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思い入れはすべて水の泡

思い入れはすべて水の泡

時の流れ婚姻生活妻を取り戻す修羅場高嶺の花ひいき/自己中切ない恋逆転
宇宙船の打ち上げの前日、私は匿名の通報で精神的な病気を隠しているとされ、搭乗資格を失った。 精神病院に閉じ込められて3年。宇宙開発のエースになっていた夫の三浦朔(みうら さく)が、じきじきに私を迎えに来た。 「当初お前を入院させたのは、どうしようもなかったんだ。もう降格を願い出て、お前を連れ戻した。これからは、ふたりで穏やかに暮らそう」 そう言われ、「自分のせいで朔の出世の道が閉ざされた」と思いこんだ私は、それからの人生を彼のために、かいがいしく尽くしつづけた。 しかし死の直前になって、娘が私を密告した一通の手紙を見つけた。それは、なんと朔の直筆だったのだ。 そこには、彼が親友・佐藤勇太(さとう ゆうた)の妻・佐藤真奈美(さとう まなみ)と30年間も交わしつづけていた手紙もあった。 手紙には、未亡人の真奈美を守るため、私を精神病に仕立てあげたと書かれていた。嘘の診断書で私を病院送りにし、宇宙飛行士の席を真奈美にゆずった、と書かれていた。 それを見て手から滑り落ちたコップが、床で粉々に砕け散る。その破片に、私はまるで心を突き刺されたかのようだった。 本来、宇宙へ行くはずだったのは、私だったんだ。 それなのに朔は、他の女のために私の夢を奪ったんだ。 そう思いながら私は、絶望のなかで息を引き取った。 次に目を覚ましたとき、私は宇宙飛行士の選抜発表の日に戻っていた。 そして、朔が、「申請書類は俺が出しておくよ」と申し出てきた、その瞬間、私はその申し出をはっきりと断った。
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貧乏を装う彼女のため、母は死んだ

貧乏を装う彼女のため、母は死んだ

遠野ねこ復讐原家族問題婚姻生活男性視点逆転切ない恋
彼女の秋月杏奈(あきづき あんな)の借金を返すために、俺と母さんは死にものぐるいで働いた。 そのせいで、母さんは肺がんになった。 俺が金を持って病院へ駆けつけ、治療費を払おうとしたときには、母さんはすでに首を吊って死んでいて、一通の手紙だけを残していた。 【貴文、もうお母さんはだめみたい。このお金はあなたが持っていって、借金を返しなさい。杏奈はいい子よ。あなたのことを愛してる。ただ、道を踏み外してしまっただけ。 借金を返したら、二人で仲良く暮らすのよ】 俺は母さんの遺骨を抱え、母さんが命を削って残した600万を杏奈に渡した。 そして会社に戻ったとき、思いがけず彼女が何人かの債権者と話しているのを目にした。 「秋月社長、九条さんはすでにあなたの用意した試練をすべて乗り越えました。これからは、何か別のお考えがあるのですか?」 すると、杏奈の幼なじみである木村拓海(きむら たくみ)がふいに口を挟んだ。 「杏奈、九条が共に困難を乗り越えるのはもう十分わかったよ。でも、今度はいい時も変わらず一緒にいられるか、そこも見極めないとね」 杏奈は唇をきゅっと結んだ。 「次は、彼の気持ちが本物かどうかを確かめたいの。 私の立場を知ったあとでも、お金や肩書きに目がくらまず、今までと変わらずにいてくれるなら。 私は彼と結婚する」 俺は母さんの遺骨を見つめながら、涙が止まらなかった。 杏奈、母さんは君を見誤った。 俺も君を見誤っていた。 もう、君とは結婚したくない。
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冷たい数珠

