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4.卑しい踊り子の血を引いているではありませんか。

last update Last Updated: 2025-06-02 16:49:16

私は昨日のメイとの話を部屋で整理していた。

一番驚いたのは私のこの世界の母にあたるミリア・アーデン侯爵夫人が、皇后陛下の妹君であり、つまりはアランは私の従兄弟にあたるということだ。

「まったく、どこのハプスブルグ家よ」

6歳近くも年下の従兄弟と結婚なんて自分の価値観とは離れすぎていて、

エレナはよく受け入れていたものだと思った。

そして、アランと婚約する前はライオットが侯爵邸に度々訪れていたらしい。

「お嬢様、メイには分かっておりましたよ。ライオット様といらっしゃる時ご無理をされているということ。政略的なものとはいえお嬢様のような完璧なお方があのような下賎な血筋のものと結婚だなんてありえませんもの」

彼女は差別意識が強い人のようだった。

「ライオット皇子殿下は皇族よ」

皇族に対して、平気で侮辱するのは酔っているとはいえ危ない。

「卑しい踊り子の血を引いているではありませんか」

メイは平民でありながら、平民の血を嫌悪しているように思えた。

「お嬢様、私はお嬢様にどこまでもついていきます」

そして、エレナにものすごく心酔している。

私の住んでいた世界では、差別は恥ずべきことだった。

その価値観が染み付いている私には、メイの発する差別意識の染み付いた言葉の数々は居心地が悪かった。

なぜ、他に爵位を持つメイドやベテランのメイドがいるのにメイがエレナの専属になったのか疑問だった。

エレナが12歳の時にメイを専属のメイドに指名したらしい。

おそらく私が違和感を感じる彼女の価値観はエレナにとっては心地よかったのだろう。

そうでなければ、酔っていたとはいえ皇族の血を咎めたりしない。

ライオットの血筋を卑しいと感じるであろう差別主義者。

それが、メイから見たエレナなのだ。

アランの兄であるライオットと婚約するはずだったのに、6歳近くも下の従兄弟と結婚というのは彼女にとって納得のいくものだったのだろうか。

婚約当初12歳のエレナが6歳のアランに恋するとは思えない。

親に言わ
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