LOGINほっとしたぼくの耳に届いてきたのは、雄叫び。
なんだ、何があった? 何かあった?
服を着替える暇も惜しく飛び出すと、町はそのままで、並んだ六軒の家の一軒で、ヴァダーさんが雄叫んでいた。
「ヴァダーさん?!」
「家が……家が消えていない! 町も消えていない!」
……そうだね、ヴァダーさん、ぼく以上に心配していたからね。目が覚めたら夢だとか消えてたとか。
「さて、これからどうしよう」
変な場所に町を造っちゃったなあ……。
森の奥深く、野獣や魔獣が平気で出る場所。エアヴァクセンに気付かれない土地。他の町との交流しようがない僻地。
確かに畑があって獣を捕らえて捌く場所があって水も豊かな町になっているけど、見た目だけ。住人七人は正直町とは言えない。村ですらない。寄合だ。
「う~ん」
「どうしたの?」
「いや、色々と」
この返事はアナイナのお気に召さなかったらしい。グイっと耳を引っ張られる。
「痛い」
「お兄ちゃん、わたしに言えないこと考えてたの?」
「いや、そうじゃなくて」
言っても仕方のないことを考えてたんだけど。
アナイナは納得せず更に耳を引っ張る。身長差があるから結構痛い。
「アナイナ、痛い、痛い」
「じゃあ言ってよ。わたしに内緒で何悩んでるの」
「言っても仕方ないから……」
「言ってみなきゃわからないでしょ?」
家の前でわーわーやっていると、ヴァダーさんの雄叫びで起き出した人たちも集まってきた。
「どうしたんだね?」
「ヒロント団長」
「お兄ちゃんが考え事があるのになんでわたしを頼ってくれないのかって言ってたの」
「頼れないんだよ……」
「この町に、何か問題でも?」
久しぶりにベッドで寝たというマンジェさんが不機嫌そうに言う。
「いや……場所が、良くないんじゃないかと」
「場所?」
「他の町とも離れてるし、人がなかなか来れないところだし……」
「ああ、そうだな」
シエルさんも難しい顔をする。
「町と言うには人口もないし増える予定もないし……。一目この町を見れば、是非とも住みたいという人が出てくるんだろうがなあ……この素晴らしい町……」
「最低でも五十人。町と名乗るにはあと四十人近い人間がいるが、追放者を呼び込むにしても街道からも遠い……」
アパルさんが唸る。
「いっそ、町ごと持ち歩ければいいんだけど」
ぽつりと呟いたぼくの言葉に、アナイナが目を輝かせた。
「そうよ! 持ち歩けばいいの!」
「……はい?」
アナイナ、頭大丈夫? どうかした?
「お兄ちゃん、目を閉じて祈ってこの町を出したんだよね」
「うん、まあ」
ヒロント団長にコツを教えてもらって、そのとおりに。
「じゃあ、目を閉じって祈ればいいのよ!」
いやそれはさすがに無理があるんじゃないかと。
と言うのは全員思ったらしく、全員不安顔。
「そこまで都合のいいスキルじゃないと思うんだけど……。スキルはあくまで「まちづくり」なんだから、町に関係のない能力は……」
「……いや、可能性は……ある」
「アパルさん?」
「スキル学で必ず学ばされる伝説の町がある」
「伝説の町?」
「そう、幻の都市、空を行く町ペテスタイ」
空を行く町?
「六百年ほど前になるか。やせた土地にあった町が一念発起、住人同士でスキルを鍛え上げ、自力で空を移動できる町になった。それがペテスタイ」
「行けペテスタイ、目指す先が求めた土地」
シエルさんがまた歌のように呟く。
「あれも町なら、君のスキル「まちづくり」の内容に入っているかもしれない」
アパルさんが最後をまとめて、ぼくの返事待ちの体勢に入った。
「空飛ぶって……さすがにそりゃあ無理なんじゃ……」
「町が造れるんなら、これまであった町を再現することもできるってことね。空飛ぶ町って素敵じゃない、町長も絶対に手を出せない場所で、自由に生きることができるわ!」
いけない、アナイナの頭の中が完璧に空飛ぶ町でいっぱいだ。
そんなこと言われても、さすがにぼく一人のスキルで小さいとはいえ畑も水もある町を飛ばせるなんて思えないんだが。
「やってみようよお兄ちゃん! やってみなきゃわかんないよ! ダメだったらそれはその時考えればいいじゃん!」
「町が空を飛んだらそりゃあすごいことだが……」
「アパル、ペテスタイは伝説の町じゃなかったのか?」
「証拠と言うか、ペテスタイの住人が行ったと言う伝承は、ペテスタイの向かった先々に残っている。空を飛ぶ町が来て、食料を分け合ったとか、厳しい町に耐え兼ねた住民を連れて消えたとか。スキル学では、ペテスタイが空を飛ぶ系統のスキルを搔き集めて飛ばしたと言われているが……」
「町が造れるなら、伝説だって町は町だ」
「よし、やってみてくれんか、クレーくん」
ああ、全員ぼくに期待の目を向けている。プレッシャーだ。
でも、強く祈ることがスキルを発現する術。それは昨日ヒロント団長に教わった。
何となく座って、目を閉じ、地面に手をつく。
伝説の町の通り……飛べ、ぼくらの新しい町。
次の瞬間。ゴゴゴゴゴ!