冷たい数珠

詩音切ない恋愛人ひいき/自己中クズ男不倫スカッと後悔
結婚して五年目、白洲雨子(しらす あめこ)は偶然、秦野和也(しんの かずや)が養妹のレースの下着を手に、欲望を発散している場面を目撃してしまった。 和也は片手で数珠を弄びながら、もう一方の手では抑えきれない欲望に溺れていた。 扉一枚隔てた向こうで、彼が養妹に向けて吐き出す言葉にできない愛情を、雨子は息を殺して聞いていた。 力が抜けて床に崩れ落ち、涙が頬を伝う。 冷徹で近寄りがたい仏道修行者など、最初から存在しなかった。彼が手にしていた数珠は、ただ口にできない秘められた欲望を封じ込めるための道具に過ぎないのだ。 十年もの間、雨子は彼を追い続けてきた。けれど結局、自分が滑稽な笑い話にすぎなかったことを思い知らされる。 養妹が離婚して家に戻ってきたその日、雨子は南方行きの航空券を購入した。 この場所のすべてと、きっぱり決別するために。 養妹の未来を整えるために、和也は自らの手で、雨子を「贈り物」として差し出したのだった。 「安心しろ。一か月後には迎えに行く。お前は変わらず俺の妻だ」 雨子の心は完全に冷え切って、彼女は偽りの死を装って姿を消した。 雨子が崖から落ち、遺体すら見つからなかったと知った瞬間、和也は激しく後悔した。 彼は狂ったように彼女を探し回ったが、どこにもその影はなかった。 一年後、南方の小さな花屋の扉を開けたとき、彼は再び雨子と出会った。 和也の目は真っ赤に染まり、膝をついて復縁を懇願した。 だが彼女は微笑みながら、どこかよそよそしく、丁寧に言った。 「申し訳ございません、さっそく閉店させていただきます。主人と帰宅しますから」
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3年間塩対応してきた夫は、離婚の話をされたら逆に泣きついてきた

3年間塩対応してきた夫は、離婚の話をされたら逆に泣きついてきた

冷凍梨スカッと後悔独立CEO・社長・御曹司天才離婚後
私と紀戸八雲(きど やくも)との結婚は、最初から秘密だった。 結婚したことを隠してきたこの3年間、私は外に言えないくらい誇れない妻として八雲のそばにいた。 外から見れば、八雲は東市協和病院第一の執刀医で、冷酷無情で、唯我独尊の存在だ。いわゆる高嶺の花である。 したし私は、ただそのそばに立っているちっぽけな麻酔科のインターン生だった。 無数の真夜中で、私はいつも1人で家でその人の帰りを待っていた。広い部屋の中、寒くてたまらなかった。 自分がもっと頑張れば、もっと優しくなれば、いつかきっと振り向いてくれると思い込んでいた。 しかし現実は無慈悲で、残酷だった。 「あの人のところにもう行かないでくれない?」私は八雲の裾をギュッと掴んで、細い声で何度もお願いをしていた。 なのに八雲ただ笑った。その笑い声から明らかな嫌味を感じた。「ただの契約なのに、紀戸の奥さんは随分役に入り込んでるね」 * 月日が経ち、八雲のあの娘の前でしか表れない優しさを見てきた。 何も言わずに、私は静かに離婚協議書1枚だけ残して、家を出た。 それから、白銀の東市で、知れ渡ったあの紀戸先生は雪に埋もれた道端で膝をついて、涙目で復縁をお願いしてきた。「優月(ゆづき)、離婚しないでくれ」 その頬からぽつりと落ちた涙は、私の目から、すでに雪のような冷たいものになった。淡々と微笑みながら、私はこう答えた。 「もしかして紀戸先生も役に入り込んでるの?ごめんね、芝居に付き合う暇はないの。契約期限はもう過ぎたわ。告白したいなら、まず列に並んでちょうだい」
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花に抱かれる彼、記憶に沈む私

