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恋のマッチアップ6

Author: 相沢蒼依
last update publish date: 2025-12-11 07:49:13

***

最後の講義が終わって教室を出たら、躰を左右に揺するように前を歩く、加賀谷の背中が目に留まった。

このままついて行ったら、アイツのあとを追いかける形になる。それが嫌だったので、歩くスピードを思いっきり落としながら体育館に向かう。

のらりくらりと歩いて、階段を下りた先にある体育館の重い扉の前にたどり着いた。中からリズミカルな音が、響いた感じで聞こえてくる。それは聞き慣れた、バスケットボールをドリブルする音だった。

ダンダンダン、シュッ!

その場に突っ立ったまま、そっと目を閉じる。しばしの間の後にゴールポストに吸い込まれるボールの映像が、まぶたの裏に流れた。

黄金のレフティから放たれるボールは、絶対に外れることはない。イップスという不治の病にかかった、俺とは違う。彼は選ばれた人間なのだから。

意を決して勢いよく扉を開け放つと目に映ったのは、ジャンプしてボールを手放す、まさにその瞬間だった。

ちょっとだけ襟元がくたびれたTシャツにジーンズといういでたちの加賀谷の姿が、オレンジに濃いブルーのラインが入った、バスケ部のユニフォームを着ている錯覚に陥る。

俺が突然現れたこ
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  • BL小説短編集   バレンタインラプソディ・イン・ドライヴ6

    「江藤さんの場合、女ばかりの行列に並んだとしても、違和感があまりないと思うんだよね。そこにいるだけで、絵になるからさ。きっとお客さんのために買うのかしらなんて思われて、自然とスルーされるんじゃないかな」 のろけまくる弟の話を聞いて、宮本の口角が自然と上がっていった。「だよね……。江藤ちんは俺と違って格好いいから、たとえ下着売り場にいたとしても、彼女のものを買うと思われて、自然とスルーされそうだ」「兄貴の例え話、なんだか極端だなぁ。だけど俺たち兄弟が江藤さんが平気なところに顔を出しても、女性客にスルーされないことくらいは分かる」「佑輝、すっごく美味しかったって言ってたよね。江藤ちんから貰ったチョコレート」 昨年わざわざ電話を寄越すなり、ここぞとばかりに自慢されていたせいで、強く印象に残っていた。「うめぇってもんじゃなかった。もんのすごく美味って感じ! チョコレートの味が濃くてさ、それが口の中で溶けていく感じがまろやかで甘すぎなくて、躰が震えちゃうくらいに美味しかった」「へぇ、そんなに美味しかったのか」「うん! 江藤さんに言わせると「芳醇なカカオの香りが……」って、テレビに出てくる美食家みたいなことを言ってたっけ。忘れちゃったけど」 一番聞きたいことを忘れた弟に、宮本はできの悪さをひしひしと感じた。「今年は、どうするんだろうな」「マメな江藤さんのことだから、二年連続で同じ店のものを贈るなんてことを、絶対にしないと思うんだよね。決算期で仕事が忙しいのに休日を使って、きっとどこかのお店に並んでるような気がする」「そっか。ふたりは相変わらず、うまくいってるんだな」「……実は、そうでもなくて」「喧嘩するほど仲がいいっていうだろ?」(そういえば最近、江藤ちんからの愚痴メッセや電話が着ていないな――)「喧嘩というか、そういうんじゃなくてさ。この間、江藤さんの実家に顔を出したんだ。ものすごい勇気を出しまくった」 一度は逃げてしまった挨拶の場に顔を出したことを、心の中で賞賛しまくった。口に出すとすぐにつけ上がるので、あえて言葉にしない。兄として、弟のコントロールはバッチリなのである。

