その愛は、二度と春を迎えない
ヒット作連発作家ドロドロ展開逆転ひいき/自己中偽善スカッと妻を取り戻す修羅場
婚約者・三浦悠生(みうら ゆうせい)の不妊に振り回され、長い年月と大金を費やして治療を続けた末、私はようやく、跡取りを切望されていた彼の子を授かった。
けれど結婚式の前夜、ローカルで話題になっている投稿が目に飛び込んできた。
【今日もクールな社長に特別扱いされちゃいました!】
動画の中で、結城陽菜(ゆうき ひな)は愛嬌たっぷりに語っていた。
「社長って普段はすっごく怖いんですけど、会議中にこっそり机の下で靴を踏んじゃったんです。そしたら笑ってこっちを見てきて、あとでメッセージで『こら、ふざけるな』って送ってきたんですよ!」
コメント欄はすっかり盛り上がっていた。
【え、これもう完全に脈ありじゃん!氷の社長がデレるの、陽菜ちゃんにだけでしょ!】
【社長の身につけてるものチェックして!陽菜ちゃん専用の匂わせアイテムとか絶対ありそう!】
さらに下へスクロールすると、投稿者の返信に一枚の写真が添えられていた。
そこには、鈍い銀色のネクタイピンが写っていた。陽菜の胸元に留められている。
【これ、彼がくれたプレゼントなんです。これを見るたびに俺を思い出せ、って言ってくれました】
私はそのネクタイピンを見つめたまま、しばらく黙り込んだ。
それは、私・九条彩葉(くじょう あやは)が悠生のために自分の手で磨き上げた、婚約の贈り物だった。
そのピンの内側には、今も私と悠生の指紋を重ねて作ったハートが刻まれている。