花に抱かれる彼、記憶に沈む私

水の妖精切ない恋愛人ひいき/自己中クズ男不倫後悔
ネットの掲示板で、ある匿名の質問が流れてきた。 【事業が軌道に乗ったら、まず貧乏な恋人を捨てる。それって、本当に正しいの?】 たくさんの「いいね」がついたコメントには、こう書いてあった。 【当たり前じゃん!自分が一番大事に決まってるでしょ? 体しか能がない安っぽい女を捨てて、金持ちのお嬢様を捕まえれば、一気に上流階級の仲間入り。それで人生の勝ち組になれるんだから】 でも、コメント欄では【クズ男】って叩かれてもいた。 【はいはい、どうも。私がその、事業が成功した男に選ばれた『お嬢様』だよ】 コメントを投稿した人は詳細に説明した。 【あの男は私にアプローチしてきた時、ぜんぶ正直に話してくれたんだ。元カノとは5年間もボロアパートで同棲してたんだって。でも、起業が成功したとたん、その週のうちに別れたらしい。 それに、彼の元カノがどれだけバカだったか、みんな知ってる? あの女のせいで彼の会社、マジでヤバいことになりかけたんだよ。ネットでめちゃくちゃ叩かれて、業界からも干されて、もう人生オワコンでしょ。あ、そういえば、確か彼女のお父さんも心労で倒れたとか。治療費だけでも、すごい借金抱えてるらしい】 彼女は、こう締めくくった。 【だから、愛情みたいな安っぽいものだけじゃ、ダメなんだって。いざという時に、なーんの役にも立たないんだから】 私は、元カレと5年間一緒に暮らした、あのボロアパートの階段に座りこんでいた。そして、ただ何度も何度も、スマホの画面を更新していた。
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妻を3年単身赴任させた夫。離婚宣告で執着?

妻を3年単身赴任させた夫。離婚宣告で執着?

八雲詩乃 強いヒロイン浮気・不倫離婚後CEO・社長・御曹司天才
結婚して3年、安藤若葉(あんどう わかば)はずっと安藤宗介(あんどう そうすけ)の言う通りにしてきた。 新婚の翌日に盛沢市へ単身赴任させられても、若葉は文句一つ言わなかった。 3年の間、若葉は支社を盛沢市で軌道に乗せただけではない。特許を活用し、数百億円もの利益を上げた。 母親が危篤の時、若葉は休暇を懇願したが宗介に冷たく断られた。「死んでないんだろう?」と一蹴されたのだ。 若葉は意を決して戻ってみると、この結婚生活のすべてが嘘と欺瞞に満ちたものだったと知った。 自分との結婚は、宗介と初恋の人の間に生まれた子供のためだったのだ。 自分が盛沢市へ飛ばされたのも、宗介たちが邪魔されずに暮らすためだった。 さらに、自分が残していった大切な犬までもが、虐待され怪我を負わされていた。 この瞬間、若葉の心は完全に凍りついた。 退職届を出し、離婚届にサインをし、若葉は安藤家を去る決意をした。 事態を知った宗介は彼女を嘲笑った。若葉は必ず戻ってくると高を括っていたからだ。 しかし、再会した若葉は別人のようだった。あるバイオテクノロジー企業の記者会見で、若葉は開発した最新の遺伝子技術を発表していた。 そして彼女の隣には、盛沢市で圧倒的な権力を持つ大物が立っていた。 宗介がひざまずき、懇願した。「若葉、俺が悪かった。もう一度だけチャンスをくれ」 若葉はこれまでに何度もチャンスを与えていた。これ以上、宗介に渡すチャンスはない。 傍らの男性が若葉の腰に手を回し、周囲を見渡して告げた。「彼女は今、俺の妻だ」
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父と子は元カノしか愛せない?私が離婚したら、なんで二人とも発狂した?

父と子は元カノしか愛せない?私が離婚したら、なんで二人とも発狂した?