地面が揺れた。
「うわっ」
「地震か?!」
「違うよ!」
アナイナがいつの間にか門の向こうまで行って歓声を上げた。
「見てよ、みんな!」
ぼくも揺れた地面がもう一度揺れないか不安に思いながら、ヴァダーさんの手を借りて立ち上がり、塀の外に唯一続く門に向かう。
それは……とんでもない光景だった。
「とりあえず見てから」 こっちも最初からそのつもりです。 会話の間にアレの「移動」スキルも発動可能になったし。「グランディールに住まないってなっても、約束は守ってもらう」「グランディールの場所をか?」「ううん。それ以上の秘密を」 ポルティアとナーヤーが顔を見合わせる。 そして同時にぼくを見た。「場所が知られたくないんで逃げたんじゃないのか?」「いやー、場所なんてあってないようなものなので」「……貴方のスキル「まちづくり」に関係がある?」「うん、まあ、そう」「……分かった。貴方には俺たちを助けてくれた恩がある。住まないとしてもグランディールの秘密とやらを明かさないと誓おう」「私もです」「ありがとう」 そしてアレを見る。アレは頷いて「移動」した。 移動したのは、荒れた土地が斜めになっている場所。雲で太陽が隠れていて、より一層辛気臭く感じる。「ここは? ここが……まさか、この荒れ地がグランディールと言うのか?」「言わない。ヴァローレ」 ヴァローレの瞳が金に光る。辺りをじっくり見まわして、頷く。「誰も居ない」「OK。今、呼ぶから、待ってて」「呼ぶ?」 見てりゃ分かるので、説明を省いてグランディールを呼ぶ。「……ん?」 光が遮られて見上げた二人が口を開けたまま上を見続けている。 グランディールはゆっくりと降りてくる。 微かな音を立ててグランディールは水平に着地した。「はい、グランディールです」 まだ口が開いている。虫入るぞ。「……待て、ちょっと待て」「何を待てばいいか分からないけど待つよ。何?」「本名はペテスタイ、とか言わないか? この町」 うん、伝説の空飛ぶ町。浮いてて降りてきたらそっちを疑うよな。「いいえ。グランディールです。能力はペテスタイをパクったけど」「パクった?」 ていうかぼくのスキルの反則技なんだけど。「とりあえず町の中に入ってしまってくれないか? 何処からか見られてると厄介だからさ」「お……おお」 ぼくたちで二人を囲んでとりあえず入る。全員入って、グランディールを浮かせる。 門につかまって体を固定させながら遠くなる地面を見下ろして、そしてぼくを見て、ポルティア、一言。「……なんで浮くんだ」「浮くようにってしたから」「そんなんで浮くのか?」「浮いてる」「すごい……浮いてる
「あなたも、逆らえなかったんですね?」「……ああ」 家具の町スピティの門番は大体どこかの商会と繋がっている。新しく町に入ってくる家具を鑑定して、良い家具を自分の商会に持っていく。フリーだったポルティアは、ぼくらの持ってきた家具を見て、最大の評価をして、大商会二つに繋いでくれた。でも、その裏でピーラーと繋がっていたんだろう。多分相当売り込んだはずだ。でなければ「新人潰し」の異名を取るほど新人好きな取引相手でも、一つの商会で四ヶ月かかる注文をするなんて真似はしないだろう。「ピーラーはいい取引相手だった。無茶は言うが、それに相応する報酬はもらえた。だから、あの日、ピーラーにあなたたちの後を尾行しろと言われても疑問に思わなかった。ピーラーは気に入ったものは何でも手に入れたがるから」「ピーラーの愛人兼使用人のナーヤーと俺、二人がかりの尾行で、見つけられないものはなかった。……今までは」 ポルティアは渋い顔をした。「多分、スキルなんだろうが、どうやって俺たちの目を眩ませた?」 ぼくは素直に話した。 ぼくのスキル「まちつくり」で、町とも言えないこの門と塀を作り、時間稼ぎする間に「移動」のアレがグランディールに行って「鑑定」のヴァローレを連れてきて、スキルを察知、それを捨てて、町の塀だけ残して「移動」で帰ったと。「「鑑定」「移動」……スピティにもそうはいないスキルだな。なんで出来たばかりの町があんな家具やスキルを……いや、それが「まちづくり」のスキル……?」 ポルティアはぶつぶつと考えている。フリー門番やれるくらい頭の切れる人だ、判断も早い。