Beranda / 現実ファンタジー / Real / ~Beginning of the unreal〜

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Penulis: 美味いもん食いてぇ

~Beginning of the unreal〜

last update Tanggal publikasi: 2026-07-01 15:34:59

 鼻孔を撫でるのは雨に濡れた土の香り。

 耳を通り抜けるのは吹き抜ける風の音色。

 舌に薫るのは深緑の若葉が紡ぐ優しさ。

 肌を刺激するのは穏やかな朝の静けさ。

 目に映るのは、眼下に満ちる破壊の痕跡と、建物から不規則に顔を出す木々の歪さ。

 ここは東京都にある池袋駅周辺、つい先日までは人で溢れかえり、喧騒に満ちていた場所である。

 §

「は~、」

 夜空に昇る白い息を見届けてから、周りを見渡し、

「……は~」

 もう一度吐く。本人とて、そこに落胆が混じっていることに気付いている。

 彼の名前は東条 桐将とうじょう きりまさ。どこにでもいるオタクの大学3年生である。

 今日は、得も言われぬ敗北感を白く染める作業が捗る。なぜかって、本日の日付は十二月二十四日、クリスマスイヴだ。

 目に入るのは、カップルカップルカップル鳩たまにホームレス。池袋駅東口を出た前には、豪華とは言い難いがしょぼくはないイルミネーションが飾られている。

 この中では一番力を入れられたのであろうクリスマスツリーを見上げる人達を横目に、彼は駅に向かって歩いてゆく。

 赤信号を前に、ポケットに手を突っ込み、ジャケットに口元までうずめて待っていると、不意に後方から呟く声が聞こえた。

「……なんだあれ?」

 誰が発したのかも分からないその声は、喧騒の中で不思議とよく通った。

 彼は首を回し、

 ――原因の物を見つけるのに時間はかからなかった。

 周りの人間の全てが、『それ』を注視していたから。

『それ』はクリスマスツリーのちょうど星の部分に現れていた。

 紫がかったドブ色の球体で、絶えず波打っている。

 数秒ほど見ていると、周りが段々と騒さわがしくなりシャッターを切る音も目立ってきた。

(……キモイな)

 本来無かった物が無理矢理そこに収まろうとしてるような、言い知れない違和感と悍ましさを感じる。

 さっさと立ち去ろうと、東条が青になった信号を渡るために足を踏み出

 そうとした時

                     どさっ

 何かが落ちた。

 と同時に一人の女性がフラッシュをたく。

 直後、女性の首から鮮血が舞い、辺りに飛び散った。

 ……ほんの一瞬だけ、時が白くなる。

「「「きゃあああああああッッッ‼」」」「どけっ‼」 「――っ‼」

 そこからの行動に大した違いはなかった。一人の者は我先に、二人以上の者達は互いに焦りながら、もしくは弱い者を守りながら、たった今、人ごみの中に突如として出来た最も危険な場所から離れようとする。

 しかし、

 彼等は見ていなかった。

 背を向けていた。

 もしまだ前を向いていたら、もっと必死に逃げただろうに。

           ……それでも結果は変わらなかっただろうけど。

「あ?」

 突然の背後からの喧騒に、東条は再度振り向く。

 落下音がしたと思ったら、数秒後悲鳴と共に大量の人間が押し寄せてきた。

 意味が分からない。いや、意味は何となく分かる、おそらく中心地で何か起きたのだろう。普通は起こってはいけない事が。

 そんなことを考え、自分もその場を離れよと脚に力を込めた瞬間に、それは起こった。

 ぼとぼとぼとぼとぼとぼとぼとぼとぼとぼとぼとぼとぼとぼとぼとぼとぼとぼとぼとぼとぼとぼとぼとぼとぼとぼとぼとぼとぼとぼとぼとぼとぼとぼとぼとぼとぼとぼとぼとぼとぼとぼとぼとぼとぼとぼとぼとぼとぼとぼとぼとぼとぼとぼとぼとぼとぼとぼとぼとぼとぼとぼと