花朔離婚後現代裏切りCEO・社長・御曹司独立天才おやこの追悔
紗夜は文翔を十年間密かに想い続け、彼との結婚を「念願叶った」と信じていた。 たとえ彼が冷たい鉄塊のような男でも、自分の愛で少しずつ温められると思っていた。 しかし、現実は彼の冷たい視線と無関心しか返ってこなかった。 彼は元カノにはとことん優しく接するのに、紗夜にはまるで捨てられたゴミのように冷たく、疎ましく、蔑むような扱いをした。 それでも紗夜は全てを耐えてきた。 二人の間にはひとりの息子がいたからだ。 息子のために、愛のない結婚という牢獄に身を閉じ込め、「長沢奥様」の肩書きを守ることを選んだ。 だが、彼女が誘拐された夜、文翔は彩の傍にいて一晩中帰って来なかった。 さらに、彼女が何よりも愛していた息子までが彼女を捨て、彩を「本当の母親」だと言い出したのだ。 紗夜はその瞬間、やっと悟った。 冷えきった夫も、心の通わぬ息子も、もう要らない。 これからは自分のために生きる、と。 離婚後、紗夜はかつての夢だったフラワーデザインの道を再び歩み始め、起業して大金を稼ぎ、数々の賞を総なめにした。 恋愛は花を育てるようなもの、自分自身をもう一度鮮やかに咲かせるために、彼女は日々を生きていた。 そんな彼女の元には男たちが群がり始め、焦った元夫・文翔は目を赤くして土下座しながら懇願した。 「紗夜、愛してる......頼む、離れないでくれ......」 紗夜は冷たく笑った。 「長沢さん、もう遅いのよ」 息子が彼女の脚にすがって泣いた。 「ママ、僕を捨てないで!」 彼女は無表情のまま彼を振り払い、言った。 「ママなんて呼ばないで。私はあんたの母親じゃないわ」
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白いバラが散ったあと

白いバラが散ったあと

マリモひいき/自己中愛人切ない恋妻を取り戻す修羅場オフィスラブドロドロ展開
同窓会で、私・長瀬恵茉(ながせ えま)は彼氏に頼まれた用事を済ませて席へ戻った。 だけど、さっきまで私が座っていた場所には、もう親友の清水優奈(しみず ゆうな)が座っていた。 私のグラスも取り皿も片づけられ、新しい食器が並べられている。 まるで、最初から私なんてそこにいなかったかのように。 私に気づいた優奈が立ち上がろうとした、その瞬間―― 竹内英二(たけうち えいじ)は彼女の肩を軽く押さえた。 「どうせ俺たちが事件の話をしても、彼女にはわからないし。ここにいても愛想笑いするだけだから」 その場にいた誰一人として口を挟まなかった。 みんな知っている。 あの頃、家の事情で私は大学を中退せざるを得なかったことを。 大学時代、彼と優奈は法学部きっての名コンビだった。 数々の難事件を力を合わせて解決し、「最強のバディ」と呼ばれていた。 卒業後も二人はそろって一流法律事務所へ。 法曹界のエリートとして華々しい道を歩んでいる。 一方の私は―― 彼氏のコネでようやく事務所に入れてもらった、ただの雑務係。 私はその場に立ち尽くしたまま、何も言えなかった。 英二は私が買ってきたタバコを何気なく受け取ると、当然のように言った。 「優奈がジュース飲みたいって。悪いけど、買ってきてくれる?」 そう言いながら、一度も私を見ることはなかった。 すぐに彼はまた優奈との会話へ戻り、楽しそうに事件について語り合う。 二人の笑い声で満ちたその空間の中で―― 私は、ふいに疲れてしまった。 どれだけ必死に手を伸ばしても届かなかった人。 もう、その背中を追いかけるのはやめようと思った。
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迷子のツバメは帰れない