  • BL小説短編集   バレンタインラプソディ・イン・ドライヴ5

    ***(佑輝が江藤ちんとイチャイチャしていないことを祈って――お助けコール!) 宮本はスマホを思いってタップし、弟を呼び出す。数秒後にあっさりと繋がり「もしもし、兄貴。珍しいね」なんていう、のんきな声が耳に届いた。「今、大丈夫?」「うん、平気。もしかして恋人と喧嘩でもしたの?」 ズバリと切り込んできた弟の問いかけに、宮本の頬が一瞬引きつった。「喧嘩はしてないよ。だけど電話の理由が、恋人繋がりだというのを外してない。佑輝、すごいな」「すごくないって。友達の江藤さんじゃなく、俺に電話してきたことが結構驚きだよ。いったいどんなこと?」 興味津々な様子が、電話の向こう側からひしひしと伝わってきた。「実はバレンタインのことで、相談したくて………」「バレンタイン?」「そう。佑輝さ、甘いもの苦手だろ。それなのに昨年江藤ちんにチョコを貰ったって聞いてたから、どこのメーカーのものを食べたのかなって。俺の恋人も、甘いものが苦手な人だから」「あ~、なんか理解。江藤さんに相談したら、ここぞとばかりに冷やかされそうなネタだもんね」 ウシシッという下品な笑い声をあげた弟に、内心ドン引きしつつも、縋る気持ちを込めて返事をする。「だからこうして、佑輝に相談してるんじゃないか。頼むよ、教えてくれ」「その店のこと、電話が終わったらアプリ経由で詳しい場所とか教えてあげるけど、果たして兄貴にできるかどうか……」 うーんなんていう唸り声を出した弟の態度で、嫌な予感がした。「どういうことだ?」「江藤さんから貰ったチョコ、そこら辺のお店で売ってるものじゃなくて、有名なチョコ専門店で売ってる商品なんだよ。それこそ、行列ができるようなところなんだ」「行列……。しかもバレンタイン時期だから――」「そうそう、キャピキャピしてる女子高生やOLがこぞって並んでる場所に、厳つい兄貴が並んだりしたら、ものすごく場違いだろうね」「そんなところだというのに、佑輝のために江藤ちんは並んで買ったのか」 友人の愛の力をまざまざと思い知り、尻込みしかけた自分が恥ずかしくなった。

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    「そんなんじゃねぇって、そこまで執着してないし」「執着、いい言葉ですよねぇ。橋本さんは気づいてるんでしょ。宮本さんがどんどん格好よくなってること」「イケメンの恭介が褒めても、信ぴょう性がないぞ……」 そんなことを言ったものの橋本自身にも心当たりがあるせいで、語尾にいくにしたがって声が小さくなった。「はじめて逢ったときの宮本さんと、橋本さんと付き合いだしてからの宮本さんを比較したら、明らかに垢抜けた印象ですよ。優しい性格が雰囲気で伝わるから、女性受けしそうな気もします」「恭介、何が言いたいんだ。雅輝のいいところくらい、俺だって分かってるのに」 会話の最中に信号が青に変わり、アクセルを踏み込む。橋本は周囲の車の流れを気にしつつ、ルームミラーに映る榊の顔色を窺った。「ダブルデートしたときは、宮本さんを名字で呼んでいたのに、今は下の名前で呼んでますよね」「そうだったか?」「和臣ラブの俺にまで牽制するなんて、橋本さんってば可愛いなぁ」 ハンドルをぎゅっと握りながら、必死になっていいわけを考えた。肯定しても否定しても、宮本にぞっこんだというのを証明しそうで、安易に口を開くことができない。「……ったく、そんな細かいとこに気がつくなんて。余計なお世話だ、クソガキ!!」「アハハ。マンション探しに協力しますから、怒った勢いで俺のオデコを叩かないでくださいね」 そろそろ榊が住むマンションに到着する。先手を打ったのか、何かあると教育的な指導になっている、オデコの殴打を止める言葉を告げられた。「叩かないから真面目に頼む。よろしくな」 橋本はいつものようにマンション前にハイヤーを停車させて、振り返りながら苦笑いを浮かべた。「よろしく頼まれました。早く橋本さんが宮本さんをひとりじめできるように、精いっぱい尽力しますよ。それじゃあまた明日!」 眩しいくらいの爽やかな笑みを振りまき、車から降り立った榊の背中を、橋本は無言のまま見送った。(恭介に図星を指されまくりで、頭が上がらないじゃねぇか。和臣くんネタでやり返そうと思っても言葉がひとつも出てこないなんて、情けないにもほどがある……)

