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第6話

Auteur: ショコラちゃん
一瞬、清子の全身の血が凍りつく思いだ。

彼女は信じられないというように目を見開き、怒りと衝撃で歯がガチガタと震える。

「な……なにを……言ったの……?」

南が、娘の遺骨を山に捨てたって!?

そんな言葉、どうしてこの精神を病んだ女の口から出てくるの?

子どもの真実を、いったい誰が彼女に教えたの?

それとも……この数年、彼女は最初から狂ったふりをしていただけなの!?

清子は勢いよく彼女の手首をつかんだ。「陸奥南、あんた気が狂ってなんかないでしょ?私の娘の遺灰をどこに捨てたのよ?言いなさいよ!」

さっきまで悪意に満ちた表情を浮かべていた南が、たちまち無力で哀れな姿へと変わり果てた。

清子の手を振りほどき、泣き叫びながら陽太の胸に飛び込んだ。「陽太!」

南の手にあったお守りは、いつの間にか破かれていた。

彼女は頬を涙にぬらし、花が散るように泣きじゃくった。

「向井さんが許してくれなくたって、仕方ない……でも、どうして私の真心をここまで踏みにじるんだ?このお守り、一針一針、魂を込めて縫い上げたのに!それなのに、私があの子の遺灰を捨てたなんて……そんな酷いことまで……私、いったい何が悪いっていうの?」

陽太は視線を落とし、引き裂かれたお守りと、涙に霞む南の顔を見つめる。その瞳の奥が、一瞬で氷のように冷たくなる。

「清子、子どもの死はただの事故だ。死んだ者は戻らない。なのに、どうして南にあたるんだ!」

清子の声が一気に張り上がった。

「あの女、最初から狂ってなんかいなかった!この耳でしっかり聞いたんだ、私の娘の遺灰を山に捨てたって!あの遺灰を探しに行く……ちゃんと娘を弔ってやらなきゃ!」

清子は言葉にならない声を漏らしながら、娘の遺灰を探しに行こうとベッドから降りかけた。

陽太は彼女の手首を掴み、深く息を吸って、怒りを必死に抑え込む。

メイドに南を部屋の外へ連れ出すよう指示すると、その目には抑えきれない怒気が宿っている。

「清子、まだ気が済まないのか?うつ病だからって、何をしても許されると思うな!南は心が壊れかけていて、もうこれ以上の衝撃には耐えられないんだ!

なのにお前は、俺が子どもを南に託したことをいつまでも責め立てて……南の謝罪を受け入れず、彼女の思いを踏みにじり、挙げ句の果てに濡れ衣まで着せて、娘の遺灰を捨てたなんて馬鹿げたことまで言うのか!

本気で頭がおかしくなったんじゃないのか!南はあんなに優しくて思いやりのある人間だ、そんなことをするはずがない!ましてや、今の彼女は精神を病んでいて、俺たちの関係すら覚えていないんだ。そんなことをするはずがないだろう?」

清子の頬を涙が一筋伝った。その表情には、深い絶望が刻まれていた。

「陽太、私は狂ってなんかいないわ!あなたを騙す理由なんてどこにもない!ただ、ただ娘をきちんと弔ってやりたいだけなのよ!

……私の二人の子どもを南に渡した。せめて末の娘だけでも、きちんとあの世へ送らせて……それすらも、いけないの?」

どんなに清子が訴えても、陽太の心はもう動かない。

彼は清子を乱暴にベッドへ押し倒し、すぐに身を翻して部屋を出て鍵をかけた。

「体が回復したらすぐに船橋市へ送り返す。この間は部屋から出るな。もう二度と南の前に現れて刺激するんじゃない!」

清子の瞳孔が一瞬で縮み、勢いよく飛びかかってドアを叩いた。

「いやっ!陽太、私を出して!」

母親である彼女が、自分の娘が死んだあとも安らかに眠れず、遺灰を山に放置されるなんて、どうして許せるだろう。

けれど清子がどれほど泣き叫び、懇願しても、誰からも返事はなかった。

清子は絶望のままドアにもたれかかり、外から聞こえる食器の触れ合う音に耳をすませた。陽太が南に「辛いものは控えなよ」と優しく声をかける。長女の弾けるような笑い声、幼い息子のクーイング……