迷子のツバメは帰れない

三央家族ものスカッとひいき/自己中切ない恋クズ男しっかり者ドロドロ展開
六歳で視力を失った年、私・藤原安奈(ふじわら あんな)は凍え死にかけていた森川澄也(もりかわ すみや)を拾った。 目の代わりになってくれる相棒がほしいのだと嘘をついて、母に頼み込み、彼を助けてもらった。 私はこっそり、彼の耳元で約束した。 「あなたに盲導犬みたいなことをさせたいわけじゃないの。ちゃんと生きて。行きたいところへ、どこへでも行って」 けれど澄也は、私のそばに残った。母が再婚したあと、彼は私にとってただ一人の支えになった。 彼は私の成長を見守り、何年も何年も、私の白杖代わりでいてくれた。 それどころか、私の目を治すために、誰よりも優れていた絵の才能を諦め、医学の道へ進んだ。 けれど彼が眼科の名医になっても、私は相変わらず何も見えなかった。 そして私が二十五歳になった日、かつて澄也の理解者だった人が、美術界の大きな賞を受賞した。 澄也は書斎に閉じこもり、紙を破るような音だけを、かさかさと響かせていた。 感情を押し殺した声で、私への誕生日メッセージを書いているのだと言った。 嬉しくなって、彼にキスしようと近づいたそのとき、真っ暗なはずの視界に、突然コメントの列が流れた。 【安奈、いい加減気づきなよ。あいつ、自分の絵を全部びりびりに破ってる。裏には全部、『藤原安奈、死ね』って書いてあるんだよ】 【これ以上進まないで。あいつ、目の前にショートした電線を置いてる。踏んだら命がないよ!】 私はその場で固まった。それでもすぐに笑みを浮かべ、大きく一歩を踏み出した。
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彼と結婚しようとする度に必ず事故に遭う件

彼と結婚しようとする度に必ず事故に遭う件

清水澪切ない恋ドロドロ展開ひいき/自己中妻を取り戻す修羅場不倫
私・神崎明日香(かんざき あすか)と瀬名修也(せな しゅうや)が婚姻届を出すのには、いつも必ず「最後の一歩」が足りなかった。 この3年間で役所へ向かった回数は、実に30回。そのたびに、不可解な事故が起きた。 1回目は、道端で突然暴れ出したホームレスに4回も刃物で刺され、役所の入り口で死にかけた。 2回目は、スピード違反のバイクに轢かれ、手の骨を粉々に砕かれた。 3回目は、ショッピングモールの火災に巻き込まれ、炎の中心に丸3時間も閉じ込められた。 …… 周りの誰もが、修也との婚約を解消するようにと私を諭した。 それでも、私だけは決して諦めようとしなかった。 31回目の婚姻届を出そうとしたあの日、頭上から落下してきた看板の下敷きになり、ICUへと運ばれるまでは。 頭蓋骨骨折に重度の脳震盪。十数回も危篤になった。 2ヶ月間も生死の境を彷徨い、ようやく一命を取り留めた。 だが退院の日、私は修也と彼の友人が交わしている会話を偶然耳にしてしまう。 「あの苦学生のことが本気で好きで、婚約破棄したいなら、直接明日香に言えばいいだろ。なにもあんな事故を仕組む必要ないじゃないか。 あいつ、もう少しで死ぬところだったんだぞ」 修也は長い沈黙の末、重苦しい声で答えた。 「俺には選べないんだ。10年前、神崎家は俺の命を救ってくれた。そのせいで彼女の両親は亡くなった。彼女との婚約は、恩返しのためなんだよ。 でも、俺が愛しているのは小鳥遊玲奈(たかなし れな)だ。あいつ以外、誰とも結婚したくない」 自分の全身に刻まれた無数の傷跡を見つめながら、私は泣き崩れた。 私が受けてきたこれまでの苦難は、不運な事故などではなく、すべて彼が意図的に仕組んだものだったのだ。 彼が決断を下せないというのなら、私が代わりに選んでやる。
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