تسجيل الدخول門まで行った、その光景。
塀で囲まれた部分と、門のすぐ外。
さっくりと切り取られたようになって、その先に地面がない。
(まさか?!)
その、まさかだった。
恐る恐る切り取られた先を見下ろすと、下には緑のもこもこ。森だ。
つまり……浮いている!
「うっそ、本当に……」
盗賊団の皆さんも、ぼくと同じ思いだったらしい。
「本当に空を飛ぶとは……」
「嘘だろおい……」
「なんで……」
呆然とした声が空に流れていく。
真下の山肌に洞窟が見えることから、今はこの町は真上に浮いているようだ。
それだけでとんでもない話だ。
しかも、それがぼく一人のスキルで。
レベル1、Maxの力で。SSランクの町に相応しくないと追い出された力で。
この方向は……。
「わ、ストップ、ストップ!」
明らかにエアヴァクセンへ向かい出したので、慌てて声に出して止める。
風景が流れなくなったのを確認して、ぼくは胸をなでおろす。
「よかった~……焦った~……」
「クレーくんの思った通りに移動することも出来るんだ……」
「すごいな。世界中を回ることだって可能だ」
「えー、なんで? なんでやめるの?」
アナイナが不満げに声をあげた。
「町長に見せびらかすチャンスなのに」
「今行ったら空の飛べる人たちに乗り込まれて町を奪われて終わりだよ」
アパルさんもうんうんと頷く。
「捨てて逃げて、もっといい町を造ればいいじゃない」
「クレー君が造って動かせると知れば、
「分かった。うん。お兄ちゃんをエアヴァクセンに行かせちゃいけない」
アパルさんの説明でやっとアナイナが納得してくれた。
アナイナが納得するなんて、さすがはアパルさん、勉強好き。説得が上手い。
「あのさ」
ぼくは恐る恐る声をあげた。
「一つ、いい?」
「勿論」
「本当に、町にしない?」
アナイナ以外全員年上、町から追い出されて苦労した人たちを前にこれを言うのは度胸が要った。でもぼくは言った。
「この町はランク外。だから、紹介状もランク確認もいらない。この町に住みたいって人を集めて、エアヴァクセンよりも立派な、エアヴァクセンのみんながこっちに来たいっていうような町にしよう。そうすればあの町長を見返せる」
「おお!」
「いいな、それ」
「賛成!」
「勿論納得だ」
「いいと思う」
みんな、ぼくの意見に賛成してくれた。やっと成人になったばかりのぼくの意見を。
「もちろん町長はお兄ちゃんだよね!」
「アナイナ!」
「えー? だって、町を造ったのも飛ばせたの、町にしようって言ったのもお兄ちゃんじゃない!」
「ヒロント団長とか、アパルさんとか、大人でいい人がいるじゃないか!」
「ああ、団長と言う呼び名はやめてくれ」
「ヒロントだん……じゃなかった、そうですよね、町長になるんだから」
「いいや? 儂は長老になる」
「え?」
「こんな先のない年寄りに町長の座を任せても、すぐに入れ替わるだけ。ならばアナイナさんの言う通り、クレー君が町長になるのが一番いいと思うぞ」
「私も長なんてガラじゃないよ。それより君の補佐をしたいね。私の頭脳でどこまで行けるかは分からないが」
「え? え?」
「あんたが造った。あんたが飛ばした。あんたが望んだ。あんたが町長にならなくてどうするんだ」
「シエルさん?!」
「ボクも賛成。
「マンジェさんも……」
「第一俺たち盗賊から足を洗っても傷のある身には変わりない。盗賊町長なんて言われたらたまったもんじゃないしな」
「ヴァダーさん」
「ね? みんなお兄ちゃんがいいって言ってんの。ここはこう、覚悟を決めて、どーんと! 町長になろうよ、ね?」
「どーんと、と言われても……」
「ほら、そこで引っ込むのがお兄ちゃんの悪いクセ! 今ここに居る人たちは全員お兄ちゃんがいいって言ってるでしょ!」
そうそう、とヒロント団長……じゃない、ヒロント長老が言った。
「みんなで
「う……」
みんな、ぼくを見ている。
ぼくが町長になると信じて疑わない目で。
ごくり。
ぼくは唾を飲み込んだ。
「……みんな、協力してくれる……?」
「ああ」「当然」「決まってるだろ」
色々な言葉が返ってくる。
「じゃあ、まずは名前を決めなければ」
大げさな物言いが得意のシエルさんが口を開く。
「町長、初仕事じゃ。町の名前を決めてくれ」
