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それでも、愛に遅すぎることはない

それでも、愛に遅すぎることはない

By:  九葉(くよう)Completed
Language: Japanese
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病院の入り口で。 伊坂悠川(いさか はるかわ)は、妊娠中に大量出血していた私を置き去りにして、離婚相談中の女性依頼人を送っていくのだと言い張る。 足元を伝って血が溢れ出していても、彼は一度も振り返らず、焦った様子でその女のもとへ去っていった。 深夜、本来なら私の付き添いで病室にいるはずの悠川は、なぜかその女のツイッターに登場していた。 【頼りになる私の弁護士先生。酔っ払ってもちゃんと二日酔いのお味噌汁が出てくるの、あれ?それって私だけ?】 私は一睡もできなかった。 翌朝早く、静かに電話をかける。 「お父さん、私、決めた。三日後、家に帰って会社を継ぐから」

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Chapter 1

第1話

病院の入り口で。

伊坂悠川(いさか はるかわ)は、妊娠中に大量出血していた私を置き去りにして、離婚相談中の女性依頼人を送っていくのだと言い張る。

足元を伝って血が溢れ出していても、彼は一度も振り返らず、焦った様子でその女のもとへ去っていった。

深夜、本来なら私の付き添いで病室にいるはずの悠川は、なぜかその女のツイッターに登場していた。

【頼りになる私の弁護士先生。酔っ払ってもちゃんと二日酔いのお味噌汁が出てくるの、あれ?それって私だけ?】

私は一睡もできなかった。

翌朝早く、静かに電話をかける。

「お父さん、私、決めた。三日後、家に帰って会社を継ぐから」

電話の向こうで、父は少し黙ったあと、深くため息をついた。

「そうか、帰ってくるんだな。よかった、家で待ってるよ」

父の声を聞きながら、胸の奥が苦しくなって、私は電話を切った。

すでに平らになったお腹をそっと撫でる。止めようのない涙が溢れ出す。

医者は私に言った。「赤ちゃんはやっと形になったばかりです。もう少し早く来ていれば、違う結果だったかもしれません……」

赤ちゃん、ごめんね。ママがちゃんと守ってあげられなかった。許して……

私は声を抑えきれず、泣き続けた。

見回りに来た若い看護師さんがドアを開けて入ってきた。似たようなことは何度も見ているだろうに、それでも少し目を潤ませている。

「流産なんて大変だったでしょう、どうして一人なの?ご主人は?」

その優しい声に、私はますます涙が止まらなくなる。

見知らぬ看護師さんだけが、私を気遣ってくれる。

私の夫は、今ごろ他の女のぬくもりの中で目覚めているんだろう。

私はだんだんと泣き止み、苦い笑みを浮かべて呟いた。「夫、死んだんです……」

看護師さんは気まずそうに謝り、私への同情が目に浮かぶ。

私は医者の忠告も聞かず、無理を言って退院手続きをした。

手元の流産報告書を見つめる。足元がふらつく。

あんなに大事にしていた命が、ただの紙切れになってしまうなんて。

でも、この痛みを私一人だけで背負うつもりはなかった。

家に戻った。

誰もいないリビング。やっぱり悠川は帰っていない。

男女が夜遅くに二人きり、何もなかったなんて、誰が信じるだろう。

以前なら、怒りの電話を何十回もかけていただろう。

でも今は、もうただただ疲れていた。

電話が鳴った。悠川からだった。

出ると、すぐに彼の気遣う声が聞こえた。

「楓(かえで)、大丈夫か?清美がちょっと大変なことになってな、昨夜飲み過ぎて、今朝は熱まで出してる。今、彼女を病院に送ってるところなんだ……」

彼の言い訳が終わるのを待って、私は静かに言った。「昨日の夜、あなたたちは一緒だったのね」

事実を淡々と述べる。反論ではない。

電話の向こうで、悠川が一瞬黙った。そして逆ギレした声が返ってくる。

「楓、お前、なんて下品な考え方するんだ。清美は俺の依頼人だぞ?彼女が飲み過ぎたから、ちょっと面倒見たっていいだろうが!

今だって隣にいるんだ。離婚して気が沈んでるところに、風邪までひいて……頼むからさ、お前の汚い想像で彼女を傷つけるなよ!」

自分の夫が、他の女のためにここまで必死になるのを聞きながら、私は静かに問いかけた。「昨日、私を病院の前に置き去りにした時、私の体調のこと、少しでも考えた?」

悠川は一瞬、言葉に詰まったようだったが、すぐにイライラした声が返ってきた。

「お前、もう病院の前に着いたんだろ?何も問題ないじゃないか!もういい加減にしろよ。清美に謝れ、それでこの話は終わりだ」

彼の言葉に、私は思わず笑ってしまった。

その笑い声を聞いて、悠川はもう怒っていないと勘違いしたらしい。「じゃあ今度、彼女と飯でも食いに行って、お前、ちゃんと謝っとけよ?」

電話を切った後、私はすぐに悠川の連絡先をすべてブロックした。

そして三日後、最も早い便の飛行機を予約した。

悠川とは大学で出会い、三年付き合い、三年結婚生活を送った。

七年目の危機を待つまでもなく、私たちの結婚は壊れかけていた。

私たちの喧嘩は、いつも何かしらあの新井清美(あらい きよみ)が原因だった。

結婚記念日には清美の家の水道が壊れ、私の誕生日には清美が火傷をした。

そのたびに、悠川は彼女の一報で飛んでいった。

そして、私が妊娠して流産した時でさえ、彼は夫としても父親としても、何一つ責任を果たさなかった……
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