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chapter05

Author: 水沼早紀
last update Last Updated: 2025-06-06 10:44:51
 でも、でもね……。

「不思議だけどオーラがすごく出てるから、一目でカッコイイって分かるよね」

「うんうん。確かに見てるだけでカッコイイ」

 でもね、課長はカッコイイだけじゃない。

「でもどこかミステリアスで、なんか近寄りがたいオーラ放ってる気がする」

「確かに。課長ってカッコイイけど、どこかミステリアスだよね」

「うん。なんか何を考えてるの分からないから、時々困る」

「まあ、それはあるわねぇ。ミステリアスな人って、時々訳分からなくなるわよね」

 そうなんだよね……。本当に、それなの。

「でも課長って、アンタには優しいわよね?」

「えっ!そう?」

 課長が? 私には優しい……?

「うん。なんか、瑞紀にだけは妙に優しいっていうか……」

「そうかな? そうでもないと思うよ?」

 そう思っていたけど、沙織は「いや、間違いなく優しいわよ。 もしかして課長、アンタのこと好きになったとか?」と言ってくるから、私は思わず「えっ!まさか……!」と沙織を見る。

 課長が、私のことを好き……?

「いや、ありえないよ」

「なんでそう言い切れるのよ。 もし課長がアンタを好きだったら、どうするのよ」

「……まあ、その時はその時だけど」

「なによ、それ」

 沙織にはさすがに、言えなかった。課長とのあの夜のことは。

 あの夜を一緒に過ごした男性が課長だなんて言ったら、私は絶対課長との仲を怪しまれる。

 私たちが社内恋愛してると思われても仕方ない。だからこそ、沙織にも言えなかった。

「じゃあ瑞紀、私もう仕事戻るよ?」

「うん。付いててくれて、ありがとう沙織」

「うん、じゃあね。ゆっくり休んでるんだよ」

「ありがとう」

 沙織はニコッと微笑むと、医務室を出て行った。

「……いや、好きとか、ありえないと思う」

 あのミステリアスな、課長がだよ?……ないない。

 確かに私と課長はあの日、お互いを熱く求め合ってしまったけど。

 こんなことを言うのはおかしいけれど、課長に抱かれてる間の私は、また課長に抱かれたいと思ってしまっていた。

 本当に一瞬だけだけど、彼となら身体だけの関係でもいいから、付き合いたいと思ってしまったのもまた事実で。

 でもそれは、私たちにとってたった一晩の過ち。

 そんな関係になることを、私たちは望んでいた訳じゃない。 たった一晩の関係。

 そう、それだけだったのに。

 私
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