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第6話

ผู้เขียน: 倉谷みこと
last update ปรับปรุงล่าสุด: 2025-06-20 11:00:00

僕は、気まずさを抱えながらたこ焼きを食べる。先ほどまでは、専門店にも引けを取らないくらいの美味しさだったのに、今はほとんど味がしない。でも、遼と本宮さんは、特に気にしているふうでもなく、談笑しながら食事を再開している。2人の様子を見ていると、自分が考えすぎているだけなのではと思ってしまう。

食事が終わった後、2時間ほど歌うことになった。遼も本宮さんも楽しそうに熱唱していたけれど、僕は全力では楽しめなかった。どうしても、遼の爆弾発言が気になってしかたがない。

途中、本宮さんが僕を気遣ってくれたけれど、何でもないで押し通した。さずがに、この場で気軽に聞けるようなことでもないし、そんな度胸を持ち合わせてはいない。結果、僕の気持ちは晴れないまま、解散することになった。

会計は割り勘になるものとばかり思っていたけれど、自分が払うからと本宮さんに押し切られてしまった。申し訳ないような気もするけれど、ここは素直に甘えることにした。

受付カウンターには、珍しく男性の店員さんがいた。いつもは、女性の店員さんが対応しているから、何だか新鮮な感じがする。僕よりも少しだけ背の高いその店員さんは、淡々と業務をこなしていく。決して愛想がいいとは言えないけれど、仕事なのだからそういうものなのかもしれない。

会計も無事に終わり、僕たちは受付カウンターに背を向ける。店を出ようとしたところで、僕はふと背後に視線を感じた。じっとりとまとわりつくような感覚に、思わず振り返る。先ほど対応してくれた男性の店員さんが、じっと僕を見つめていた。

「優樹。どうかした?」

急に振り返った僕に気づいたのか、遼に声をかけられた。

「あ、いや、何でもない」

言って、足早に2人のもとへと向かう。なんとなく、店員さんの視線に恐怖を感じた。それはささいなものだったけれど、ほんの一瞬、心の中のもやもやを忘れるほどだった。

歌った曲や食べた料理のことを話しながら駐輪場まで行くと、先ほど感じた恐怖はきれいさっぱり消えていた。何だったのだろうと思いつつ、気にしないことにした。それよりも、今は遼の動向が気になる。

自分の自転車の前で立ち止まった遼は、本宮さんにお礼を言っていた。爆弾発言なんかなかったかのような、満面の笑みでだ。それを見た僕の心の中に、また黒いもやもやが広がり出す。

「そうだ! 本宮さん。連絡先、交換しません?」

と、遼が思いついたかのように本宮さんに聞いた。

それならばと、僕はSNSのグループ機能を使うのはどうかと提案した。単純に、遼と本宮さんが、僕の知らないところでやり取りしているのが嫌だった。

2人が即座にうなずいたのを見て、僕はさっそくグループを作り2人を招待する。すぐに遼がグループに入り、その後を追うように本宮さんが入った。

「サンキュー、優樹。んじゃ、また明日な!」

と言って、遼は自転車に乗って帰路に就く。

遼の姿が大通りへ消えていくと、

「優樹。ちょっとドライブしようぜ」

と、本宮さんに誘われた。

でも、僕はとてもそんな気分にはなれない。胸に黒いもやもやを抱えたまま、本宮さんとドライブに行くなんて考えられなかった。

「ごめんなさい」

僕は、それだけしか言えなかった。それ以上の言葉を紡ごうとすると、押し留めている感情が爆発してしまいそうになる。だから、その一言に、ここで解散にしてほしいと願いを込めた。けれど。