いきなり長老に難問を突き出された。
「うーん……うーん……」
昔話で出てきた名前を口にした。
「グランディール」
成長とか、そういう意味の古語だったと思う。
「グランディールか。いいな、響きがいい」
シエルさんは、胸を張り、歌うように宣言する。
「おおグランディール、我らが町よ、何処までも飛んで何処までも人を魅了せよ」
「そうだな、グランディール家という家があるとしよう。その家で君は父親。家の主だ」 よくわからない話に持っていかれたような気もするけど、とりあえず頷いておく。「町民は子供。父親は子供を養う義務を負う」 うん、それは分かるけど。「他の町は友達だとしよう。友達だったら、時々晩御飯の御裾分けとかが来る。子供が遊びに行っても怒らず相手してくれる。時々家族で遊びに来たりもする。近所の家とも遠くの家とも仲良くしている」 それがどうだっての?「この友達の家の一つの父親を無理やり引っこ抜いて、残った子供を家族にする。するとどうなる?」「そりゃあ、その家の父親抜いちゃったんだから、ぼくが養わないといけないだろうね」「そう。君は急いで稼ぎを増やさなきゃいけない。稼ぎを増やすこと自体はグランディール家にとっては難しくはないかもしれない。だけど、もう一つ問題が起きる」「?」「父親が大好きだった子供たちから、父親を無理やり引っこ抜いて家族にしてしまった。お父さんがいないから今日から自分をお父さんと呼べと言った。今まで友達のお父さんだったのに突然自分のお父さんになってしまった。認められるか?」「無理だよね」 ぼくも父さんが突然いなくなって別の人が父さんだよって言って来たら、父さんを探して家を出るだろうな。 あれ……。 あれ……? あ!「そう。子供が納得しない。納得せず父親を連れ戻しに行ったり家を出たりするだろうね。そして、他の家も、それまで仲が良かったのにいきなり父親を追い出して子供を家族にした家と、いつものように仲良くできるかい? 今まで友達だった子供が兄弟になると言われて納得できるかい?」「うん、無理だね。そりゃあ、無理だ」 二人の言いたいことがやっとわかってきた。「それに、それまで友達だった家も、いつ父親を引っこ抜かれてグランディール家に連れていかれると思ったら、友達付き合い出来なくなる」「そしてみんな離れて行く、あるいは敵に回る。そういうこと?」「ああ」 スピティの町民は水路で喜んでくれたけど、それと引き換えにスピティじゃなくグランディールになれって言ったらどう思ったろう。 周りの町も、町長が来て何か教えると町を併合されるなんて言われたら、歓迎はしなくなるだろうなあ。 そうなると味方がなくなる。 町の人数が少し増えるのと引き換えに、周り
「しかし、どれくらいの人数が必要?」 ぼくの問いに、アパルが眉間にしわを寄せる。「それが分かれば苦労はない……だけど、町長の力をフォローするには、かなりな人数が必要になると予測できる」「空を飛ぶだろ? 人間を地上と町へ行き来させるだろ? 家や施設が建つだろ? 土地が広がるだろ? 勝手に家具や服が出来るだろ? 素晴らしい陶土が出るだろ? あとなんだ?」 指折り数えるサージュ。思えば結構無茶な力技をしてるな、この町。「それだけのことを一人のスキルで賄ってるんだから恐ろしい」「伝説になり損ねた町は町長の死後やんわりと滅びて行ったけど、グランディールは町長が弱り出したら一気に行きそうだ」「なんで?」「お前の力技でこの町はもってるんだ、お前の力技が出来なくなったら、それっきりのアウトになるのが目に見えてるだろが」「え、ぼくのせい?」「というか、この町自体がお前に頼りきりなんだ。この町を滅ぼすのは簡単、お前一人をどうにかすればいい。ミアスト辺りがこのことに気付かなければいいが」「じゃあ、ぼくが前に拉致された時は……」「大ピンチだったんだ。お前は町民……俺たちやシエルがいれば何とかなると思っているようだが、実際の所俺たちはいくらでも替えが効く。町にとって替えが効かない才能を持っているのはお前一人なんだ」 ぽかんとしていると、アパルが溜息をついて手を伸ばし、ぼくの髪の毛をくしゃくしゃにした。「自覚を持ってくれ町長。この町も、町民も、お前がいなきゃ砂の城。