 ドブ紫色の玉が爆発的に膨張し、そして濁流の如く溢れ出した。

 溢れ出したそれらは人の形をしていなかった。

 人の形をしていないそれらは大小様々色も形もばらばらだった。

 ――そして、むせ返るほどの血の臭いをさせていた。

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  • Real   12話

      ――康を抱えて外周のトレントを飛び越え、少し進むと、目的である発電所が目に入った。 康と同じく黒いスーツに赤のバッヂを付けた男女が、入口の前で待っている。「ちびるなよノエル?」「はっ、まさなんてもう漏らしてるくせに」「漏らしてねーよ」「あまり怖がらなくても大丈夫ですよ」 入口を通され、大きなソーラーパネルの間を抜け、管理室の様な場所に案内される。 康がドアをノックすると、「入れ」という、凛とした女性の声が中から響いた。「失礼します。姉御」 彼に続いて二人も入室すると、途端に充満したヤニの臭いが鼻を突いた。 室内には大量の空き缶が転がり、灰皿の上には吸い殻の山が形成されている。「姉御、お客呼ぶならもう少し片付けたらどうすか」「それはお前の仕事だろ」「初耳ですけど……」 テーブルから脚を下ろす彼女が、康を無視してすっくと立ち上がる。 身長は百七十以上あるだろうか、東条と殆ど変わらない。 黒いスーツに身を包み、赤いバッヂも他と変わらず。 ただ違うのが、はち切れそうな胸元に差された真赤なポケットチーフ。 そして最も目を引く、腰付近まで伸びた燃える様な深紅の長髪。 獣の様に鋭い目が細められ、銜え煙草の火が燻った。「……挨拶遅れて申し訳ない。が、ノエル殿、先ずはそのカメラを止めてくれないか?」「ダメ?」「ダメ、だ。こいつと会った時から今までの動画を、今ここで削除してくれ」 部屋の掃除をする康を首で指す。(おぉ~何か映画っぽい) 東条の関心を他所に、しょうがないと言った風体でノエルは動画を消し始める。「貴殿等の動画は面白いが、うちの組の内部まで流されては流石に堪らないのでな」「ん。理解」「ハハハ、感謝する」 一瞬ピりついた空気が流れたものの、許してくれたみたいで良かった。 そんなことを考えていた東条と、姉御の目が合う。「……しかしまぁ、本当に頭部だけ黒いな」「セルフモザイクですね」「便利だな。確かに貴殿の名前も、動画内ではモザイクが入っていたな。隠しているのか?」「動画内では一応。普段はまさと呼ばれています」「まさ殿か、ならば私は紅とでも呼んでくれ」「分かりました。……一つ聞きたいのですが、ここをずっと守っていたのは紅さんですか?」 改めてこの質問を、本人だろう人にぶつける。「そうだな」

  • Real   11話

      ――「まさかお二人が発電所に向かおうとしていたとは、驚きでした」「私も藜組の方々がそこを守っているとは思いませんでしたよ」 皇居前発電所は、皇居に隣接する最新型ソーラーパネルを設備した超大型発電所である。 山手線範囲内を賄えるだけの電力を、この場所だけで供給している。 現代人の一人として、それ以上に、この中でサバイバルを生き残った者として、電気の存在が途轍もない助けになったのは言うまでもない。 勿論この場所に来るまでに、断線し暗闇に呑まれた場所は幾度も見た。 トレントの枝葉がうまい具合に電線と接触せず、電気が東条の元まで届いたのは運によるものだ。 一部を除き、モンスターが公共施設に興味を示すことが無かったのも大きい。 しかしもしこの場所を守っている人間がいるのなら、自分は必ず礼を言うべきだ。 東条は予てから、その思いをずっと胸に抱いていた。「そこはその方がお一人で?」「そうですね。戦闘は姉御、幹部がほぼ一人で請け負っていますね。というよりも、私達下の者では彼女の邪魔になりますから」 康は彼女の恐ろしさを思い出し、カラカラと笑う。 本部が別にあるとすると、その女性は一人でライフラインを任されていることになる。 察するに、相当の実力者なのだろう。「いったいどんな力を使うのか、とても気になりますね」「はははっ。流石にカメラの前では、それも私の口から言うのは憚られますね」「それもそうですね。申し訳ない」 ――三人で雑談を交わしながら、西に向かってひた進む。「そういえば平塚さんも、よく私を見つけられましたね。迷わずこちらに向かわれてたようですし」「いえいえ、偶然ですよ。あれだけ大きな音を立てれば、誰でも気になりますって」「ハハハ、確かにはしゃぎ過ぎました。……平塚さんはよくここの見張りを?」「……えぇ。怖い上司に無理矢理、ですかね」 康はやれやれと言ったジェスチャーをつけ、笑顔で答える。「それにしてはモンスターから全力で逃げていましたけど、いつものことなんですか?」「まさか。私は遠くから、発電所に近づくモンスターがいないか見る役目です。これで」 そう言いポケットから出したのは、市販の双眼鏡。「……組織って大変なんですね」「まったくですよ」 警戒するのもめんどくさくなってきた東条は、元より自分の柄ではない、と探り