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    「へぇ! 橋本さんが宮本さんと一緒に暮らすマンション探しに、そこまで苦労していたなんて。もっと早く、相談してくれたら良かったのに」 橋本がハンドルを握るハイヤーの車中で、仕方なくこぼした言葉を聞いた榊は、ここぞとばかりに満面の笑みを浮かべた。「俺としては、恭介が住んでるマンションに住みたいところなんだけどさ」「ですよね。行きも帰りも一緒なら、お互い楽ですし」「残念なことに、雅輝のデコトラを駐車するところがないんだ」「あ~、確かに……。近場には見当たりませんね、うんうん」 いつもより反応が淡白な榊の返答に違和感を覚えた橋本が、ルームミラーで背後を見ると、熱心にスマホを弄っている姿が目に留まった。「おまえ、もしかして地図で探してくれてる?」「それは10秒前に済んでます。今は駐車場を管理していそうな、顧客に目星をつけてるところで……。チェックするお客様は、わりと限られる感じです。橋本さんの力になることができたらいいんですけど」(仕事早っ。俺が頼む前に、恭介自ら動きだしちまうなんて)「恭介、サンキューな。自分の手で探したかったのに、さっぱり上手くいかなくて」「俺としては橋本さんの行動力に、結構驚いているところですよ」「何か変なところでもあるのか?」 目の前の信号が、タイミングよく赤になった。橋本は振り返って榊を見つめたら、胸ポケットにスマホをしまうところだった。「宮本さんと進展するまで、うだうだして時間をかけているのを見ていたから、付き合いも慎重にいくかと思っていたんです。同居するマンション探しに奔走する、橋本さんが意外だなぁって」「それはただ単に、行き来するのが面倒になっただけだ。それ以上も以下もない」 眉間に皺を寄せた橋本に、榊は口元に意味深な笑みを湛えた。「またまたぁ、そんな心にもないこと言って。宮本さんを、ひとりじめしたいだけなんでしょ?」 厄介なやり取りになる前にと橋本は慌てて前を見据え、信号が変わるのを待った。

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    「ったく……。雅輝のせいだっていうのに」 橋本がチラシを真剣に眺めて検討していると、隣にいる宮本の太い二の腕が腰に回される。『何か掘り出し物でもありましたか?』 顔を寄せてきたと思ったら、頬にキスを落とす。「真面目に探せって。この物件良さげなんだけどさ、青空駐車場が歩いて30分くらいかかる場所なんだ」『俺は別にかまいませんよ』「駄目だ。疲れた躰を引きずって、30分も歩かせるわけにはいかない。絶対に次の日に響いちまうだろ」 トラック運転手の仕事のつらさを知っているからこそ、宮本の躰を考えて探していた。それなのに――。『俺ってば陽さんに超愛されてますね、嬉しいなぁ』 橋本が持っているチラシを奪取し、がばっと抱きついて頬擦りしてくる。「ぉ、おい!」『陽さんに愛を返したいです。いいでしょ?』 反論を防ぐような笑みや、行為を断れないような潤んだまなざしに、橋本は簡単に押し倒されてしまったのだった。(縋ってくる感じの捨てられた子犬みたいな目は、絶対に反則だろ) しかもそれを無意識に発動させて、抵抗する橋本の動きを止めるあたり、天才的だと思わずにはいられない。 年上で腕力を伴うことなら橋本が絶対的に上なのに、それを易々と無力化する宮本の能力の恐ろしさを、改めて思い知った。「大好きな雅輝に殴る蹴るなんてことは、俺にはありえないしな。参った……」 参ったついでに、引越しのことを第三者に相談してみようと考えた。 一番手っ取り早い人物、それは――。