あっという間に波に削られて消えてしまうんだ」「……ぼく、そんな大げさなことをしたくて町を造ったんじゃないけど」 ただ、ミアストを見返してやりたかっただけで。 ぼくのスキルが無意味ではなかったと思い知らせてやりたかっただけで。「なら、大げさになりそうだから町を捨てるか?」「冗談じゃない!」 サージュの一言に、ぼくは頭に血が一気に上って思わず怒鳴ってしまった。「ぼくだけならそれでいいかもしれないけど、ぼくはここにいる人たちを守る責任がある! 思い通りにならなかったからって捨てることは出来ない! それじゃあ、ミアストと一緒になってしまう! 町の評判を自分の評判と勘違いしているあいつと!」「分かった、言いたいことは分かったから落ち着け」 サージュがぼくを宥める
「一代で終わった町って言うのは、どんな感じなの?」「うん、多分お前も予想していると思うが……」 サイドデスクに置かれた本をサージュは指差す。「設立した町長のスキルの効果範囲が広い町だ」 一瞬、部屋に静寂が満ちた。 エキャルの羽音すら聞こえない。「……「まちづくり」みたいに、ざっくりした町だね」「ああ」 サージュの指先にある本には、「滅び逝く町」と書かれている。「「富める強国」ディーウェスのスキル研究家プラーグマ・ファクトゥムが研究した、素晴らしいと誰もが言ったのに一代で滅びたいわゆる「伝説になり損ねた町」について書かれた書だ」 ディーウェスは三百五十年前から五十年前まで続いた、身近な伝説、SSSランクの町だ。まだディーウェスの偉大さを覚えている人もいる。畑仕事担当で元エアヴァクセン盗賊団団長、ヒロント長老は、小さい頃にディーウェスの住民と話す機会があったらしい。ディーウェスの知識を教えるためにやってきたその人に、ディーウェスはどんなところ? と聞いたら、「みんなで作った楽園だよ」と答えてくれたらしい。長老は「今はグランディールが儂にとってのディーウェスだよ」と笑って言ってくれたけど。 そんな町に住んで、存分にスキル学を学んだ人が書いた書。「伝説になり損ねた……」 まさしく、このまま放っておいたらグランディールが辿るかも知れない道だ。「フォーゲルは鳥の本しかないと思っていたが、珍しい本もあったもんだ。スキル学を政治に役立てず、更にただ真実を知りたいと志すような物好きが手に取る本だからな」「アッキピテル町長には……」「許可を得てるよ。町長になってからスキル学の本も集めたけど自分しか読まないからどんどん読んでくれとさ」 アパルもサージュも椅子に座って、目線で読めと促す。 「滅び逝く町」にはしおりが二枚挟んである。「ここを読めってこと?」 二人が頷くので、そのページを開いてみる。 幸いなことに、ぼくに読める字で書いてあった。 『夢幻の町トラオム』 聞いたことがない。 続きを読む。 『万能のスキルと謳われたエニュプニオン・ソムニウムが一代にして作り上げた町。夢のように素晴らしい町、SSSランク、全ての町が手本にした町だが、エニュプニオン亡き後、誰もそのスキルの後継になれず、文字通り夢幻と終わってしまった町で
アナイナはとりあえず御見舞いに来ない、らしい。 ヴァリエは……どうやら女性陣が説得してくれたらしい。シートスから「弱っている姿を見られたくないという言い訳で大人しくなってくれたので、とりあえず寄ってほしくない時は弱った振りをして追い払ってください」と言う手紙が来た。 なるほど、騎士の主は弱ってる姿を見せてはいけないものなのか。 最近はヴァリエも大人しくなったけど、初対面の時の正体不明ストーカーの戦慄の恐怖はまだ残ってる。逃げ切ったと思ったら町の中から声がした時は、正直、心臓止まるかと思った。 その襲来がないというのだから、安心して本を読みながら考えに浸れる。 アパルが貸してくれた、伝説の町の本。 エキャルをモフりながら読んで、色々考えてみる。 伝説の町が初代で潰れなかったのは、仮住人が目覚めたスキルにあるかも知れない。 例えば空飛ぶ町ペテスタイは、出来てから五・六年後の子供たちには、浮遊や飛行と言ったスキルが多かったという。町長亡き後、彼らが町を飛ばし続けたとか。 そう考えてみると、確かに町によって、発生しやすいスキルはある。 エアヴァクセンは最近はめっきり減ってしまってはいるけれど、その昔は「鑑定」が多かったという。