  • Real   10話

     『なん「姉御ぉ‼」……次耳元でデカい声出しやがったら殺すぞ』「も、申しわけないです」『チっ。それで?了承は取れたか?』「めっちゃ疑われてる最中ですよっ。理由を聞くまで動く気ないです、てか殺されます」『あぁ、忘れてた』「でしょうね!」『ボスが糞猿共を血眼で探してんの知ってんだろ?』「は、はい」『この付近歩き回ってるそいつらなら、情報持ってんじゃないか?ってことよ。要するに商談だな。他にも目ぼしい情報あったら買うつもりらしい』「なるほど」『分かったらさっさと連れてこい。そいつらにとっても悪い話じゃないはずだ』「了解です」 一方的に切られた携帯を耳から外し、改めて二人の方へ向き直った。「お待たせして申し訳ありません」「いえ。それで、何と?」「私達のボスがあるモンスターを探しておりまして、その種についての情報が欲しいと」「……なるほど」 東条も納得する。情報を売ると公言しておいて、この話に応じないのは違うか……。「いこ、ノエルビジネスやりたい」 初の金が動きそうな仕事に、ノエルは既に乗り気である。「まぁ、そういうことなら俺も構わねぇな」「有難うございます」 ほっとしたように康も頭を下げる。「それで、何処に行けばいいですか?」「はい。一旦皇居前発電所まで徒歩で向かい、そこから幹部が車で本部までお送りいたします」「皇居前発電所?」 東条の眉がピクリと上がる。「はい。どうかされましたか?」「いえ。丁度私達もそこに向かおうとしていたので、驚いただけです」 何の因果かその場所は、二人が次の目的地に決めていた場所であった。

  • Real   9話

      焚き火が燻る広場では、コカトリスを残さずに平らげた二人が、膨れた腹を摩りながらへそ天していた。 沢山食べた後に運動する気など起きるはずもなく、こうして一休みしているのだ。「ケプっ。あとどれくらい休む?」「ん~十分くらい」「り」 口数少なく、ボケ~、と揺蕩う雲を眺める。 人間たまにはこういう時間を作らないと、自分が今まで抱え込んできたものに圧し潰されてしまう。 東条はいいとして彼女に抱えるものがあるのかは甚だ疑問ではあるが、思考の放棄こそ、最高の整理術なのだ。 冷えた空気にお日様が気持ちいい。……そんな中、「……なんの音だ?」「何か来る」 遠くの方から、バタバタ――、と小さいながらも疾駆音が聞こえる。段々と大きくなるそれは、確実にここに向かって近づいてきている。 じー、と木々の間を見ていると、「……なんだあれ。人か?」「モンスターいっぱい連れてる」 涙を流しながら半笑いで全力疾走する金髪オールバック黒スーツの男が、大量のモンスターを連れて此方に迫ってきていた。 その必死さは尋常ではなく、何かを謀っている様には到底思えない。それほどまでに、惨め。「笑ってるぞ」「泣いてる」「なんでこっち来んだ?」「肉食べたかったのかな」 そうこうしている内に男は死体の壁を飛び越え、二人の下に顔面から転がり込んできた。 男が慌てて後ろを振り返るも、追って来ていたモンスターは全て壁の外で急停止し、唸り、睨みつけるだけである。 数秒もすると、諦めたのか悔しそうに去って行った。「たす、かったぁ」 緊張の解放からがっくしと地面に手をつく男に、じー、と向けられる視線。 そんな男と二人の視線が、交差する。「っ……ごほんっ。……初めまして、藜組の平塚 康と申します。この度は救っていただき感謝します」(別に救ってねぇんだが……) いきなり顔面スライディングをかまし、引き攣った半笑いで九十度に腰を折る目の前の男に、東条とノエルは懐疑の目を向ける。 まるで準備してきたかの様な切り替えの早さ、怪しい。……それに何より、この男は今聞き捨てならないことを言った。「あ、こちら私の名s「止まれ」っ……」 懐に手を忍ばせた康の身体が、東条の威圧を受けビクり、と固まる。(……え、何⁉俺なんかまずいことした⁉ヤベェ殺されるっ。てか