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    ※ここからお話を現代に戻します(^_-)-☆  隣から聞こえてくる宮本の寝息を橋本は愛おしく思いながら、閉じていた瞳をゆっくり開き、壁にかかっている時計に視線を飛ばした。「ぐっすり寝たと思ったのに、まだ6時前じゃねぇか。睡眠時間4時間で目覚めたくなかった……」 シルク素材でできたパジャマの袖を意味なくにぎにぎしながら、小さな声で呟いた。 宮本とお揃いのパジャマは色違いで、つい最近購入したばかりのものだった。ちなみに橋本はグレーで、宮本は濃紺。今まで揃いのものを買ったことがなかったのもあり、最初の内は身に着けるたびに、ふたりで照れてしまった。 ちなみにこのパジャマを購入した経緯は、朝方目が覚めた宮本が全裸で背中を丸めて眠る橋本を見て、思わず欲情したことだった。 本人曰く『あまりに可愛い陽さんの寝姿に、襲わずにはいられなかったんですぅ』という言葉のままに、エッチなことをはじめてしまったせいで、橋本の出勤時間が過ぎそうになった。 そんな宮本の暴走を防ぐためのパジャマだったりする。『脱がす手間があるのも、またいいかも☆』なんていうセリフは、聞かなかったことにして……。 橋本とイチャイチャしようと毎回試みる、宮本の存在は無視して、現在一番困っていることは、一緒に暮らすマンションがなかなか見つからないこと――集めたチラシを広げたり、ネットを検索して昨夜は遅くまでふたりで膝を突き合わせて語り合った。(とはいえ、語り合った時間の半分はイチャイチャしていたんだから、肌を合わせていたという言葉のほうが適切かもしれない) イチャイチャせず真面目にマンション探しに時間を当てたら、間違いなく早く決められるだろう。そして二番目にネックになっているのは、マンション近くに宮本のデコトラを停められる駐車場がないことだった。

  • BL小説短編集   両片思い4

    「ああっ、ヤバぃ」『それでもずっと好きでいられるのなら、恋人にしてやってもいい』「んっ…は…ぁっ、もっイキそう」『やれやれ、子どもには刺激が強かったか』 触れていた先生の右手があっけなく外され、腕を組んでそれを隠した。その態度でイクまでやってくれと強請っても、触れてはもらえないことが分かった。 寸止めを食らった当時の俺は、涙目で荒い呼吸を繰り返しながら、隣にいる愛しい人を睨むのがやっとだった。『とりあえず俺の恋人になりたければ、志望校に合格は必須だからな。晴れて合格したら、キスすることを許してやってもいい』「キス……?」『ああ、お前が好きなときにしていい権利だ。ただし、それ以

    last updateLast Updated : 2026-03-19
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    ☆∮。・。・★。・。☆・∮。・★・。「あ……っは…ぁ、ん…っ」 したたかに酔った勢いをそのままに、ベッドに全裸で横たわって、熱く火照った躰を慰めていた。「ぁあ…ふ…ぁも…いれてっ…壮馬、んっ…は…ぁっ……!」 自分の指じゃ物足りない。もっと太くて固いのが欲しい。しかも奥深くに――。「あっ…ぅんっ、もっとっぉ」 室内に響くローションの卑猥な水音が大きくなっても、中途半端な快感ではなかなか満たされなかった。「おいおい、ワインのボトルを全部飲み干して…ってちょっ! いきなり何やらかしてるんだよ!?」 ベッドルームに入るなり、変な声をあげた壮馬の顔は、一瞬で真っ赤に変わった。「お前

    last updateLast Updated : 2026-03-20
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    「坊ちゃんの誤解を解きたい」「何だよ、いきなり」 不機嫌な感情を表す声を聞きながら、自分の手首を掴んでいる壮馬の手の甲を、反対の手ですりりと撫でてやった。「確かに隣の課の女性には、よく話しかけられていた。その理由は新入社員のお前に、一番深くかかわっている上司だからだ」「イケメンで仕事のできる、白鷺課長を狙ったんじゃなく?」「ああ。会社の次期社長候補であるお前の情報を仕入れるために、俺に接触してるってところさ」「ケッ! くだらない。そんなもん、さっさとあしらえばいいだろ」 掴んでいる俺の手首を放そうと力が緩んだのが分かったので、甲を撫でていた手で壮馬の手をぎゅっと握りしめた。「

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    カールがぶるぶる首を横に振って拒否したので、動きを止めてやった。「カール、早く言わないと――わかるよな?」「あまり……ふぅ、私を虐めないでください。我慢するのが、本当につらいんです」「俺だってつらいんだぞ。お預け食らったままなんだからな」 綺麗なカーブを描いた頬に、キスを落とした。唇に感じるカールの皮膚はすごく熱く、恥ずかしがっているのがわかる。「申し訳ございません。あのですね」「うん?」「私が過去の気持ちを告げることで、アンドレア様が不快に思われ、嫌うなんてことを」「嫌わない、むしろ好きになるかもな」 言いながらぎゅっと腕に力を込めて、カールを抱きしめてやった。カールは

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