ファヤンスは陶器関連に偏っているし、フォーゲルは鳥に関連しないスキルの持ち主はいないんじゃなかろうかってくらい。 ところが、グランディールにそれがあるか分からない。 ……まだできて一年も経っていない町に判断材料がないってだけのことなんだけど。 一番最初がアナイナで半年後……くらい? その次は五・六年間が空くから、生まれやすいスキルの傾向が全然見えない。十年くらい経たないとはっきりとはしないという。 ……十年後に考えろって話だよな。 でも、今、気になってるんだから仕方ない。 気になったことは気になった時に聞いたほうがいい。後回しにすると聞く機会がなくなっているかも知れないから。 それに、アパルやサージュと町に関する疑問や心配を共有することは、将来のグランディールにとっていいことだと思う。 予想できる不安を早め早めに取り除く。それは町が長く続くのに必要なことだと思うから。 ◇ ◇ ◇「おーう、大人しくしてたか」 サージュとアパルがやってきたのは、相談してから三日後のこと。「
エキャルをモフりつつ、アパルが持ち込んでくれた娯楽本を読んだりして時間を潰す。 時々スヴァーラさんに御見舞いの手紙を書いて、それをエキャルに持たせたり。 スヴァーラさんからは、気にかけてくれてありがとう、エキャルが来るとオルニスも喜んでくれるので嬉しい、体は順調に回復しているし、モルやミアストの目がないというのは安心できるけど、時々自分が助かったのを知っているんじゃないかという不安に襲われる、という手紙が戻ってくる。 この不安ばかりはどうしようもないので、フォーゲルのお医者さんにメンタル面も見てあげてくださいと頼んである。 時々、青色の小さな羽根が手紙についてくる時もある。オルニスの羽根で、オルニスも元気ですよ、と書いてくる。 小さい頃、青い小鳥が幸せを運んでくるという話を母さんから聞いたことがある。 幸せを運んでくる青い小鳥と、その子が大好きな飼い主。 これは、揃って幸せになれないとダメだよな。 フォーゲルを選ぶかもしれないし、グランディールに来るかもしれない。どっちに行くとしても、小鳥の健康は保証するとアッキピテル町長は言ってくれた。 鳥の町フォーゲルは、鳥に好かれている人、鳥に愛されている人を無条件に気に入って、手を貸してくれる。スピティへの展示即売会には来ていなかったけど、フォーゲルで伝令・宣伝鳥売買をしているパサレ・ティールから、ぼくたちが鳥を買いに来た時の印象なんかを聞いていたんだろう。最初の手紙の返事から丁寧だったし、アッキピテル町長にグランディールを案内した時、宣伝鳥の面倒を見ていた鳥飼ティーアを認めてくれたのか、エキャルラットのぼくへの懐きっぷりを認めてくれたのか、その両方か。とにかくグランディールと言う町を高く評価してくれて、Cランクの町を対等に扱ってくれている。そして同じようにスヴァーラさんにも親切にしてくれている。 鳥が懐くのはいい人。鳥に嫌われるのが悪い人。そんな分かりやすい判断基準だけど、鳥のことを何より知っているフォーゲルではそれが一番分かりやすい人間評価だ。 ……もちろん食用の鳥もある。 卵だけを取る鳥だけじゃなく、鳥肉になる鳥もある。 それでも、その鳥の命に感謝して食べろ、とフォーゲルは言う。 命をいただくのだから感謝すべきだ、それが出来ない町には売らない、というのがフォーゲルの主張。 フォーゲルか
「五代、もつか?」「何故、そんなことを?」 聞いてくるアパルとサージュに、ぼくは最近思い付いてから頭を離れなくなった疑問を口にした。「この町、空を飛んで、勝手に家が出来て、土地が広がって、家具や服が出来て、お湯が循環して。これ、ぼく一人のスキルだよね」「ああ」「じゃあ、何かの理由でぼくがいなくなったら、この町は立ち行かなくなっちゃうんじゃないかと思って」 はっとサージュとアパルがぼくの顔を見て、それからお互いの顔を見合わせた。「グランディールがSSSランクに行ったとしても、ぼくがいなくなった途端に滅んじゃったら意味がない。町が続かないといけない……それには、ぼくのスキルを肩代わりしてくれる誰かがいないといけないんだ。だけど、「まちづくり」のスキルがそうポンポン生まれるとは思えない。