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異世界アルカディア④

last update Dernière mise à jour: 2025-03-23 17:00:49

見上げるほど大きな門扉が開く。

衛兵の上司だろうか?

誰か奥から走って駆け寄ってくる。

必死の形相をしていて少し怖いが、アレンさん達は普通の顔をしている。

場慣れしているのだろうか?

「まさかっっ!!アレン様!!生きておられたのですか!いえ、今まで一体何処に!?それより人数が少なく見えますが……」

「あはは、やっぱりそういう反応なんだね。とにかくこの街の領主に会わせてもらえるかな?」

「もちろんです!こちらへどうぞ!!」

矢継ぎ早に繰り出される質問もアレンさんはその場で答えずのらりくらりと交わす。

 

やはり数年は経っていそうな反応だ。

街に入るとあちこちから驚愕の視線が降り注ぐ。

僕はフードを被り出来るだけ目立たないように隠れながら歩くことにした。

「こちらで領主がお待ちになっております。どうぞお入りください」

領主の館というのか、明らかにまわりの建物とは違う豪華なお屋敷に入り、領主が待つという大部屋の前に僕らは立っている。

「き、緊張してきましたよアレンさん……」

「ここの領主は凄く気さくな人だから心配しなくていいよ」

そう言ってくれるが、領主なんて偉い人と会うなんて緊張しない訳がない。

封建制度がこの世界では普通であり、僕らの世界と大きく違う。

ここの領主は伯爵だそうだが、伯爵なんて上から3番目に偉い人じゃなかったか?

公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵……の順番だったはず。

扉が開くと、部屋の真ん中に突っ立っている男性。

イケてるおじさんって風貌だが、顔はとても笑顔だ。

「アレン様、ご無沙汰しておりました。またお会い出来るとは……光栄でございます」

「色々あってね。それより久しぶりだねロアン伯爵」

「最後にお会いしたのは8年前……ご存命だとは思っておりませんでした……」

ロアン伯爵の目尻
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