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第356話

Auteur: ルーシー
最後に、玲奈は再び視線を戻し、天井をじっと見つめ続けた。

そのとき、拓海のスマホが鳴った。

病室は静まり返っていたので、玲奈には電話の向こうから聞こえてくる男の声まではっきり聞こえた。

「須賀さん、例のもの持ってきました。

上までお届けしますか?」

「うん」

「どの病室です?」

「着いたら電話してくれ。

取りに出るから」

短いやり取りのあと、拓海は電話を切った。

ほどなくして、また彼の携帯が鳴った。

拓海は立ち上がり、病室を出ていったが、二分も経たないうちに戻ってきた。

手には袋を提げており、中には保温容器がいくつも入っていた。

玲奈はすぐにそれが、拓海が人に頼んで用意させた食事だと気づいた。

拓海は小さな弁当箱を一つずつ取り出し、丁寧に並べていった。

料理はどれも彩り豊かで、肉のスープに野菜の副菜、白ご飯に小さな団子、さらに大ぶりの

海老まであった。

彼は枕をベッドのヘッドボードに立てかけ、玲奈の背をそっともたせかけさせる。

そして小さな器を手に取り、ゆっくりと食べさせ始めた。

玲奈は空腹で、反抗する気力もなく、そのまま彼に食べさせてもらった。

料理は驚くほど口に合い、玲奈は夢中で味わいながら、久しぶりに心から満たされた気持ちになった。

食事が半分ほど進んだころ、拓海がようやく口を開いた。

「......うまい?」

玲奈はうなずき、素直に答えた。

「うん、美味しい」

その言葉を聞くと、拓海は落ち着いた手つきで海老の殻をむきながら、何気ない口調で言った。

「そんなに気に入ったなら、今度うちに来て食べればいい。

母さんに頼んで、もっと美味しいものを作ってもらうよ」

その瞬間、玲奈の口にあった海老が喉に引っかかり、思わずむせた。

ひどく咳き込み、顔が真っ赤に染まり、目には涙がにじんだ。

そんな彼女を見て、拓海は慌てて手の海老を置き、水の入ったコップを取って彼女に差し出した。

彼女が水を飲むのを見守りながら、穏やかに言った。

「今夜の料理、全部うちの母さんが心を込めて作ったんだ」

玲奈は一口水を飲むと、ようやく息が落ち着いた。

彼女は拓海を見つめたが、何を言えばいいのかわからなかった。

沈黙を破ったのは拓海のほうだった。

「どうした?

黙って」

玲奈は喉の奥をそっと動かし、静かに言った。

「...
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Commentaires (3)
goodnovel comment avatar
紫陽花
いいねぇ~ まだ離婚が出来ていない玲奈は苦しいよね けど、こんなに大事にしてもらえて、嬉しいね
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Julius
拓海がんばれ! 茶化さないで素直に話せばきっとうまくいく。 玲奈もゆっくり心を開いてくれ。 ラブラブな2人をみたい!
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ひろぴろ
拓海マジ最高。クズ野郎どもとは比べられないよ。玲奈よ、早く彼と幸せになって欲しい。
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