  • Real   8話

      §「…………ははっ。……ぅえ、ぅぼぇっ……ふぅ、ふぅ……」 一連の戦闘を木の上から直視していた男は、衝突する埒外の魔力と殺気に晒され、落下した後胃の中の物をぶちまけていた。 彼女の質量を持った圧力に耐えられる生物は、キュクロプスと東条を除いてこの庭園の中にはいない。 異様な程の静けさが辺りを包んでいる。 生きとし生けるものが、息を殺し、命を潜めている。「ぅっ、おぶぇっ……」 男は一凛の薔薇を思い出し、又も嘔吐く。 色々な死に目や死体を見てきたが、あれ程悪意に満ち、害意極まりない殺し方は初めて見た。 そしてそれを行ったのが、幼気な少女だという事も悍ましさに拍車をかけている。 何より、その横で笑顔で談笑している彼等が、怖くて、恐くて、仕方がない。 男は震える手で携帯を取り出し、今日何度目かの番号にかける。『デカい音したけど、何かあったか?……おい……泣いてんのかお前?』「もぅ怖いです。帰っていいですか?」 涙ながらに訴えるも、『何情けないこと言ってんだ。報告』「うぅ、はい」 聞き入れられることはない。「あの二人、キュクロプスを殺しました」 携帯の奥から、少しだけ驚いた雰囲気が漏れた。『……あの単眼の化物か。それはまた凄いな』「凄いとか言うレベルじゃないですってっ。この数時間で、俺がここにいる理由無くなりましたからね」『喜ばしいことだな』「……まぁ、そうですけど」 良い方に捉えれば確かに、自分は今日を以てこの危険な仕事を引退できるだろう。『で?どっちが殺ったんだ?二人でか?』「……少女です。それも、五分とかかっていません」『ハハっ』「……笑い事じゃないですって。何なんですかあの二人、魔王か死神の類ですよ絶対」 男は、(見ていないから笑えるんだ)、と心の中で一人ごちる。『そうだ。仕事の無くなったお前に新しい任務をやる』「な、なんですか」『その二人をここに連れてこい』「俺の話聞いてました⁉」 予想外の任務内容に、身体中から冷汗が噴き出る。『うるせぇな。さっきボスが帰ってきた。会いたいって言ってんだよ』「嫌ですよ!殺されちゃいますよ!」『……私がそこまで行って殺してやろうか?』 ドスの効いた声に、男の身体がビクりと固まる。慣れ親しんだ恐怖。 しかし先のものと比べれば、心地良ささえ感じる。自分が

  • Real   7話

     「……えっぐ……」 凄惨な現場を目の当たりにした東条は、肉を食うのを止め、此方に歩いてくる少女に戦慄する。「おまた」「お、おう。お疲れさん」「あーっ、先に食べてる!」「いや、これはあれだ、映画にコーラとポップコーンがないとダメな感じの、あれだ。ノエルの姿がカッコよすぎてつい、な?」 焦り気味に弁明する東条の視界の端では、常に一凛の大きな薔薇が存在を主張している。「むー。許す」「あざす」 優しい少女で本当に良かった。……本当に。 ――「うめぇうめぇ」「うみゃいうみゃい」 持ってきた塩を振り掛け、パリパリの皮と程良くしまった肉に舌鼓を打つ。 骨を持ってかぶりつき、捨ててはもぎ取りかぶりつく。口の周りを汚しながら手掴みで噛み千切るのが、骨付き肉の一番おいしい食べ方である。「そういやあの技何よ?」「んむんむ、ンぐ、必殺技」 しっかりと呑み込んだ後、油べとべとの手でピースを作る。「かっこいいだしょ」「かっこいいだわ。いつの間に?」「一日一個作ってた」「めっちゃあるじゃん」 必殺技とはそんなに簡単に作れるものなのだろうか……。疑問は尽きないが、東条もそのロマンには大いに共感できる。だからこそ、「いいな~。俺も考えたことあるけどよぉ、派手な技がねぇんだよぉ」「まさのパンチは充分派手」「華がねぇ」「確かに」 自分の技に名前をつけるとなると、『ぶっ飛ばし』とか『ぶん殴り』になってしまう。それではあまりにダサい、ダサすぎる。なのにノエルときたら、「『ロゼ』ってなんだよ~めっちゃカッコいいじゃ~ん」「うぇへへ」 ゴロゴロと転がりバタつく東条に、頬を緩ませ照れるノエル。「他にどんなのあんのよ」「秘密~」 血が滴る一凛の薔薇の横で、肉を片手に談笑する二人であった。

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