「で、わざわざ俺たちを助けに来たのは、ピーラーの情報を得たいのか?」「いいや、情報はいらない」 ポルティアは渋い顔をした。ここでピーラーを売って、自分たちを安全な場所に送ってもらおうと思っていたんだろう。取引の種を失ったと思って。「うちは「知識」があるから。必要な情報は安全に手に入る」「……そうか」「実は、別の話が合ってこっちに来たんだ」「別の話?」「ああ。……うちの町に来ないか?」「は?」 きょとん。 そんな擬音がしたと思うほど、ポルティアもナーヤーも丸い目を見開いてこっちを見た。「グランディールに?」「そう」「お前……正気か?」「こんな話が出来る程度には正気なつもりだけど」「俺たちは、ピ
「あなたたちがここにいるということは、私たちを追ってきたのでしょう」 即座に町長の仮面つけて、喚き散らす相手に向かって声をかける。「こちらとしてはまだ町の居場所ややっていることを知られたくないんです。ですからピーラー氏についてこられるわけにはいかなかった」 知るかそんなこと、という罵声が聞こえる。 そうだよなあ。ポルティアは依頼されただけ。もう一人いる女の人も、多分同じにピーラーに依頼された……あのスキルをアイテムに込めたあれを作った人だろう。「とりあえず、飲み物と食事を持ってきました」 罵声がぴたり、と消える。「混ぜ物などは入っていません。この場所には水も何もないはず。多分、あなたたちが一番必要なものだと思いますが」 しばらく、沈黙。「……下がったほうがいんじゃね?」 ソルダートが小声で問う。「うん、警戒はされまくっている」「なら――」「だからこそ、ここで引けばあの人たちはこっちを信じてくれないよ」「町長……」 ぼくはソルダートの前に出た。シートスがそのすぐ後ろに並ぶ。「とりあえず、食事と水を取ってから、話しませんか?」 しばらく、沈黙が続き。 やつれた男女がふらふらと現れた。 一人は……ポルティアだ。 もう一人は、短い髪の女の人。 ぼくはすたすたと歩いていく。 ポルティアは歯を食いしばって剣を構えるけど、その剣が震えている。 ぼくは柔らかいパンと薄いワインの水袋を持っていて、シートスがぼくの隣に並んで、深い二つの器を取り出す。ふわりと漂う美味しそうな香り。 シートスは空間の狭間に物を入れて触れずに持ち歩くことが出来る。彼女が「食品保存」した食品は、それ以上腐らないし冷めないし温くならない。ただし、食品とその器以外は「保存」出来ないんだそうで。盗賊時代はこれで奪った食品を楽々運んでたんだそうだ。「あ……ああ」 恐る恐る女の方が近づく。「毒……とか」「入っていません。何なら毒見しても構いませんが」 ぼくがパンを一口食べ、シートスが器のスープを口に入れる。「ほら、大丈夫」 ポルティアが恐る恐る受け取って、一口、ワインを飲む。 続いて、ぐいぐいと一気に飲み干す。 水袋一袋分の薄いワインを一気に飲み干した。 座り込んで、パンを食らう。 女の人はスープをちびちびと飲んでいる。 座り込んでいるというのは
門の所に降下円を作り、下へ降りようとしたところに、後ろから走ってくる音と声が聞こえた。「お兄ちゃん!」「我が……町長!」 振り向くと、必死で走ってくるアナイナとヴァリエ。 ……なんで? その答えは、後ろからやってきたフレディが教えてくれた。「随分反省も後悔もしたようですから、試しに外に出したらどうなるかの実験中なんです」「で? 様子は?」「今のところボロは出していませんね」 うん、他の人にボロがでなければそれでいいんだよ。この二人、周りを気にせずの動向だから。「お兄ちゃんは下に降りるの?」「うん」 ソルダートとリュー、ヴァローレ、アレ、シートスを後ろに従えて降下円を作ってるんだから、まあ降りるとしか思えないよな。「わたしたちもついてっちゃ……ダメ?」 久しぶりだな、アナイナのおねだり。 それに、アナイナが少し変わったのがわかる。 アナイナは、「わたしたちも」と言った。つまり、ヴァリエやフレディの同行もお願いしてきている。 いつもだったら「わたしも連れてくよね?」だったのに。「フレディ」 二人の後ろにいるフレディは、今は子供を連れていない。誰かに預けたのか。