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第330話

Author: ルーシー
玲奈は毛布を下ろし、拓海の方を振り返った。

拓海は彼女のベッドに横になったまま、身体を横向けて彼女を見ていた。

そして窓の方を指さしながら言った。

「外に出よう。

――あそこから」

玲奈は目を瞬かせた。

「えっ?」

拓海は当然のように言葉を続ける。

「旧市街の夜市に連れてってやるよ。

灯籠を流すなど外国の面白いイベントも遊べるし、願い事もできる」

その言葉に、玲奈の胸がふとざわめいた。

久我山医科大学に通っていたころ、寮の友人たちと一度だけ旧市街の夜市に行ったことがある。

それはもう何年も前のことだった。

この街で暮らしていても、愛莉が生まれてからは自分の時間などほとんどなかった。

外出ひとつするにも、娘の予定を優先しなければならない。

だから「旧市街の夜市」という言葉を聞いた瞬間――

懐かしさと、胸の奥に沈んでいた自由への憧れが、不意に顔を出した。

拓海は玲奈が黙り込んだのを見て、すぐに分かった。

行きたいのだ。

ただ、迷っているだけ。

その迷いを与えないように、彼はすぐ行動に移した。

ベッドから立ち上がると、ソファの方へと歩いていく。

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