清楚系腹黒女をかばい続けた夫、離婚後に破産する
五年の結婚生活が、一瞬にして馬鹿らしいものに思えた。
「明日の月次報告会で、雨音に君の企画案を発表させる」夫の若林慎一(わかばやし しんいち)は顔を上げることなく告げた。
私は整理していた資料を置き、聞き間違いだと思った。
「え?」
「雨音は入社したばかりで、力を見せる機会が必要だからな。君の企画案を使う」
彼はようやく顔を上げたが、その目には議論の余地など欠片もなかった。
「あれは私がコンテスト用に準備した作品よ」
「どうせ君は毎年賞を取ってるんだから、今回ぐらい譲ってやれよ」彼の口調はあまりにも軽く、当たり前のことを言うかのようだった。
「それに、会社は新人を育てる必要がある」
私は目の前にいる五年間ベッドを共にしてきた男を見つめていると、急に彼の顔がぼんやりとして見えた。
「この企画のために私がどれだけ徹夜したか分かってる?それを入社したばかりの新人に渡すって言うの?」
「雪乃、そんなにケチケチするなよ。企画案の一つぐらいで」
彼は表情を冷ややかにした。「もう決めたことだ」