それらは、船橋市で七年間一人耐えながら、彼女が夢にさえ見た、家族の温もりだった。

かつて幾度となく、清子は去ろうとする陽太を抱きしめ、涙ながらに「もう一晩だけ一緒にいて」と願ったのだ。

陽太はいつも彼女の指をそっとほどき、涙を拭ってくれた。「清子、仕事が立て込んでるんだ……次に帰ってきたときは、時間をたっぷりとって一緒に過ごそう、いいね?」

今となっては分かる。あれが仕事のはずがない。

彼はただ、本妻と暮らし、私から奪い取った子どもとの時間を優先していた。それこそが、彼の「忙しさ」の正体だった。

清子の心はもう、痛みすら感じないほどに麻痺している。

彼女は涙をぬぐい、ゆっくりと立ち上がって窓辺へ歩み寄り、下を見下ろした。

ここは、陽太の豪邸の四階。

飛び降りれば、軽くても足を挫き、骨折は免れまい。運が悪ければ、頭から落ちれば即死だろう……

清子はかすかに笑った。

今の彼女には、もう失うものなど何もない。

娘をきちんと葬ってやる――その決意を、もはや誰にも邪魔はさせない。

彼女はドレッサーの椅子を掴むと、ためらうことなく窓ガラスに振り下ろした。

ガシャーン!砕け散るガラスの音。次の瞬間、清子は目を閉じ、窓枠から虚空へ身を投げ出した。
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  • つらい過去から目が覚めた   第22話

    清子は追いかけて、陽太に言った。「陽太、あなたに謝ってほしいなんて、思っていないわ。言ったでしょう、私たちはもう終わったんだって。ただ、あなたには私の人生から消えてほしい。これから、佳代と安生の父親として、時間を作ってくれれば、それでいいのよ」陽太はうつむいた。「でも、お前がいなきゃ生きていけない」雨音が激しくて、清子には聞こえなかった。彼女は眉をひそめて聞き返す。「何て言ったの?もう行ってよ」「お前がいなきゃ生きていけないって言ったんだ!」陽太は低く叫んだ。真っ赤に染まった瞳には、迷いと戸惑いがあふれ、まるで悪いことをしてしまった子供のようだ。「清子、俺が愛してきたのは最初から最後までお前だけだった。お前と別れるなんて、一度だって考えたことなかったんだ!確かに、俺は色々間違ったことをした。でもずっとそう思ってた……お前は俺をあんなに愛してくれてたんだから、きっと許してくれるって。まさかお前がここまで強くなるとは思わなかったよ。まるで……何をしてもお前を取り戻せなくて、ただお前が遠ざかっていくのを見てるしかないみたいで……」陽太は顔を覆い、涙まじりの声で言葉を続ける。「こんな気持ち、最悪だ……清子、一日たりとも後悔しない日はなかった、苦しくない日はなかった……どうしたらいいのか、本当にわからないんだ……」その言葉を聞いた白野おばさんは、冷たい笑い声を漏らした。「涙や甘い言葉で、清子に負わせた傷が消えると思ってるの?清子の母と娘の死は、あんたが直接手を下したわけじゃないかもしれない。でもな、あんたが佳代を盗み出さなきゃ、こんな悲劇は起きなかったんだよ!罪を償いたいなら、自首して刑務所に行きなさいよ!」清子は、白野おばさんの言葉が怒りに任せたものだということが分かっていた。だが陽太の濁った瞳に突然光が宿り、何かを思いついたようにしばらく黙り込むと、次の瞬間、雨の帳の中へ駆け出していった。「清子、待っててくれ!この俺が一生をかけて、お前だけを愛しているってこと、必ずわからせてやる!」陽太は、その言葉どおりに行動した。彼の消息を再び耳にしたのは、三ヶ月後のことだ。彼は自首して証拠を全て提出し、未成年者略取・誘拐罪で懲役二年の実刑判決を受けた。その知らせを聞いたとき、清子はちょうど娘を寝かしつけたところだ

  • つらい過去から目が覚めた   第21話

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  • つらい過去から目が覚めた   第20話

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