「……苦労させたね」「少しはマシになったようですから、無駄な努力ではなかったでしょう。同じ町に住んでいても二度と会えなくなるかもですよ! がお約束の言葉でしたね」「ご苦労さんだったな、フレディ」 ソルダートがフレディの肩を叩く。「子供の相手は慣れてますよ。ついでに言えば躾も」 さすがは二人の子供のお母さん。強いなあ。「で、町長はどうして下へ?」 フレディに聞かれ、ぼくはちょっと苦笑い。「ちょっと下に気になることがあってね」「あ、それでソルダートが一緒なの?」 お。前だったら「ソルダートが一緒ならわたしも!」とか言い出すところなのに。「……やっぱり行ったらダメかな」「そうですよアナイナ、町長は町長の用事で行くんですから、わたくしたちは邪魔になるかもですわ」 お。これも変わったな。前だったら「我が君の御身はわたくしが守ります!」とか食いついてきてただろうに。アナイナをけん制しているだけかもしれないけど、それでも前から見たらすっごく大人しくなった。「……シートスの監視付き、かつ、ソルダートの言うことを聞けるなら」「よろしいんです
ぼくたちは無事にグランディールに辿り着いた。「追跡者の姿はないか?」「……ないね」 ヴァローレが辺りを「鑑定」して人とスキルの気配がないのを確認した。「よし」 地面に落ちる影。見上げれば巨大な浮遊物体。あれがぼくたちの町だと知っているのはぼくたちだけ。 降りてこい、と念じると、グランディールは音もなく降下してきた。「おう、おう、おう!」 ソルダートが門に捕まりながら、こっちを見下ろしてきた。「アレがヴァローレを連れてったから、何かヤバいことあったのかなと思ったけど、全員無事でよかった!」 すぅ、と音もなく着陸するグランディール。 わいわいと町民が寄ってくる。「ご無事で、町長」「良かった、何もなかったんだ」「ベッドは売れたのか?」「あら、この牛車、私のじゃないわ」 ファーレの言葉に、サージュが首を竦める。「ピーラーが荷物ごと持ってった」「牛車も?」「うん、こっちはトラトーレが準備してくれたもの」「まあ、次にこれが使えるならいいのだけれど」 ファーレはそれでも不満顔。自分が作った牛車を知らない相手に持っていかれたのが気に入らないんだろう。「ていうか、相手は荷車を用意してなかったの?」「ああ。危うく幌まで持っていかれる所だった」「グランディールの町スキルでできた紋章を、持っていこうって?」「そうなんだよ、ピーラーが欲しい欲しいって」 シエルも不愉快そう。町の紋章を危うく持っていかれる所だったんだから文句も出るだろ。ぼくも言ったし。「おまけに尾行されてスキルアイテムまで入れられた」 全部、下で作った町に見える塀の所に引き付けて放って来たけど。「グランディールに滅茶苦茶興味持ったのか?」 ヴァダーが溜息混じりに呟いた。「うん。そうでなきゃ二つも手段使って追いかけてこない」「というか、初めての物は自分のものにしなきゃ気が済まないようだな」 サージュがまたも「知識」を搔き集めてきた。「期待の新人、新しい町、というように注目を集めるものを、真っ先に、そして全部手に入れたがる」「町なんてどうやって手に入れるの。町長になりたいの?」「いいや。外から口を出す立場になる。つまり、多大な寄付を送って町政に関わってくるんだ。新しい町は金に困っていることが多いから寄付を受け取らざるを得ない。それと引き換えに品物を自分優先
「そう……だと思われるのですが……」「なんだ、自信のない」 馬に乗った男女五人がついてきて、森の中にいきなり現れた塀と門を見て唖然とする。「グランディールの牛車があの門の中に入っていったのは見たのですが……声もしない、人の気配もない、牛車の音すらしない」「見失った、のか?」 ピーラーの視線が凍てつく。「中に入っていった、それだけは確かです」 依頼主は怖い顔をする。 彼の意向に従えなければ、ポルティアの未来はない。 フリーの門番は所詮コウモリ。あっちにもこっちにもつくからこそ大きい稼ぎがあるのだが、あっちからもこっちからも見放されれば守ってくれる者はいない。だから、ポルティアはピーラーという保険をかけていた。彼に自分が見つけた才能のありそうな若手を商会に紹介すると同時にピーラーに教える。