だから、他の町はどうだったのかなって」「…………」 そう。それがぼくの気がかり。 気が早いかもしれない。ぼくはまだ十六にもなっていない。普通に考えれば短くても後四十年は生きられる。 でも、ぼくがいなくなると、町がどうなるのか。 恐らくは町民から切り捨てられたことで町への罰を逃れられたファヤンスとデスポタ、いずれ自滅するだろうけど、今のところはSSランクの町を維持? しているため町長の座にしがみついていられるエアヴァクセンとミアスト。そんなことを考えていたら不安になってきたんだ。 グランディールは完璧だと思う。衣食住に不自由せず、スキルに拘らずに好きなことがやれて、お金がなくても生きていける。夢の理想郷。 でも、このまま放っておけば、夢はぼくが消えた瞬間に終わってしまう。 だから、他の町が気になったんだ。 伝説と呼ばれる町が、最低でも五代、生き残った理由。 それが分かれば、グランディールも生き続けられるかもしれない。ぼくの「まちづくり」なんていう反則級スキルで成り立った町は、ぼくがいなくなっても生き残る方法を考えないと、一代で終わってしまう。 何か、秘訣はあるんだろうか。 スキル学に詳しい二人なら何か知っているんじゃないか、と思ったんで聞いた。「確かに……調べてみるか」「フォーゲルの書物も見せてもらえるかな」 頭脳二人が動き出すので、ぼくはこれ以上動かないほうがいいな。 椅子に座り直して、薬湯をコップに注ぐ。「でも、町長」 アパルが部屋を出
ほっとしたぼくの耳に届いてきたのは、雄叫び。 なんだ、何があった? 何かあった? 服を着替える暇も惜しく飛び出すと、町はそのままで、並んだ六軒の家の一軒で、ヴァダーさんが雄叫んでいた。「ヴァダーさん?!」「家が……家が消えていない! 町も消えていない!」 ……そうだね、ヴァダーさん、ぼく以上に心配していたからね。目が覚めたら夢だとか消えてたとか。「さて、これからどうしよう」 変な場所に町を造っちゃったなあ……。 森の奥深く、野獣や魔獣が平気で出る場所。エアヴァクセンに気付かれない土地。他の町との交流しようがない僻地。 確かに畑があって獣を捕らえて捌く場所があって水も豊かな
「えっと。アパル、さん?」 綺麗に焼けた焼き魚の身を歯でむしり取りながら、アパルさんは「ん?」と言う顔をした。「スキル学を、勉強してらっしゃったんですか?」「んん? んん、まあ。「法律」なんてスキルのせいか、色々学ぶことが楽しくてね。盗賊に身を落としても勉学だけは捨てられなかった」 身を噛んで飲み込んでから、アパルさんは頷いた。そう言えば宴会前、洞窟から大量の本を家に移動させていた。どうやってあれだけの本を持って出られたのかちょっと不思議な気がする。 それはさておこう。今欲しい情報はそれじゃない。「スキル学って、どんなことを勉強するんですか? 確か「スキル学におけるレベルか上限1
盗賊団の皆さんが感動と号泣と荷運びを終えたところで、ぼくとアナイナがいる家にやってきた。 手に手に、焼けた魚だの炙った干し肉だの多分酒が入った壺だのを持っている。「……えーと?」「飲もう!」「えーと」 シエルさんの端的な言葉に悩んでしまったぼくに、ヒロント団長が笑いかけた。「儂らだけの町を造ってくれたお礼と、儂らのこれからを祝って、宴会をしようと言う話になった。主役は君だ。来てくれるかな?」「そ……」「喜んで!」 ぼくより先にアナイナが返事した。「アナイナ……」「こういう時はね、盛大にお祝いするのがいいの! みんなもそれを願ってるの! 何がどうあってもこの町を造ったお
正直、ショボい光景を覚悟して目を開けた。 所詮はレベル1Maxのスキルだ、ボロ家の一軒でも立っていれば大ラッキーという気分で。 ゆっくり開いた視線の先、眼の前にあるのは、門だった。 衛兵がいてもおかしくないような、立派な門。 左右を見れば、城壁と言ってもいい立派な塀。 エアヴァクセンよりも立派な入り口だった。「これ……は……?」「おいおい、レベル1のもんじゃないぜこれは」 盗賊団の皆さんも呆然と入口を見上げている。 アナイナだけが、自分がやったわけでもないのに得意気に胸を張っていた。「ほーら、やっぱり、お兄ちゃんじゃない」 何だその威張り方は。「い、いや、塀だけが立







