬に噛みちぎられるのをただ見殺しにした。
輝和は手を伸ばし、彼女の目を覆った。
「よしよし、見ちゃだめだ。夜、悪夢にうなされるからな」
息子の神崎陽太(かんざき ひなた)でさえ、そばでヘラヘラと笑い、手を叩いて興奮気味に言った。「ママが犬に噛まれてる!あははは!」
私は狂犬に地面へ引きずり倒され、お腹を石の車止めに強く打ち付けた。目の前が真っ白になるほどの激痛に神経が張り詰める。
私は必死に哀願した。「お腹に赤ちゃんがいるの。お願いだから助けて、本当にお腹が痛いの……」
しかし、輝和は鼻で笑って言い放った。「本当に、どんどん演技が上手くなるな」
そして、三人は一度も振り返ることなく、その場を立ち去った。
その結果、私は流産し、病院へ運ばれた。
あの父子は私のことなど心配すらしないどころか、病室に乗り込んで私を責め立てた。
「お前が犬に噛まれた血生臭い場面のせいで、舞香のうつ病が悪化したじゃないか!お前はどうしてそんなに底意地が悪いんだ?なんで彼女を刺激しなきゃ気が済まないんだ?」
私が底意地が悪いって?
いいわ、なら私が身を引いてあげる。
でも、私が死んだ後、どうしてあなたたちは揃いも揃って泣きながら私に「帰ってきてくれ」ってすがりついてるの?