そうすればポルティアはピーラーのお気に入りとして、懐も温かくなるし名前も売れる。 ピーラーの新人潰しに関わっていると言ってもいいが、ポルティアはそれは何とも思っていない。期待に応えきれず潰れる方が悪いのだ。 だけど、グランディールが……あの若い町長が、ピーラーに逆らった。初めてピーラーの無茶に応えた町長が、別荘のデザインをしてくれという依頼を断った。見事な銀染めのグリフォンの紋章が入った幌を渡さなかった。 これまで何人もの新人を潰してきたピーラーには、信じがたいことだった。 これまでの新人は、何とかピーラーの注文に応えようと四苦八苦した。そして期待を裏切って潰れて行った。もちろんピーラーは潰したくはなかった。ただ、一切の妥協をしなかった。それだけの話だ。 新人は自分の意向に応じるもの。断るなんてありやしない。 そういう反発心。そして、それ以上に沸き起こった好奇心。 グランディールはどんな町なのか。 あの町長が率いる町はどんなものなのか。 見てみたい。 ……見てみたい! だから荷物にスキル「跡追い」を込めたアイテムを混ぜ込み、自分を使って後を追わせたのだ。直接町へ行ってデザイナーと交渉しようと。自分の望むあれやこれやを作らせようと。 だからこそ、ここで見失うわけにはいかなかった。スキルと人力で追跡させている。「スキルアイテムはあの中なんだな?」「はい、間違いなくあの中に」 短髪の女性が頷く。「よし」 ピー
「今は夢を語っても仕方ない。これから実験その二」 サージュさんはガリガリと紙に何か書きだした。「エアヴァクセンの生まれなら、字の読み書きはできるだろう?」 書いた紙をぼくに手渡す。「これは……」 設計図。文字と数字だけだったらどうしようと思ったけど、ちゃんと図解してあって助かった。タンスだ。細かく数値が描かれている。町の偉いさんのお宅に置いてあるような装飾が施されている。「これを作れるか?」「ん~。やってみます」 ん~……うまく把握できないというか想像できないというか……。 そもそもぼく、家具そのものを想像して作ったことないしなあ……。家についてきたものばかりだし……。突然
「物と人と金か」 やっと冷静に戻ったらしいサージュさんが腕を組んだ。「人はそれほど苦労はしないと思う。エアヴァクセンと、それに並ぼうとするSやAの町が優秀なスキルを手に入れるため低レベルや役に立たないスキルの持ち主を追い出していると聞く。街道や森を探せば来たいという人はいくらでも出てくる」「え、森の中に住んでたのになんでそんなに詳しいんですか」「「知識」で時々最近の情報に更新しているんだ。知識が古いとそれは知識じゃなくなるからね」 なるほど、「知識」は更新しないと使えなくなっちゃうわけだ。「それで、知らない情報を仕入れるわけなんですか」「そう。ファーレの「ものづくり」も、傍で見
「ああ……知りたい。スキル「まちづくり」……どこまでの町を造れるのか……どこまで広がるのか……どこまで……」 サージュさんの目が爛々と輝いている。怖い。「少なくともペテスタイは再現したぞ」「ペテスタイ!」 アパルさんに伝説の空飛ぶ町をあげられて、ピーンとサージュさんの背筋が伸びた。「そうか、空飛ぶ町……! 伝説ではあるけれど実在は確かだという町……その再現!」「ああ。町長は造った町全体を飛ばした。しかも、それを、目を閉じて祈るだけで実現させた。レベル1Maxも当然だと思えるじゃないか」「町が……実在していれば、再現できる……」 ああ……アパルさんにあおられてサー
ぼくのいない間……と言うかぼくが念じた瞬間に変わったのは、新しい家だけじゃない。 ぼくが望んだ通り、家畜小屋や青々とした草の生える広めの草原、それから何故か広がった畑。 畑なんかは住民が生きて行けるだけの広さを常に保つらしい。多分家畜が増えれば草原や家畜小屋も広がるんだろうなあ。 町を造ることに関しては無敵のスキル、のようだ。 少ししてサージュさんが戻ってきた。「おい。何だあの家は」「サージュさん家です」「いや、分かる、分かるけどそうじゃない。なんであの家そっくりそのままの家具ができてるんだ。君、俺たちの小屋の中を覗いたのか?」「あー。あれは驚くな」 ヴァダーさんが呟いた