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game-4 1.隠れ家

last update Last Updated: 2025-07-24 17:00:00

    トツン……

 軽い音を立てたドアに気付き、蛍は目を覚ました。

 暗いが大きな出窓から、月明かりが部屋を照らしていた。

 真理の家の三階。

 屋根裏の三角形の部屋。そこにはシングルベッドと少しの家具、消耗品だけしかない。

 寝る前に軽食でトーストを真理に用意され、二人はこの部屋に通された。

 □

『まさか本当にアイスを買いに行かせられるとはね。いつも我儘なんだよ』

『お疲れ様。寝ていい ? 』

『ああ。昨日は車だったからね。ゆっくり休もうか。

 俺も隣に。はは。あったかい』

 掛け布団の中で笑うルキを、蛍は戸惑った気分で見詰める。

 どうしてそんな笑って自分といられるのかと。

『おやすみ、ケイ。お父さんにはいつまで美果ちゃんといることになってるの ? 』

『シルバーウイーク中は……ずっと……』

『なんだ……あと二日かぁ……』

 ハンガーにかかっている上着と武装コルセット。コルセットの重みに、針金がしなっている。それほど重い装備と、キツく締める為のバックル。以前から長く付けているのだろう、現にルキの腰は細く身長ほどの厚みが無い。

 今、ルキはシャツ一枚で目の前にいる。その腰つきは、蛍は獲物を見たような妙な気分になるのだ。

 目を閉じようとするルキの腹をそっと撫でる。

『なんだよケイ……ふくく。くすぐったいってば』

『細いなって……』

『それだけ ? ケイ、素直じゃないな』

 そう言い、布団の中へ潜って行く。

『はぁ ? 違っ ! そんなつもりじゃねーよっ ! 』

『アダッ !! 』

 暴れた蛍の膝が、ルキの顔面にヒットしてしまった。

『あ……ごめ……』

『痛ったァ〜。てっきり、そうかと思うじゃん』

『思わないよ。寝るってば。おやすみ』

 固く目を閉じる。自分から寝てしまったら、もう何も気にならない。そんな蛍を胸に抱き寄せ、そのままルキも目を閉じる。

(なんだよ

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  • PSYCHO-w   ケイの犯行についての分類について

    ケイはシリアルキラーなのか シリアルキラーっていうのはいわゆる連続殺人犯。 定義は、複数の被害者がいること。 犯行後に一定期間が空き、また犯行を始める。 被害者が三人以上いる事。 これらが判断基準です。ゾディアックやアンドレイ・チカチーロがこのタイプかと思われます。マスマーダーってのもあって、大量殺人犯の事です。 一日に四人以上殺す者を言うんです。通り魔なんかが町中で大量殺人を犯すのがこのタイプ。 チャールズホイットマンがまさにそうでした。鐘楼からライフルで撃ちまくる……。 ふらっと出かけてさっくり殺るケイに、このタイプには当てはまりません。 三章で蛍は、一度に中野を含めた四人を殺めましたが、動機や何を主体に動いたかは連続殺人犯の衝動的な波によるものです。多く殺ろうとか、そういう意思は無関係です。 シリアルを食べるようにお手軽に犯行を犯してしまう、という事でシリアルキラーという事ですね。スプリーキラーってのもいて、それは短時間で場所を移動しながら殺し回る者である。津山三十人殺しがそうです。マスマーダーに近いかと思われますが、場所を移動しまくる、という点が違いますね。シリアルキラーの中でも分類があって、オーガナイズド型とディスオーガナイズド型があります。後者のシリアルキラーは衝動的で、その場にある物を使いったり、遺体を隠そうともしない。一匹オオカミタイプで友人も少なかったりする。しばしば精神障害があったり、犯行に決まった手口ないといった具合。で、しばしば過剰な暴力と、ときに屍姦などの性的暴行を伴う……と。 そうなると、蛍はシリアルキラーであり、ディスオーガナイズド型ということになるのかもしれませんね。ナイフは愛用してますが、無ければこだわらないし、性倒錯からの犯行でもあります。あくまでフィクションですから「混合型です」と言ってしまえば早いのですが、少しプロファイルや社会分類などの文献を参考にているので、折角なので書いてみました( *´꒫`)

  • PSYCHO-w   2.白い烏

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  • PSYCHO-w   43.乳母

    ルキが片足をあげて、踵から靴の中の水を流す。「ぐっちょぐちょ。靴くらい脱がせてくれてもいいでしょう。高いのにー」「知ったことじゃないわ。なんなのその格好。相変わらずおかしな事してたんでしょ……」「仕事だからさ」「あんた昔から嘘が下手よね。その血は仕事じゃないでしょ ? ケイくんかぁ。可愛いわね〜。 いい事考えた ! あの子を連れて隠居しちゃえば ? 」「彼も仕事の……半分は仕事の付き合いですし……彼には彼の生活がありますよ」「あ〜ヤダヤダ。その隙の無い返事。 それじゃあ、いつまでもあの子と恋人にならなくない ? あんたに恋人が必要とは言いきれないけど。 だいたい何 ? なんでゴースト ? あんなのおっさんが乗る車じゃん。趣味悪 ! マセラティにしなさいよ」「言いたい放題ですね……」 真理は一度煙草を消すと、今度はミントタブレットを口の中に流すようにしてボリボリ噛み砕く。「ふん。あんたがあたしの生活を奪ったんだもの。恨みたらたらよ」「貴女をMから離したかった。仕方が無かったんです」「別に……頼んでないわ。あんたをこんな馬鹿なイベント担当にだけはさせたくなかった」「……引退する時、御自身が暴れて過激なショーをしたせいでしょう ? 俺はそのままのスタイルを引き継いだだけです。 ……ケイには真理さんの事は言わないで置こうかと思ってたんです。でも気が変わって……」「ふぅーん。珍しい事もあるものね。あんた、他人に執着するんだ。 ねぇ……あの人も日本に来てるの ? 」 不意に真理の表情が曇る。「ええ。でももう日本を発ちましたよ。十日前です」「そう……

  • PSYCHO-w   42.一色 真理

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  • PSYCHO-w   41.結々花と美果

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