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ウェディングドレスのまま婚約者に弄ばれ、私は別の人のもとへ

ウェディングドレスのまま婚約者に弄ばれ、私は別の人のもとへ

Par:  パントウ・ロComplété
Langue: Japanese
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三十歳の誕生日の日、七年間付き合ってきた彼氏が「市役所で会おう」と約束を取りつけてきた。 彼はわざわざ、私に印鑑を持ってウエディングドレスを着て来るようにと念を押す。 ところが、約束どおり市役所に姿を現した私を見て、彼は、妙に興奮した笑みを浮かべた。 「ほら、金出せよ。俺が言ったろ?俺の一言で、たとえどんなに恥をかくことになっても、浅川遥香(あさかわ はるか)は言うこと聞くんだって」 私は彼から目を逸らさず、じっと見つめる。 高梨悠人(たかなし ゆうと)は私に向かって軽く眉を上げて、口を開く。 「冗談だってば、遥香、まさか怒ってないだろ?」 私が黙っているのを見て、彼はさらに苛立った様子で言う。 「もういいだろう。結婚すると言ったんだから、ちゃんとするさ。ただ、今じゃないだけだ」 彼の取り巻きの友人たちも、次々とふざけ半分に私をからかい始め、「お前は彼の言いなりなんだから、怒るはずがないだろ」と笑い合った。 腹立つことはない。というのも、今日ここに来た理由は、そもそも彼のためではないからだ。 皆が去って静けさが戻ったそのとき、私はようやく踵を返し、市役所の扉を押して中へ入った。 「ごめん、遅くなった。婚姻届の手続きをしよう」

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Chapitre 1

第1話

三十歳の誕生日の日、七年間付き合ってきた彼氏が「市役所で会おう」と約束を取りつけてきた。

彼はわざわざ、私に印鑑を持ってウエディングドレスを着て来るようにと念を押す。

ところが、約束どおり市役所に姿を現した私を見て、彼は、妙に興奮した笑みを浮かべた。

「ほら、金出せよ。俺が言ったろ?俺の一言で、たとえどんなに恥をかくことになっても、浅川遥香(あさかわ はるか)は言うこと聞くんだって」

私は彼から目を逸らさず、じっと見つめる。

高梨悠人(たかなし ゆうと)は私に向かって軽く眉を上げて、口を開く。

「冗談だってば、遥香、まさか怒ってないだろ?」

私が黙っているのを見て、彼はさらに苛立った様子で言う。

「もういいだろう。結婚すると言ったんだから、ちゃんとするさ。ただ、今じゃないだけだ」

彼の取り巻きの友人たちも、次々とふざけ半分に私をからかい始め、「お前は彼の言いなりなんだから、怒るはずがないだろ」と笑い合った。

腹立つことはない。というのも、今日ここに来た理由は、そもそも彼のためではないからだ。

皆が去って静けさが戻ったそのとき、私はようやく踵を返し、市役所の扉を押して中へ入った。

「ごめん、遅くなった。婚姻届の手続きをしよう」

結婚がこんなにも面倒なものだとは私は思ってもみなかった。

ウェディングドレス姿のまま一日中外を駆け回り、全身が今にもバラバラになりそうなほど疲れ切っている。

家に戻ると、部屋の明かりが灯っているのが目に入る。

扉を押し開けた瞬間、不機嫌そうな悠人の声が飛んでくる。

「遥香、なんでこんな時間まで帰ってこないんだよ。俺がどれだけ待ったと思ってる?

電話しても出ないしさ。今日はちょっと冗談を言っただけだろ、それで拗ねてんのか?」

眉をひそめ、私はふとマンションの鍵のことを思い出した。悠人はずっと、その鍵を一つ持っている。

しかも、それは当時、私が無理やり押しつけるようにして渡したものだった。

マンションを買った年――

それは、私と悠人が付き合い始めてまだ一年目のことだった。

その頃の私は、すぐにでもお互いを想い合い、まっすぐ結婚に進むものだと信じていた。

だから半ば強引に、悠人へマンションの鍵を渡した。

「これからはここが私たちの家」と言って、彼がこの家の主人として当然持つべきだと思った。

うっすら覚えているのは、そのとき悠人が軽く侮蔑するように笑い、何も言わずに、それでも鍵だけは受け取ったことだ。

あれから七年。振り返れば、あのときの私は本当にひとりで舞い上がっていただけだったのだと痛感する。

「おまえ最近ずいぶん気が強くなったな。俺を無視するなんて、いい度胸じゃないか?」

悠人の怒鳴り声が、私を遠い記憶から引き戻した。

はっと我に返り、淡々と口を開く。

「今日は外で写真を撮っていて、スマホの充電が切れたの。時間もなくて充電する暇がなかったのよ」

冷たい鼻息を鳴らし、悠人は嘲るような口調で言う。

「どうせ作り話をするなら、もっと現実味のあることを言えよ。ウェディングドレス着て外で撮影?いっそウエディングフォトだって言えばいいじゃないか」

私はふと悠人に目を向けた。まさかとは思ったが、図星だった。

今日、私はまさにウエディングフォトを撮りに行っていたのだ。

「知ってるなら、なんでわざわざ聞くの?」

悠人は突然大笑いし、目尻に涙までにじませながら笑い続ける。

「ほうほう、ウエディングフォトか。遥香、おまえってそんなに嫁ぎたくてたまらないんだな。でも、俺以外に誰がおまえと撮るっていうんだ?」

そう言って立ち上がり、私のすぐそばまで来た。

「もういいだろ、そのみっともないプライドを隠すのは。俺が何度も結婚してあげるって言ってやったか?いつまでその話にしがみつくつもりだ?」

私は唇を強く噛みしめる。

悠人の言葉一つ一つが、胸に鋭い刃を突き立てるようだ。

私たちが付き合い始めた最初の年から、彼は口当たりのいい約束ばかりを並べ、叶うことのない夢を見せ続けてきた。

それでも、七年が過ぎた今も、彼が実際に動くことは一度もなかった。

私は目の前の男を冷ややかに見据える。

「そんなに自信があるの?私があなた以外の男と結婚できないって?」

悠人は面倒くさそうに手をひらひらさせ、先の椅子に腰を下ろすと、軽蔑の色を浮かべた目で私を見た。

「やってみればいいさ。俺以外に誰がおまえをもらうのか、俺も興味ある」

私は何も言わず、その場に突っ立ったまま動けない。

認めたくはない。けれど、七年の歳月はやはり徒労に終わったのだ。

このとき――

悠人のスマホが鳴った。

受話口から、冷たい機械的な声が流れてくる。

「浅川様、本日はお誕生日おめでとうございます。こちらルミエール・ブライダルでございます。スタッフ一同、心よりお祝い申し上げます。本日が素敵な一日となりますよう……」

無機質な声が続く中、悠人は途中でぷつりと電話を切った。

その瞬間、思い出した。このドレスはオーダーメイドで、受取先には悠人の番号を記していたのだ。

やがて悠人の態度は軟らぎ、へらへらと笑いながら私に謝ってくる。

「悪かったよ、遥香。俺がバカだった。こんな大事なことを忘れるなんてな。

今日は誕生日の記念写真を撮りに行ったんだろ?安心しろ、今回はいくらでも俺が払ってやる」

彼は、こんなふうに気前のいいところを見せれば、私が感激して舞い上がると思っているのだ。

けれど今の私は、ただ吐き気がする。
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