「嫌だ」

本宮さんが、いつもより低い声でそれだけを口にした。

「えっ……!」

僕は、弾かれたように本宮さんを見た。

まさか、直球で否定されるとは思っていなかった。それも、聞いたことのない低さの声で。怒っているわけではなさそうだけれど、感情が見えない。

「本宮さ……うわっ!?」

本宮さんに確認しようかと思った矢先、彼は無言で僕の腕をつかんで歩き出した。

「ち、ちょっと本宮さん! 放してよ! 今日はここで解散にしよう?」

控えめにそう提案するけれど、本宮さんは無言で駐車場を進んでいく。それどころか、愛車の助手席に僕を押し込めると、有無を言わさず車を発進させた。

「本宮さん、車止めて! お願いだから!」

「嫌だって言ったろ? 今日は、まだ帰さないからな」

と、淡々と告げる本宮さん。

普段ならときめくような台詞でも、今の僕には響かない。どうしてそんなことを言うのだろうという気持ちの方が強かった。

西日が街を黄金色に染める中、僕たちを乗せた車は僕の自宅とは反対方向へと進んでいく。

「ねえ、本宮さん。僕の家、反対だよ?」

おずおずと聞いてみるけれど、

「そうだな。優樹の家に向かってるわけじゃねえからな」

なんて、本宮さんが当然のことのように言う。

それでは、どこに向かっているのだろうと疑問に思う。けれど、聞くに聞けなかった。本宮さんの雰囲気が、いつもの優しいものとは違うような気がしたからだ。

それ以降、僕と本宮さんは終始無言で。重苦しい空気が車内を支配していく。

気まずくて、僕は助手席の窓から外を眺めていた。流れていく風景は、いつもと同じ街並みのはずなのに、なぜか僕の知らない街のように見える。僕が通ったことのない道を走っているからだろうか。

(どこまで行くんだろう?)

ふと、そんな疑問を抱く。自分が暮らしている街をすべて把握しているわけではないから、自分が今どこにいるのか見当がつかない。

「優樹。何か思ってること、あるんだろ?」

唐突に、本宮さんにたずねられた。

「何のこと……?」

胸の内を見透かされたような気がして、僕はそう聞き返すことしかできなかった。

本宮さんは小さく息をついて、また無言で車を走らせる。僕がはぐらかしたことで、不機嫌になったのだろうか。いや、それはあり得ない。本宮さんが不機嫌になったところなんて、今までほとんど見たことがない。だから、僕がそう思ってしまうのは、ネガティブな感情を抱えている僕自身が原因だ。でも、この感情を気軽に話す気にはなれなかった。

しばらくして、本宮さんは大きめの公園の駐車場に車を停めた。シートベルトをはずして僕に向き直る。

「優樹。思ってることがあるなら言ってくれ」

誠実な本宮さんの声に、僕の意思は大きく揺らぐ。でも、正直に話すのが怖い。

「優樹」

念を押すように本宮さんに呼ばれて、僕は諦めたように大きく息をついた。

「本宮さんはさ、今日、楽しかった?」

自分の思いを言う前に、僕は本宮さんにたずねてみた。

「ああ、楽しかったよ。優樹にいい友達がいることもわかったしな」

「そっか……」

「でも、優樹は違ったんだな?」

本宮さんの問いに、僕は小さくうなずいた。

「……お昼食べてる時にさ、遼が言い出したじゃん? 本宮さんに興味あるって」

「ああ」

「それ聞いた時、なんかもやもやしたんだ。今まで、同性が好きだなんて素振り、一度も見せなかったのに、とか。女の子が好きだったんじゃないの、とか。本宮さんは僕の恋人なんだけど、とか……」

僕は、遼に対して思っていたことを口にする。瞬間、あの時のことがフラッシュバックした。思わず、自分の胸を押さえる。どす黒い感情が、一気に溢れ出してしまいそうだった。

「本宮さんもお礼なんか言っちゃってさ、本当は僕じゃなくてもいいんじゃないの? とか。ちゃんと断ってよ、とか。恋人だって言ってほしい、とか……」

本宮さんが静かに聞いているのをいいことに、僕は思いの丈をぶつけた。

自分の気持ちを言葉にしていると、次第に涙が溢れてくる。自分だけを見てほしい。そんな思いだけが、胸の中いっぱいに広がっていく。

「だから……」

そこから先は、もう言葉にならなかった。感情が、涙と一緒に溢れ出す。それを堪えようと、僕は唇を強く噛んだ。

そんな僕を、本宮さんは何も言わずに優しく抱きしめてくれた。やけに暖かく感じる彼の体温に、胸の奥がぽかぽかしてくる。

ホッとしたからだろうか、僕は小さな子どものように声をあげて泣きじゃくった。

* * * *

どれくらいの時間が経ったのだろう。だいぶ長い時間泣いていたような気がする。

「落ち着いたか?」

泣き止んだ僕に、本宮さんが優しく問いかけた。

僕は、涙を拭いながらうなずく。

「ごめん。ちゃんと話したかったんだけど、なんか泣けてきちゃって」

言い訳じみたことを言うと、

「謝るのは俺の方だ。ごめんな。きっぱり断るべきだったよな」

と、本宮さんが頭を下げた。

「……本宮さんは、遼に興味あるって言われて、正直どう思ったの?」

本宮さんの気持ちが知りたくて、真正面から質問する。

「そりゃあ、驚いたよ。優樹から話を聞いてたとはいえ、会って数時間しか経ってなかったわけだしな。でも、正直うれしかった」

「それは、『僕の友達』に言われたから? それとも、『男』に言われたから?」

僕がそう聞くと、本宮さんは少し困ったような表情を浮かべた。

自分でも意地悪な聞き方をしている自覚はある。でも、ここははっきりとさせておきたかった。

「そうだな……。純粋に、俺自身に興味を覚えてくれたことがうれしかったんだ。遼君が、俺を恋愛対象として見てるかどうかは別としてな」

本宮さんは、少し思案してから答えた。

たしかに、相手が自分に好意を持ってくれていること自体がうれしいということは、理解できる。僕だって、嫌われるよりは好かれたいと思っているからだ。でも、肝心なところは聞けていない気がする。僕は、無言で本宮さんをじっと見つめた。

「そう睨むなって。俺は、遼君のことを『優樹の親友』としてしか見てないから」

だから安心しろと、本宮さんが告げる。

「本当に?」

疑うわけではないけれど、僕はそう聞き返した。

本宮さんが僕から離れてしまうのではないかと、不安でしかたがない。結局のところ、僕は自分に自信がないのだ。

「もちろん、本当だ。俺の恋人は、この先もずっと優樹だけだよ」

本宮さんに真正面からそう言ってもらえて、僕はようやく安心できた。うれしい気持ちが溢れ出して、自然とほほが緩む。先ほどまで心を支配していたもやもやが、うそみたいに消え去った。

「泣き顔もかわいいけど、やっぱり、優樹は笑顔が一番だな」

と、本宮さんは微笑んで、僕の頭を優しくなでた。

その大きな手の感触が、とても心地よく愛おしくて。僕は、この先もずっと本宮さんの隣にいたいと思った。

「本宮さん、大好き!」

「俺も大好きだよ、優樹」

僕たちはそう言って、口づけを交わす。甘くとろけるような、それでいて安らぎを感じられる、そんなキスだった。

* * * *

「……遼は、何であんなこと言ったんだろ?」

本宮さんが言うところのドライブが終わり、僕の自宅へと向かっている中、僕はふとそんなことをつぶやいた。

恋人がほしいと願望を口にした直後の、本宮さんに興味がある発言。普通に考えたら、本宮さんを恋愛対象として見ているからこその発言だ。でも、遼から男が好きだなんて、今まで一度だって聞いたことがない。まあ、内容が内容なだけに、男である僕に言えるわけでもなかったのかもしれないけれど。でも、中学生の時に、遼は同学年の女子に片思いをしていたはずだ。当時、遼本人から聞いたのだから間違いない。だとしたら、どうして……?

「本人に直接、聞いてみればいいんじゃねえか?」

思考が無限ループに陥りそうになった時、本宮さんがそんなことを言った。

「それはそうなんだけど、なんか気まずいというか……」

と、僕はごにょごにょと言い訳をする。

「聞かなかったら、またもやもやすることになるぜ?」

それは嫌だろう? と、本宮さんに諭される。

たしかに、謎のままにしておくのは、精神衛生上よくないのはわかっている。でも、遼に直接聞くのは怖い。もし、本当に本宮さんを狙っているとしたら、僕は遼とどう向き合っていいのかわからない。親友でいられなくなるかもと思うと、どうにも怖気づいてしまう。遼とは、今まで通りの親友でいたいのだ。

「大丈夫だよ、きっと。優樹が思ってるようなことには、ならないと思うぜ?」

だから大丈夫だと、本宮さんが励ましてくれた。

その言葉に、不思議と迷いや不安は消えていった。根拠はないけれど、最悪の状況は回避できそうな気がする。明日、学校で会ったら、遼に聞いてみようと思った。

それから自宅までは、カラオケでよく歌う曲や好きな曲の話で盛り上がった。本宮さんが1曲目に歌っていた曲が僕のお気に入りの1つだと話すと、これからはカラオケもデートコースに入れようなんて言ってくれた。次に行くのはいつになるのかわからないけれど、2人きりのカラオケが今から楽しみだ。

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